〈145号へのお便りから〉
絵本作家の長野ヒデ子さんも震災後、気仙沼に通っていただいたが「理論社の編集者に…今も中川ちひろさんや石津ちひろさん達は気仙沼に通ってるよとお聞きして、えらいなあ‼とびっくりしました。…詩誌40周年もすごいですね。…どの方もすごくまじめでどの作品も深く見つめて清く正しくの感じで、アホの私などついて行けないな~と思ってしまいました」。アホというのは、またどうしたことかと思ったら、「中川ひろたかさんと長谷川義史さんが私をモデルにアホの本を出し」たとのことである。アリス館から『ナガノさん 抹茶アイスの巻』という本らしい。
なかがわちひろさんは「山極寿一さんと鈴木俊貴さんの対談集『動物たちは何をしゃべっているのか?』に、人間は他者に共感する能力を獲得したからこそ、戦争をする…というようなくだりがあって、しばらく呆然としてしまいました。…おもしろい本ですよ」これは、私の詩への応答である。
汐海治美さんは「…千田さんの散文(編集後記など)と「気仙沼の内湾はいい天気」という詩の持つメンタリティが、同人の中にも染みて一つの「霧笛」の世界を作っていると思いました。今回はとりわけ日野修氏の「ありがとうハーモニカ奏者」という詩に打たれました。「ありがとう、おら、世界の争い考えないで」というフレーズが、形を変えて詩に散りばめられていて、それが何とも言えないリズムを生み出し、かつ「おら」という自称がとってもチャーミングです。内容も千田さんはじめ『霧笛』の方々の思いとリンクして全体に厚みを与えています。ありがとう(日野さんの詩)で始まり、気仙沼(千田の詩)で終わる構成とってもいいです」いや、むしろ、良子さんや西城さんのほうが、戦争や自然について表現されてきた。
坂井礼美さん「感銘深く複数回拝読しました。…『霧笛』の魅力のひとつは「空間の拡がり」です。空といい奥行きといい、首都圏、23区内にひしめき合って建っている住宅では味わえない…『自然本来の力』をいつも感じます」特に同郷(本吉町小泉)の及川「良子さんと私とはこの様な「現実」を二人共、別の処でずっと探していたのだ‼の思いで…初めて読んだ良子さんの…詩には直感的な「モノ」を感じ、ずっと反応していたので強烈でした。「解る」というのは頭脳でわかるのではなく、魂、「私の全身で」解る事なのだと」
吉田妙子さんは「ひさしぶりの常山さんの文章も読めてうれしかったです。「果敢な挑戦者」として、これからも気仙沼の地の息吹をのせて発信、表現を」と記す。そして、141号から145号まで、熊本吉雄さん、良子さん、せつえさん、西城さん、畠山幸さん、夕庵さん、正典さん、日野さん、菊池さん、そして私と、一編一編に思いを語っていただいている。すべて引きたいところではあるが、私の「編集後記での言葉、「霧笛の持続こそ、私の小さな幸福のひとつのかたち」それは、千田さんだけでなく、同人の皆さんも同じ思いなのだなと…。そして、東京の混んだ電車の中で、ベッドのなかで、霧笛を読めることも、私の幸福の小さな形です。…何があっても、死ぬまで、しっかり生き延びるぞ!」さらに、白幡みゆさんの表紙について「143号からの…表紙、素敵です!好きです!童話のひとこまのような雰囲気です。ホッとするような絵ですね。お人柄が伝ってきます」
本田作夫さん、渡辺仁子さん、夏谷胡桃さん、そして佐々木洋一さんからもお便りをいただいた。いつもながら有り難い限りである。
〈編集後記〉
◆秋に、宮城県詩人会20年記念に、霧笛の40年を重ねて気仙沼でイベントを開催したいとのことで準備を進めている。発足の年2005年、仙台市以外の初めての事業として開催、その後2017年に「詩人たちの湾岸カフェ」と題して、港町 K-portを会場に開催した。11月23日を目標に、現在鋭意企画中である。
◆梶原さい子さん、気仙沼出身の歌人であり詩人梶原しげよが大叔母、『落合直文の百首』(ふらんす堂)もものされているが、河北新報歌壇に投稿歌を添削する「タンタカ短歌」を連載開始された。
◆先日、県詩人会の総会あり、正典、良子、千田が参加。良子さん、今号はことばがひとつも降りてこないと悲痛なお電話をいただいていたが、県内の先輩方とあれやこれや言葉を交わしているうちに、どこか気持ちもほぐれてきたらしく、その後、無事入稿いただいた。万が一の時には「ことばが降りてこない」という、口から出た一行を原稿にしようかなど、その場で軽々にお話ししていたところであった。それはそれでいい作品になったかもしれない。
◆表紙絵、白幡みゆさん、前号、今号のお便りにもあるとおり、好評であった。予定どおり三号分をもって、紺野拓子さんに交代。常山俊明の紹介であるが、若い世代に一つの場の提供ができているとすれば有り難いことである。
◆今回、2名の投稿を得た。春永昼猫さんと会津の大島芳さんである。どちらも入会希望とのこと。世の有様は有様、霧笛はさらに続いていく。
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