内田樹さんの本を読むのは、これが初めて。同じ大学の石川康宏との往復書簡という形式。思い切りのいい主張が心地好い。
内田樹×石川康宏(2010) 若者よマルクスを読もう かもがわ出版
ぼくがマルクスを愛する最大の理由は、マルクスが世の中の仕組みをさくさくと解明してくれたことでも、どうやって階級のない社会を構築するか、その筋道を指し示してくれたことでもなく、マルクスを読むと自分の頭がよくなったような気になるからなんです。
これは人類学者のクロード・レヴィ=ストロースがどこかで書いていたことなんですけれど、レヴィ=ストロースは論文を書き始める前に、必ず書棚からマルクスの本を取り出して、ぱらぱらと任意の数頁を読むのだそうです。「ルイ・ナポレオンのブリュメール18日」なんかが特にお気に入りらしいんですけれど、マルクスを何頁か読むと、頭の中の霧が晴れるような気がする、と。 僕にもこの感じはよくわかります。マルクスを数頁読むだけで、頭の中を一陣の涼風が吹き抜けるような気がする。(中略)
マルクスはごくの問題を解決してくれない。けれども、マルクスを読むとぼくは自分の問題を自分の手で解決しなければならないということがわかる。
これがマルクスの「教育的」なところだとぼくは思っています。(37~39頁)
マルクスは「私たちを疎外された労働から解放せよ」と主張したわけではありません。「彼ら(劣悪な労働環境に置かれた労働者)を疎外された労働から解放するのは私たちの仕事だ」と主張したのです。この倫理性の高さゆえにマルクス主義は歴史の風雪に耐えて生き延びることができたのだとぼくは思っています。(152頁)
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