安倍首相は今年1月4日、年頭記者会見で憲法のあるべき姿をしっかりと提示し憲法改正に向けた国民的な議論をいっそう深めていくため自民党総裁として頑張りたいと、来年9月までの総裁任期を全うする決意を示したそうだ。しかし、党内では、東京五輪が終了した後のよきタイミングで辞任すると噂されていただけに驚きの声が広がったとのことだ。
辞任の声は党内ばかりでなく世間でも同様である。安倍長期政権下での弊害の一つは実体が伴わない説明責任の乱用である。先日も自民党の河井案里参院議員の公職選挙法違反の問題で、菅幹事長は個人に説明責任があると発言しているが、このまま静かにしておればその内世間は忘れるとの励ましの言葉とも聞こえる。
なんせ、森友・加計学園問題で首相は丁寧に説明すると言いながら嵐が去るのをじっと待っているお手本を示しているのだから。このような弊害も目立ち始め、世論的にもそろそろ交代すべきとの声も広がっているのだ。
ポスト安倍が禅譲で決まるとすれば岸田政調会長であり、対抗馬は石破元幹事長と言われてきたが、マスコミ評では菅官房長官が担ぐ河野防衛相、小泉環境相と、安倍首相が引き立てようとしている茂木外相、加藤厚労相が、新たな総裁候補として脚光を浴びているとの話だ。しかし、あくまでも話題作りのためと思われ、実質的な争いは先の二人であろう。
しかし、岸田氏はカリスマ性が無く、石破氏は賞味期限が切れている感であり、一時期菅幹事長の名が取りざたされた。菅幹事長は令和の元号発表で有名となり、また安倍首相の尻拭いを何度かして窮地を救ってきた功績がある。
例えば桜を見る会の招待者を巡っては、招待者名簿を破棄し野党からの厳しい追及を受けたが、相変わらずの知らぬ顔の半兵衛で乗り切ってきた。恐らく菅氏は野党からの名簿開示の要求に対して急遽破棄等を指示した張本人と思われるが、破棄したのは職員であり何の法律違反もしていないととぼけた。
こうした経緯から春以降、菅氏はポスト安倍の有力候補の一人にも数えられるようになったが、菅氏の側近である菅原一秀経産相の辞任や、昨年の萩生田文科相と河野防衛相の失言等が続き、安倍政権は末期的な状態になりつつあると共に菅氏の総裁候補の声も小さくなった。
安倍政権を誰が引き継いでも後始末は大変だ。特に異次元緩和の後始末と財政健全化問題が大きい。政権発足当時安倍首相は黒田日銀総裁と異次元金融緩和を敢行しデフレ脱却を目指した。しかし、物価上昇率2%の目標は今だ達成されておらず、異次元緩和の声も聞かれなくなった。アベノミックスでは市中にお金をばらまいたが、当初懸念されたインフレも現時点では起こっていないのは幸いであった。
このまま異次元緩和が出口に向かい本来の金融政策に戻れば一見問題なさそうであるが、日銀が買い上げた国債処理、日銀のみならず年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する株式のリスク等、爆弾を抱え込んでいるのは間違いないだろう。
この他、財政健全化の問題や北朝鮮問題等やり残している問題も多々あるが、誰が引き継いでも解決は容易でない。2020.01.18(犬賀 大好-567)
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