日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

自国第1主義はグローバル資本主義の成れの果て

2019年02月20日 09時35分34秒 | 日々雑感
 国際NGOオックスファム・インターナショナルは、今年1月経済格差に関する最新の報告書を発表した。これによると世界で最も裕福な62人が保有する資産は、世界の貧しい36億人が所有する総資産に匹敵するそうだ。この数字62人が2010年には388人であったが、富の集中が一層進みますます事態は深刻になっているとのことだ。

 グローバル資本主義は本質的に経済格差を助長する。より多くの利益を求める投資家と、より安く良いものを求める消費者の期待に応えるべく、企業は世界中に生産・販売網を展開して、効率化を追及する。効率化の中には賃金を始めとするコストダウンがあり、富の平等化の考えは毛頭無い。

 世界中に張り巡らせたネットワーク等の情報手段の発展、大量の情報を即座に解析するAIの発達、流通を簡単にする電子マネーの発展等は、グローバル経済を助長する強烈な助っ人でもある。

 一方、このようなグローバル資本主義を規制することのできるグローバルな国際機関や法は存在しない。世界には国家の国内総生産 (GDP) を軽く超える多国籍企業が多く存在し、市場を獲得するために国境を越えて資金と物資を自由に動かすことが出来るのだ。

 また、自国の税金を逃れるためにタックスヘイブンと称する税制上の優遇措置を設けている国または地域に名目上の本社を設け、節税している企業も無数にある。

 このため、経済格差は国内のみならず、国家間に広がり諸問題を発生している。その一つが移民の問題だ。自国の経済の低迷さに嫌気がさし、よりよい生活を求め経済発展国へ脱出する。その結果受け入れ側の国では低収入の人々の職場を奪うことになり、様々な社会問題を引き起こす。

 この結果が、米国のトランプ大統領が打ち出した自国第一路線であり、パリ協定からの離脱など国際協調を壊しかねないこの考え方が、米国だけでなく他国にも急速に広がり始めている。

 自国の利益のみを追求するという方針は、国際問題よりも自身の生活を重視する一般国民には極めて理解し易い。国際協調の象徴でもあるEU各国でも、トランプ政権の発足以降、反EUや反移民・難民を合言葉に自国第一主義を掲げる急進的な右派政党が急速に支持を伸ばしているのだ。

 これまで移民や難民を積極的に受け入れてきたEU各国に有権者の拒絶反応が強まり、EUの牽引役であった独のメルケル首相が昨年10月、21年の任期満了で首相を引退せざるを得なくなった。

 また2016年の国民投票で英国がEU離脱を決めたのも、移民政策や国境管理を自国で独自に決められるようにするためだ。英国では今、メイ首相がEUと合意した離脱協定に関して与野党双方から批判が噴出し、下院で承認が得られない八方ふさがり状態となっている。

 しかし、メイ首相に対する不信任案は否決されて続投が決定したが、議員からは前向きな提案は無く単に問題が先送りされただけだ。

 経済先進国の米国やヨーロッパ各国では自国第1主義が拡大しつつある一方、アジア諸国は1周遅れでグローバル経済が拡大しつつある。その典型例がRCEPと称するアジア諸国を束ねる広域的な包括的経済連携構想である。中国が主導する一帯一路戦略のその一つであろう。

 グローバル経済はその欠点が顕著になるまでは膨張するであろうが、その成れの果てである自国第1主義が今後どのようになるのであろうか。保護貿易主義の結果が第2次世界大戦の切っ掛けになったとのことで成り行きが心配であるが、歴史に学ぶ人類の英知を信じたい。2019.02.20(犬賀 大好-522)

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