
素敵な表紙だな、と、郵便物の封をあけて取り出して、まず、思った。きれいな緑と青とピンクとグレーとの小鳥と、緑とピンクの2色の、2枚の葉っぱ。
詩の絵本である。
柏木美奈子さんは、1967年生まれ、仙台在住。秋さんの「季刊 ココア共和国」の編集をしたり、イラストを描いたりなさっているらしい。
秋亜綺羅は詩人。寺山修司に見出された少年だった。1951年生まれ、私より5歳年上。
この本は嘘だらけである。ひらめきとときめきに満ちた嘘が詰まっている。どの詩ひとつとっても、嘘のない詩はない。
冒頭から3つ目の詩、「うそ」。
「まず自分のことを一行書きます
それにうそを一行ずつ加えていきます
あなたが書いたうその数だけ
たくさんの現実や
たくさんの真実が見えてきます
…(中略)…
ほんとうにうそを書きつくしたとき
書いたあなたの右手が鏡のなかに
すっと入っていくのです
見えなかったひとつの現実と
ほんとうはあったひとつだけの真実を
鏡の裏で
つかまえることができるのです
うそ」
ということで、秋さんにひらめいたときめくようなうそに満ちた詩画集である。
ただ、
「震災があった夜
まるで映画のようだと、だれもが言った
映画館の客席よりはるかに暗く
はるかに冷たい
だけど映画を観ていたのではなく
わたしたちはスクリーンの中にいたんだ」
これは、確かにうそだが(そのときスクリーンの中にいたわけではないから)、その後、相当の程度でほんとうになったのではある。(わたしたちのうちの相当の割合が、映像の中で紹介されることになった。映像の中に存在した。映像の向こうの存在となった。)
ところで、念のため付言しておくが、ひとつも嘘のない詩などというものは、この世に存在しない。
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