みんなみの 野辺にな来そね いはとなる 月は白飴 煮る夢見てむ
*「な~そ(ね)」は、「~してくれるな」という意味の古い言い回しですね。だいたい「そ」で終わりますが、語調を整えるために「ね」をいれるときもあります。
南の国のかの野辺には来てくれるな。岩戸に眠っている月は、白飴を煮る夢を見てしまうだろう。誰かの気配を感じるだけで、あの人は助けようとしてしまうのだ。
「てむ」は前にも言いましたが、使いやすいし魅力的な言葉なので復習しておきましょう。完了の助動詞「つ」の未然形「て」と推量の助動詞「む」をつなげたかたちで、「きっと~だろう」とか、「きっと~にちがいない」とか、推量を強調した言い方になります。
さばかりに、人は悲しき夢を見てむ。
雪野の白くつめたきばかりに、彼の人は苦しくひとりゆきてむ。
歌ではなく、こういう古語的言い方をするのも、何だか楽しい。文語詩に発展しそうだ。
歌で古語を練習していると、いずれそういうこともできるようになるでしょう。こうやって古い言葉で歌を詠んでいけば、助詞や助動詞を使う練習にもなるし、いろいろな言葉を覚えます。自分のスキルがあがり、段階が進んでいくのは楽しいですね。
「な~そ(ね)」も練習してみましょうか。「~」のところに動詞の連用形を入れるだけで、魅力的な言い回しができます。
ゆくふねをなかへしそ。潮路のきびしきをしりつつも。
おお、いい感じですね。もうひとついってみましょうか。
貉の皮に描きしまがひの月をな見そね。まことの月は空にあれば。
なかなかに詩的だ。こういう、魅力的な言い回しは、何度も練習しておきましょう。そういう風に日ごろから使っておけば、歌を詠むときに柔らかく言葉が浮かんできます。
最後のを歌に直しておきましょう。
からかみの月をな見そねしろかねの月はまことの空にしあれば