日本の最高裁に相当する韓国大法院は、10月30日、第2次世界大戦中の強制徴用被害者4名に対して日本の新日鉄住金はそれぞれに約993万円を賠償するよう命じる判決を下した。
更に、先月29日には、広島と名古屋の三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身隊員らに、それぞれ約800万~1500万円を支払うよう命じた。
これらの判決に対し日本のマスコミは、戦時中の賠償問題は1965年韓日請求権協定により解決済みであるとして、一斉に韓国を非難している。普通ネットでは賛否両論があるが、今回は韓国非難一色である。
訴訟の核心争点は、1965年の協定により日本が韓国に提供した資金を強制徴用被害者に対する損害賠償金と見ることができるかどうかだった。賠償金は5億ドルだったとのことであるから500億円位であろうか。日韓協定の交渉段階で、韓国政府は日本政府に元徴用工らの補償に充てると説明していたが、当時韓国の財政状態は苦しく、その資金を道路やダムなどの経済開発に流用し、漢江の奇跡と呼ばれる経済復興の一助としたそうだ。
もし、元徴用工等に支払われていたならば、一人当たりいくら位になっていただろうか。韓国世論が今回の判決を支持するする理由の一つは、この額が低すぎたとの背景もあるのではないだろうか。
兎も角、請求権協定第二条では、韓国政府だけでなく韓国国民の対日賠償請求権も完全かつ最終的に解決されたと規定しているが、大法院はこの日、個人の賠償請求権は有効だと判断したわけだ。
大法院長は国会の同意を得て大統領が任命し、任期は6年とされている。韓国でも日本と同様に司法の独立が憲法で保障されており、判事は政府の意向に関係なく独自の判断ができるようだ。
また、韓国国内には”国民情緒法”と称する奇妙な法理論が展開されているとのことだ。これは、如何なる法律も国民情緒に合わなくてならないという憲法より上位にある法律が暗に存在するとの理屈である。韓国の司法はこの国民情緒法に従って判断したと揶揄されている。
一方、韓国大統領は直接選挙により国民から選ばれるためか世論に敏感であるが、世論は一つではなく通常相反する世論が対立している。対日政策においても、歴代の政権は親日があったり反日があったり、時には途中で変わるなど一貫せずにぶれることが多い。これを国民は政府のふがいなさと感じ、これを司法が補なおうとする傾向が強いと指摘する声もある。
韓国最高裁の先の判決に対し、文在寅大統領は沈黙を続けている。日本の河野外相は、国際法違反と厳重な抗議をしているとのことだが、韓国政府は日本が騒ぎ過ぎであると鎮静化に躍起であるようだ。
今回の判決は、従来の韓国政府の立場とは異なり、苦しい立場に追い込まれているのだ。政府は1965年韓日請求権協定の重さを十分認識しているが、韓国世論は判決を支持しているようだ。さて文大統領はこの苦境を打開するために、対北朝鮮への融和政策を前面に出すと思われるが、金委員長はこの焦りを利用しない筈が無い。そこで融和政策は一気に進むと思われるが、北朝鮮の核放棄は絶望的となるだろう。
しかし、これらの混乱は韓国の司法府が立法府や行政府に対する独立性が確保されているという証であるのかも知れない。これに対し、日本の司法府は政府に気兼ねをして独立性が欠けている。例えば、選挙における定数問題である。憲法違反状態であると微妙な言い回しが用いられるのが典型例である。
さて、民主主義の三権分立の原則からは韓国司法の方が正しいと思われるが、日本の最高裁は政府の意向を忖度し過ぎである。2018.12.05(犬賀 大好-500)
更に、先月29日には、広島と名古屋の三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身隊員らに、それぞれ約800万~1500万円を支払うよう命じた。
これらの判決に対し日本のマスコミは、戦時中の賠償問題は1965年韓日請求権協定により解決済みであるとして、一斉に韓国を非難している。普通ネットでは賛否両論があるが、今回は韓国非難一色である。
訴訟の核心争点は、1965年の協定により日本が韓国に提供した資金を強制徴用被害者に対する損害賠償金と見ることができるかどうかだった。賠償金は5億ドルだったとのことであるから500億円位であろうか。日韓協定の交渉段階で、韓国政府は日本政府に元徴用工らの補償に充てると説明していたが、当時韓国の財政状態は苦しく、その資金を道路やダムなどの経済開発に流用し、漢江の奇跡と呼ばれる経済復興の一助としたそうだ。
もし、元徴用工等に支払われていたならば、一人当たりいくら位になっていただろうか。韓国世論が今回の判決を支持するする理由の一つは、この額が低すぎたとの背景もあるのではないだろうか。
兎も角、請求権協定第二条では、韓国政府だけでなく韓国国民の対日賠償請求権も完全かつ最終的に解決されたと規定しているが、大法院はこの日、個人の賠償請求権は有効だと判断したわけだ。
大法院長は国会の同意を得て大統領が任命し、任期は6年とされている。韓国でも日本と同様に司法の独立が憲法で保障されており、判事は政府の意向に関係なく独自の判断ができるようだ。
また、韓国国内には”国民情緒法”と称する奇妙な法理論が展開されているとのことだ。これは、如何なる法律も国民情緒に合わなくてならないという憲法より上位にある法律が暗に存在するとの理屈である。韓国の司法はこの国民情緒法に従って判断したと揶揄されている。
一方、韓国大統領は直接選挙により国民から選ばれるためか世論に敏感であるが、世論は一つではなく通常相反する世論が対立している。対日政策においても、歴代の政権は親日があったり反日があったり、時には途中で変わるなど一貫せずにぶれることが多い。これを国民は政府のふがいなさと感じ、これを司法が補なおうとする傾向が強いと指摘する声もある。
韓国最高裁の先の判決に対し、文在寅大統領は沈黙を続けている。日本の河野外相は、国際法違反と厳重な抗議をしているとのことだが、韓国政府は日本が騒ぎ過ぎであると鎮静化に躍起であるようだ。
今回の判決は、従来の韓国政府の立場とは異なり、苦しい立場に追い込まれているのだ。政府は1965年韓日請求権協定の重さを十分認識しているが、韓国世論は判決を支持しているようだ。さて文大統領はこの苦境を打開するために、対北朝鮮への融和政策を前面に出すと思われるが、金委員長はこの焦りを利用しない筈が無い。そこで融和政策は一気に進むと思われるが、北朝鮮の核放棄は絶望的となるだろう。
しかし、これらの混乱は韓国の司法府が立法府や行政府に対する独立性が確保されているという証であるのかも知れない。これに対し、日本の司法府は政府に気兼ねをして独立性が欠けている。例えば、選挙における定数問題である。憲法違反状態であると微妙な言い回しが用いられるのが典型例である。
さて、民主主義の三権分立の原則からは韓国司法の方が正しいと思われるが、日本の最高裁は政府の意向を忖度し過ぎである。2018.12.05(犬賀 大好-500)
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