厚生労働省によると、新型コロナウイルスに感染し重症となっている患者は、11月29時点で全国で462人となり、7日連続で過去最多を更新したそうだ。新型コロナウイルスの重症者が急増し、重症患者向けの病床使用率が100%を超えると、新規患者の受け入れが出来なくなり、医療崩壊に繋がるとの理屈はよく理解できるが、それ以前の問題としてコロナ患者に対応する医者や看護師の過労は既に限界に達しており医療崩壊寸前との声も聞かれる。
11月末時点で、東京都が確保していると公表している重症患者向けの病床数は150床であり、人工呼吸器や体外式膜型人工肺”ECMO”を使っている重症患者の数は11月26日時点で60人だそうだ。病床利用率は40%で、まだ余裕があるようにも思えるが、新たな患者を受け入れられる重症病床は現状ほとんどないと指摘する関係者もいる。すなわち、先述の150床には準備中も含まれており、また従事する医者、看護師等の人員の確保も出来ていないそうだ。
東京都や大阪府は病床を増やすため新たに専用施設の開設などを進めているが、重症者に対応できる人材は簡単には育たない。緊急対応として専門外の医者や看護師をコロナ対応に回すことも考えられるが、コロナ以外の患者の診療に影響が及ぶことは当然である。
コロナ患者が重症化し呼吸不全となった場合、酸素投与から始まり、陽圧人工呼吸器管理へと進むが、ECMOは肺が本来行うべき酸素化と二酸化炭素除去を代替する特殊な機械で命の最後の砦だそうだ。そのため集中治療室(ICU)医師、ICU看護師、臨床工学技士などECMO治療に関するエキスパート達とチームを組んで治療にあたるが、患者一人に4~5人必要となるそうだ。重症患者専用施設や治療機械は力ずくで何とか出来ても、人材の育成は一朝一夕には出来ない。
重症患者の増加による空きベットの不足を懸念し、GoToトラベル等の見直しが叫ばれているが、そもそもコロナ患者に対応する医療従事者の疲弊が顕在化しており、このまま放って置けばこちらの面から医療崩壊が起こるであろう。
さて、医療崩壊の例を今年4月のニューヨークに見ることが出来る。感染のピークにあたっては、病床や医療従事者の不足により救命できる患者の救命ができなかったケースが多発したそうで、正に日本はこの問題に直面しているのだ。
これに対処する為、全国からニューヨーク、ニュージャージー両州の支援のために応援の医師、看護師が集められたそうだ。医師免許のある人は専門に関わらずコロナ対応に回り、そればかりか、医科大学院の学生も前線投入、さらに専門外の歯科医も支援体制に組み込まれたそうだ。また、外国の医師免許を臨時に”自動的に有効として診療行為への従事を認める”という政令まで出したのだそうだ。
米国では、無保険者、不法移民等で医療サービスを受けられ無い人も多く、日本とは事情が違うであろうが、日本での医療崩壊に際してのシミュレーションは出来ているのであろうか。2020.12.02(犬賀 大好-657)
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