「キャー」という声とともに、どたどたと倒れ込む音。
それに棚から何かが落ちる音が混じっている。
「おい どうした」見れば、妻が床で苦悶の表情だ。
何かにつまずいたのは明らか。
「頭を打ったか」と聞けば、首を振り、
「痛たっ」左足の甲あたりをしきりに触っている。
外傷はない。足首を捻ったか。あるいは倒れる際強く打ったか。
とりあえず湿布薬を貼って様子をみる。
少しだけ痛みは軽くなったようだが、
それでもかなり痛がっている。
やはり病院へ行くことにする。
とはいえ、土曜日の午後4時過ぎだ。
膝治療のためのかかりつけ整形外科医院はあるが、
すでに診療時間を終えており、留守電となっている。
急ぎ、救急病院を探し出し、駆け込んだ。
レントゲンを撮ったところ、
何と「左足指3本の骨折」だった。
完治までに6週間、1カ月半かかるという。
ギブスで固定し、松葉杖の生活を強いられることとなった。
帰宅すると、慣れぬ松葉杖に悪戦苦闘。
つい、骨折している左足をついてしまって、
「痛っ」と悲鳴を上げる。
トイレに行くのさえ四苦八苦だ。
出来るだけ、身を挺して支えにはなるが、
それにも限度がある。
体重はこちらより5、6キロは重いのだ。
本人がいちばん大変なのは当然だが、
これからしばらくは諸々の家事を
こちらが担わなければならないだろう。
炊事、洗濯、掃除……。
掃除はともかく炊事、洗濯は重荷に違いない。
とはいえ、音を上げるわけにはいかない。
教えを乞いながらこなしていくしかないだろう。
何と言っても気がかりは、
こちらが11日から1週間ほど入院しなければならないことだ。
その間、妻は一人になる。
止むを得ない。
2人の娘に救援を仰ぐことにしよう。
子にはできるだけ面倒をかけまいと思っていたが、
素直に助けてもらうことも親子だからこそであろう。