米国カリフォルニア州の銀行「シリコンバレーバンク」は、3月8日に債券の売却による損失が発表されると、翌日の9日だけで5兆円余りの預金が流出し、10日には10兆円の預金が流出する見込みとなり、わずか2日、3月10日に経営破綻した。
また、3月12日には、ニューヨークに拠点を置く銀行「シグネチャーバンク」が、更に5月1日には、「ファースト・リパブリック・バンク」が経営破綻した。アメリカの3行が破綻した主な原因は、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑えこむための利上げをしたことが影響したとのことだ。 政策金利の上げ幅は2022年3月に0.25%、5月に0.5%、6月に0.75%とし、23年2月には4.50~4.75%まで引き上げてきたのだ。
経済に疎い人間には、金利が上がると債券価格が下がり、金利が下がると債券価格が上がる関係をよく知らなかったが、つまり金利が引き上げられるとそれまで保有していた低利の債券の価格が下落し、売却すれば損失が出ると言うことであろう。この関係から経営への懸念が拡散し、預金の引き出しが相次いだようだ。銀行は基本的に金貸し業あるため手持ちの金が少なくなれば仕事が出来なくなり破綻へと繋がるのだ。
米銀の破綻は過去約2カ月で3行目となり、共通する新たな現象をデジタルバンクランと称するのだそうだ。銀行の経営不安の情報がSNSなどネットを通じてあっという間に拡散し、預金もネットを通じて瞬時に引き出されるため、流出のスピードが加速し、 銀行の経営者も、金融当局も対応が追いつかない事態なったのだそうだ。
金融不安を招いたそもそもの原因は米国の利上げだった。新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻の影響で人手不足や物流の停滞といった供給制約で、世界各地でモノ不足が起き、物価の上昇となり、このインフレ状態を正常化させるために、FRBは利上げをしたのだった。
世界の主要な中央銀行も利上げしたが、米国の利上げが一番大きかった。一方我が国の日銀は黒田前総裁以来金利はゼロ状態であり、世の中インフレ状態であるにも拘らず現総裁もその路線を引き継いでいる。理由は景気の後退を避ける為と言われているが、日銀は異次元金融緩和で膨大な国債を抱えており、利上げによってこれまで発行した国債の価格が暴落する懸念があるため、利上げしない、あるいは出来ないのが真の理由ではなかろうか。
さて、銀行破綻の切っ掛けを作った「シリコンバレーバンク」の破綻の原因は、テクノロジー産業の不振にあるとも言われている。コロナ禍が影響して、IT企業が依存している広告費用の減少等があり当業界全体の収益が下がったため、これらの業種を主要な顧客とする銀行もまともに影響を受けたとの話だ。
日本では異次元金融緩和で市中に出回った資金の投資先が見当たらず、不動産や株式に流れたとのことだ。日本の銀行がIT産業の不振の影響を受けなかったことは幸いであるが、先端技術に余り投資しなかったと見ると日本の将来は心配になる。2023.05.24(犬賀 大好ー917)
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