ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

泣く

2013-07-15 00:46:10 | 嫌いだ嫌いだ
遠い昔の運命を泣く
泣いてしまう
純粋に泣く
百年以上も前の運命を泣く
透明に泣く
既に定まった取り返しのつかない運命を泣く

こころが立ち騒ぐことはない
はかはかと動悸しながら落ち着かずということはない
居心地悪く不快だということはない

時代が代わるときの
ひとりひとりの善意でひっくり返ることなどありえない
大きな流れ

滅びゆくものの哀しさ
あわれ

打ち負かし
叩きつぶす側が悪意なのではない
大きな使命をこそもって
役割を果たす

そこで死ぬのは
どちらも無駄死に
どちらも大義に乗った名誉の死

そこにいるひとりひとりは
みな限りない善意で
大義に乗って
殺し合う

産みの苦しみ
新しい時代を切り開く傷
鋭利な剣
正確な銃
破壊する大砲
俊敏な長刀
貫く槍

成年と
子どもと


みな
滅びる

滅びることが美しい
のか
生き延びることが美しい
のか

それぞれがそれぞれの仕方で直面すること

為政者と庶民
という区分
領主も百姓もなく
この土地に育ったものという区分
西に育ったものと東に育ったもの
の区分
現在の過去にすがりつくものと
新しくするためにもっと昔に立ち還ろうとするもの
の区分
さてさて

ひとひとりに立ちかえれば
悪意のものはいないのに
一方は悪くて一方は正しいなどということはないのに
多くの人間が死ぬ
歴史の転換点で
みながみな生き延びることができない
双方で
多くのものが死ぬ

それは決して美しいということではない
破れて死にゆくものは土に汚れ血に汚れて
その滅びる様が美しいとは言える
しかしだから美しいということではない
美しいと言ってはいけないのだろう
しかし
純粋に透明に泣く
泣けてしまう

だが
百五十年を経てようやく
限りの無い抑圧がようやく
ほどけかかったのか?

こちらがわもまた
美しい

ほとんど初めて
あからさまに
言えたのか

ひょっとすると
この限りの無い破壊の代償だ
とでもいうように

だから
無償に美しく
純粋に透明に
泣けてしまう
のか?

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