菅首相が今年始めの国会演説で2050年温室効果ガス排出実質ゼロ宣言をしたのを受けて今年改定予定のエネルギー基本計画の見直しが迫られている。昨年末開かれた経産省の審議会でも、2030年度に目指す電源構成を・再生可能エネルギー22%~24%、・原子力20%~22%、・火力56%程度としているようだが、相変わらず原子力の比重が大きい。
2011年の原発事故前の2009年には原発の割合は29%であったから、2030年の目標はそれより低く、一見原発の比重を下げたようだが、2018年は6%であったことを考えると、これから大幅な原発復帰を目指すつもりのようだ。
原発の最大の利点は温室効果ガスを排出しないことであり、また電力コストが低いことを主張する人もいるが、原発事故の後始末で四苦八苦している現状を見ると、電力コストの低さをいくら叫んでも空しさだけが残る。
欧米では原発を縮小する国が多いが、中国を始めとする発展途上国では拡大する方向であるようだ。中国では現在2%程度のようだが、2040年までに7%程度にするようであり、拡大路線まっしぐらだ。
昨年末のエネルギー基本計画の検討会でも、福島の復興は一歩一歩進展するも、まだ多くの課題が残されており、改めて二度とあのような悲惨な事態を引き起こしてはならないことを再確認することが必要だと、一応反省はしたようではあるが、つい先日、東海第二原子力発電所について、水戸地方裁判所は避難計画やそれを実行する体制が整えられていないとして、稼働を認めない判決を言い渡したが、反省が充分でないことを物語っている。
反省の不十分さ以上に原発事故の後始末の不十分さは目に余る。東電福島第1原発の廃炉作業に関しては、2月28日、3号機の使用済み核燃料566体を取り出す作業を完了したとの発表があったが、当初の廃炉工程表の目標から約3年遅れだそうだ。
しかも1号機に残された392体は2027~28年度取り出し開始、2号機には615体残るが2024~26年度取り出し開始予定だそうだが、燃料棒の取り出しより大きな難作業はデブリの撤去である。
デブリとは核燃料と周りの構造物との混ざり合った固体であるが、未だ原子炉内の何処にどの位残っているのかも分かっていない。デブリの取り出しには原子炉格納容器の上部からを想定していたが、昨年末になってようやく、2号機と3号機で容器の真上にあるふた部分が極めて高濃度に汚染されていることが判明し、そこからの取り出しも極めて困難との報道があった。廃炉工程が更に遅れそうである。
当初廃炉までに40年かかるとのことであったが、事故から10年経ち、後30年で廃炉が完了すると思っている人は誰もいないであろう。後始末も出来ないのに、再稼働を主張するとは無責任さも極まれりだ。2021.03.20(犬賀 大好ー687)
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