土曜日は古寺を歩こう。

寺勢華やかな大寺も、健気に法灯を守り続ける山寺もいにしえ人の執念と心の響きが時空を越え伝わる。その鼓動を見つけに…。

室生寺から請雨祭祀の司雨神、室生龍穴神社と大野寺、戒長寺を訪ねました。

2010年04月28日 | 奈良の古寺巡り
[ 室生龍穴神社 ]
室生寺から室生川に沿ってしばらく行くと、室生龍穴神社に着きます。完全舗装
された県道沿いの左側に鎮座。神社境内には杉の巨木が鬱蒼とそそり立ち、昼な
お暗きが実感され拝殿前庭とその奥との陰翳の変化、明暗差は何となく神の存在
を思わせ森厳な神域の気を身に感じます。祭神は竜神、水の神で祈雨、雨乞いの
司雨神といい古来鞍馬貴船神社と雨乞いを競ったそうです。歴史由緒は相当古く、
延喜式内古社で室生寺とは神宮寺と鎮守社の関係にあったと云います。


前庭鳥居から拝殿


拝殿


拝殿の扁額


拝殿前杉の巨木


拝殿前の狛獅子
阿形は古毬、吽形は子獅子を抱かえるやや珍しい形です。




本殿
鬱蒼の緑のグラデーションの中で、一際映える本殿の朱。この社は春日大社若宮
社の旧社殿を移築したものと云います。


龍神が住むという龍穴
社から山道を少し行くと吉祥龍穴の案内板があり小道を下ると、小作りの遙拝所
があります。室生川を挟んで今も竜神が籠もるという洞窟があり龍穴と呼ばれ、
ここで請雨祭祀が行われたそうです。


招雨瀑
龍穴の少し上流に、招雨瀑と云われる滝が岩盤を豪快に滑り落ちています。


[ 大野寺 ]
桜のシーズンは著名枝垂れ桜の見物で参拝者が溢れると聞きます。境内は細長く
かなり狭く、元々室生寺草創の折りの寺域で四門の一つ西の大門といわれた歴史
があるそうです。このお寺の最大の売りは、何と云っても宇陀川対岸涯面の磨涯
仏でしょう。


大野寺石仏
正式には弥勒下生線刻大磨涯仏。挙身光式という凹みを切り込み、その内面に弥
勒仏を線刻したものです。仏身の高さは蓮座ともで11.5メートル。縁起には宇陀
川を隔てて彼岸に造立とあり、対岸は彼岸であり弥勒浄土、お寺側は此岸で現世
を表していると伝えます。(大野寺しおりから略記)


山門


本堂
本堂前に遙拝所が設けられています。ここから対岸の磨崖仏を拝することが正し
い拝し方なのでしょう。お庭の奥まで花期には、桜を中心に花々が競うそうです。
どうもボクの場合はいつも旬を外すようで特に今は花色はありません。


[ 戒長寺 ]と[ 戒場神社 ]
戒長寺は真言宗御室派のお寺です。聖徳太子と空海さんの由緒が残っているそう
です。大野寺から165号線にもどり、朝来た道を針方向に右折、例のカフェの前
を少し行くと左側に戒場集落への細い山道があり、対向車を気にしながら15分ぐ
らいで戒長寺への案内表示がある所に到着。

山門
急な参道石段の先に鐘楼門が見えます。梵鐘は正応4年(1291年)の銘があり鐘
身に十二神将像を鋳出する珍しい形式の鐘だそうですが、この情報は家に帰って
から知りました。なにをしに古寺を巡っているのでしょうカネ。




本堂
本尊薬師如来坐像、お前立の薬師如来坐像、十一面観音、地蔵菩薩を安置してい
るそうですが、お堂扉は施錠されていました。


本堂扁額


奈良県指定天然記念物のオハツキイチョウ
気根乳を垂らしたオハツキイチョウは葉のつけ根に小さな実がつく珍しいイチョ
ウです。


境内
本堂から見た右が山門、左が戒場神社の鳥居。真ん中の大木がオハツキイチョウ。


戒場神社
戒長寺と同境内に並んでいる神社。神宮寺と鎮守社の関係なんでしょうね。石段
の奥に可愛いお社が見えます。


同じく奈良県指定天然記念物のホオノキ
戒場神社側にある根元に空洞を持つ樹齢300年以上の日本一のホオノキです。


戒長寺の第一印象、「これってお寺の遺跡?」「本当に名刹?」と思ったほどの
境内環境でした。