ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

霧笛第2期29号〈編集後記〉

2014-03-30 22:04:09 | 霧笛編集後記

 

◆今号から、熊本吉雄さんが参加。中学校のころからの先輩。市役所に入ったら、そこでも先輩。そして震災のあと、早期に退職された。

 昔から、詩や短歌を書いていたわけではない。処女歌集「あら汁」を読ませていただいた。副題は震災小景。震災のあと、退職前から歌を書きだし、河北新報に投稿を始められたようだ。何度か、選に入り、掲載された。

 「私は短歌について全くの素人である。入門書の一冊さえ読んだことがない。作法を知らない。文法を知らない。/それで私家版とは言え上梓するなどもってのほかのことであるが、かの日から、どうしても祭文かお筆先のようにむくむく湧き起こる言葉が止められない」

 「祭文のごとく」と題されたあとがきに記されている。

 冒頭近くから幾首か引く。

「酌めどくめどゑひぬ日重ね花冷えに沿ひゐる影は香守ならん」

「『寝んでこい』『帰るところがありません』己の被災は誰も語らず」

 私も短歌のことは全くの素人だが、これは優れた歌だと思う。

 若い頃から本を読み続けた蓄積と繊細な生活の履歴が、震災という大きな転回点を契機に、まさに祭文のように噴き上がった。集中に登場する吉本隆明、憶測だが、寺山、啄木など読み漁ったものは深いに違いない。

 霧笛同人中、最も文学的なひとりとなっていただけるものと思う。

 なお、今回の「苔のたわごと」と題された、文語体中心の断片の一連は、Mr.野墓亭名義であったが、同人としての名義に統一していただいた。

◆過日、栗原市白鳥省吾記念館から通知が届いた。第一五回白鳥省吾賞の優秀賞に選ばれたという。最優秀賞は横浜の草野理恵子さんというかた。私と前橋市の中村花木さんが優秀賞とのこと。二月二三日(日)に、表彰式とのこと。

一昨年の宮城県芸術協会の文芸賞というのが、詩でいただいたはじめての賞だったが、引き続きというような形で、有難いことである。

◆このところ、連続して同人が増加している。総勢一六人となっている。また、私から、市外の方にお送りする部数が増えている。読みたいと言っていただける場合もある。感想をいただける場合もある。有難いことである。私の手元に残る部数が僅少となってきており、西城さんらと相談していた。今後、若干、増部する予定である。

◆中田紀子さんが、休筆されるという。当面、休会扱いとする。小松ゆりさんとおふたり。それぞれにご都合がある。ゆっくりとお待ちすることとしたい。

中田さんの最初のご主人は、大島航路の船長にして酔いどれ詩人の村上太一であった。私が気仙沼に戻って詩を書こうとした時の師。ちなみにもうひとりの師は、熊谷龍平という。商工会議所専務理事にして端正な詩人。ふたりにペンを取って教えられたということではなく、ここに暮らして、詩を書き続けるという生き方のロール・モデルとして、私の先におられた。

(千田基嗣)

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表紙・常山俊明(AtoZ)

 


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