今回の第4次安倍政権の内閣改造で外務大臣に茂木敏充氏が就任することになった。茂木氏は経済再生担当大臣として、アメリカとの貿易交渉を無事取りまとめ、以前から外務大臣を希望していたと言われる念願のポスト就任となったそうだ。
安倍首相は昨年10月トランプ米大統領と会談し、焦点の日米通商問題について、新たに日米物品貿易協定(TAG)の交渉を開始することで合意していた。このTAGは、物品ばかりでなく投資やサービスの自由化にも及ぶ広範囲な自由貿易協定の筈だが、日本政府は従来のFTAとは全く異なり物品に特化した協定だと説明し、米国との認識の差が大きかった。
さて、茂木氏の下で進められていた貿易交渉は、今月末の国連総会中に安倍首相が訪米し、トランプ米大統領との間で協定書に署名するとの見通しになったそうだ。当初米国側が求めていた物品ばかりでなく投資やサービスの自由化や為替条項は棚上げされた格好だが、大統領の機嫌次第でぶり返される恐れもあるとのことだ。
この当面の棚上げは、茂木氏の手腕によるとの安倍首相の評価であろうが、一方では来年に控える大統領の選挙に向けて成果を焦るトランプ氏の早期妥結の意欲が大きかったためと推測される。
さて、2017年1月にトランプ大統領は決着間近の環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、米国有利となる二国間協定に持ち込み、更に投資やサービスの自由化にも及ぶと予想された。このため、交渉は難航し、長引くと思われていたが、スピード決着したのだ。
日本の農産物の市場開放については米国が離脱したTTPの水準内に収めることで落ち着いたようだが、TPPに盛り込まれていた米国の自動車輸入関税の削減は先送りされる見込みと伝えられるなど、大雑把な見方ではトランプ政権が成果を勝ち得たようである。
しかし、肝心の合意内容は、詳しく公表されておらず、最近の報道によればTTPを超える妥協も一部にはあったようで、やはり米国有利となるような結果だ。兎も角、最大の焦点だった農産物で、日本がTPP並みに輸入拡大を約束したことは、2020年の大統領選に向け勝敗を左右するとされる中西部の農業州を獲得したいトランプ大統領の思惑通りに事が運んだわけだ。
しかも、大統領は米議会に対して、より公正で互恵的な日米貿易関係につながる包括的な通商協定の締結を目指す、と説明し、日米貿易交渉を今後も段階的に進め、最終的に為替条項、サービスの貿易や知的財産保護のルールなどを含む包括的な協定を目指す方針を示しているのだそうだ。
トランプ大統領は、大統領選挙に向けた戦略の一環として、日米貿易協定の締結を急いだが、それはかなり部分的、暫定的なものにとどまるものであることを、日本は十分に理解しておく必要があるとのことだ。
大統領の本音がどこにあるかよく分からないが、一方では中国との関税を巡る貿易問題があり、影響度はそちらの方がはるかに大きく、しかも日本のように脅しが効く相手ではない。大統領の関心も専らそちらの方に向かうであろうが、成果が得られない場合、成果の矛先を日本に向けるかも知れない。2019.09.21(犬賀 大好-533)
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