思ひ出は 乱れ散りぬる 玉の照り 水を染めにし 野ばらの香り 夢詩香
*今日は美しいのをいきましょう。これはツイッターの歌の中でも、評判が良かったものです。
「玉の照り」という響きがとてもよかったらしい。「玉の光」とも「つやめき」とも違う。単純で古代的な「照り」という言い方が、素朴に玉の美しさを感じさせるらしい。
そのせいか、この歌の跡にも、本歌取りぽい歌がいくつかできました。
ひとつそれも紹介してみましょう。
おもひでは 乱れ散りにし 玉の照り なきのうれひを 捨て果てし月
思い出は乱れ散ってしまった玉の照りのようだ。水を染めた野ばらの香り。なにもないということへの悲しみを、捨て果ててしまった、月のようなあの人。
絵画のように情景を描写しているだけだが、なかなかに美しい。一つの幻想的な絵画でもできそうなほどです。
このように、美しいことばを並べるだけでも、けっこういいものができますよ。自分の表現力を駆使して、凝った表現をこめて、おもしろい歌を詠んでみてください。もうひとつつくってみましょうか。
おもひでは 目にも溶けくる あはき雪 ゆふべにしるき めまつよいぐさ
思い出は、目の中に入って来て溶けてしまった淡い雪。ゆふべにはいって目にも覚めるほどしるく咲いた、めまつよいぐさ。
どうですか。情景が思い浮かんできましたか。思い出の中にある印象を切り取って、コラージュのように切り貼りしてみるだけでも、結構楽しく詠めますね。