ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

秋亜綺羅 詩、柏木美奈子 絵 ひらめきと、ときめきと。 あきは書館

2015-10-04 23:37:25 | エッセイ

 素敵な表紙だな、と、郵便物の封をあけて取り出して、まず、思った。きれいな緑と青とピンクとグレーとの小鳥と、緑とピンクの2色の、2枚の葉っぱ。

 詩の絵本である。

 柏木美奈子さんは、1967年生まれ、仙台在住。秋さんの「季刊 ココア共和国」の編集をしたり、イラストを描いたりなさっているらしい。

 秋亜綺羅は詩人。寺山修司に見出された少年だった。1951年生まれ、私より5歳年上。

 この本は嘘だらけである。ひらめきとときめきに満ちた嘘が詰まっている。どの詩ひとつとっても、嘘のない詩はない。

 冒頭から3つ目の詩、「うそ」。

 

「まず自分のことを一行書きます

 それにうそを一行ずつ加えていきます

 あなたが書いたうその数だけ

 たくさんの現実や

 たくさんの真実が見えてきます

 …(中略)…

 ほんとうにうそを書きつくしたとき

 書いたあなたの右手が鏡のなかに

 すっと入っていくのです

 見えなかったひとつの現実と

 ほんとうはあったひとつだけの真実を

 鏡の裏で

 つかまえることができるのです

 うそ」

 

 ということで、秋さんにひらめいたときめくようなうそに満ちた詩画集である。

 

 ただ、

 

「震災があった夜

 まるで映画のようだと、だれもが言った

 映画館の客席よりはるかに暗く

 はるかに冷たい

 だけど映画を観ていたのではなく

 わたしたちはスクリーンの中にいたんだ」

 

 これは、確かにうそだが(そのときスクリーンの中にいたわけではないから)、その後、相当の程度でほんとうになったのではある。(わたしたちのうちの相当の割合が、映像の中で紹介されることになった。映像の中に存在した。映像の向こうの存在となった。)

 ところで、念のため付言しておくが、ひとつも嘘のない詩などというものは、この世に存在しない。


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