大阪府・市と大阪商工会議所など関西経済3団体のトップは2020年1月、大阪市内で意見交換会を開き、そこで、吉村知事は2025年国際博覧会(大阪万博)の準備等で労働力が不足するとして、外国人材受け入れ強化への協力を要請し、大阪産業局を中心に新組織を作る等、環境整備を進めることで一致したとのことだ。
ところが、現在直面している大阪万博のパビリオンの建設の遅れの最大の原因は人手不足とのことだ。今から4年前に既に労働力不足を予知し、外国人を受け入れる等の準備を進めるべきとしていたとはその先見性に感心するが、その間何をしていたのであろうか。
厚労省の昨年8月に公表した一般職業紹介状況(7月分)によると、産業界全体の有効求人倍率は1.29倍であり、その内建設業の有効求人倍率は5.32倍で、更に職種別では、建築・土木・測量技術者が5.48倍、建設躯体工事従事者が9.81倍、その他建設従事者が4.76倍、電気工事従事者が3.21倍、土木作業従事者が6.25倍だったそうだ。現在サービス業等で人手不足がマスコミを賑わしているが、有効求人倍率は接客・給仕3.19倍、介護サービス3.88倍であり、採用難と言われる産業職種よりも建設業は格段に高い数値となっている。
また、国交省の「最近の建設業を巡る状況について【報告】」(2022年)によれば、2020年における建設業の就業者数は492万人で、ピーク時の1997年の685万人と比べて約28%減少し、今後も、建設業の労働人口は減少すると予想され、2025年には、約90万人不足すると予測している。3K(きつい、汚い、危険)と若者の間で敬遠される建設業種への就労者はどんどん減っているのだ。ロボット等による自動化を推し進めているが人間が直接手を下さなければならない作業は多く、外国人労働者に頼らなければならない状況に追い込まれている。
これまで日本は、「外国人技能実習制度」という、外国人労働者の受け入れ制度で、足りない労働力を補ってきた。この制度は、日本で得た技術を出身国に持ち帰り、自国の経済発展に役立ててもらうという主旨だった。しかし、実態は、工場、建設現場、農家で働く単純労働者の受け入れだった。この制度により、アジア諸国から多くの出稼ぎ労働者が来日し、日本経済は彼ら抜きでは成り立たなくなってきている。
しかし、日本経済は異常な円安状態で母国への仕送りも十分できない状態になり、アジアの労働市場における日本の優位性は低下した。今では、逆に日本の若者が外国へ出稼ぎに出る状態だ。
能登半島大地震の復興と合わせ、大阪万博のパビリオンの建設の遅れと建設労働者不足は一層顕著となった。岸田首相は両者ともに頑張れと檄を飛ばしているが、優先順位をつけるとすれば復興の方が上位だろう。大阪万博のパビリオン建設はそれぞれの国から労働者を連れて来ると言う訳にはいかないだろうか。それも叶わなければ延期、あるいは中止するしかないだろう。
2024.01.31(犬賀 大好ー979)
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