ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

去ねば都! 

2009-07-02 22:23:53 | 寓話集まで

逝ってしまえば皆観音様
言ってしまえば皆
天上無辺の愛

天井四角の(区切られた)慈悲

波止場に生まれ
波止場に背を向けて
波止場に帰り
波止場に死ぬ

限定されたライフ
Xを捨てて
Yを拾う

人混みはいつも悲しい
人気のない街並みはいつも懐かしい

俺は
点きの悪い百円ライターを何度も擦ってようやく煙草を喫う

(あなたは命を大切にしない)

ああ
俺は生まれたときから死んでいた
いやそれはつまらないフィクション

Xを捨てて
Yを拾う

ああ
俺は銀幕の上の石原裕次郎を気取って
虚仮脅しの芝居を生きてきた
映画のセットのような見掛け倒しの中身のない
幸福な団欒のリヴィングルームのない暮らしを生きてきた
いやそれは読むに耐えないフィクション

Xを捨てて
Yを拾う
そのとき
Zが生まれ
Aに還る

ああ!
読むに耐える小説はそのときにしか書けない
観るに値する芝居はそのときにしか演じられない
予め与えられた実人生なんてどこにもない
Xを捨てて
Yを拾う

おい!
俺はニヒルな申年生まれの大根役者だ
実人生は猿芝居だ
逝ってしまえば皆観音様とは
楽しいじゃないか!
なあ、幸福なことじゃないか!


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1 コメント

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仏教的な ()
2010-07-29 23:46:39
 仏教的な詩。
 ニヒルだが、ポジティブでもある。
 ポジティブだが、ニヒルでもある。
 挽歌のようなそうでないような。
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