梅雨入りを待っていたかのように、
庭の片隅に置いた鉢植えの紫陽花が花を咲かせた。
時折、小雨がパラパラと降りかかる。
ああ、やはり梅雨時を盛りとする紫陽花には雨がよく似合う。
無論、何事にも加減というものがあり、
雨であっても篠突く雨が紫陽花を叩いたのでは風情を失くす。
紫陽花には雨露が花弁に丸く転がるような、
そんな小糠雨が程良いのだろう。

だが、紫陽花のあの可憐な美しさに騙されてはいけない。
見た目の美しさの裏には、なんとも怖い本性を隠している。
花の色はコロコロと変わっていく。
それで花言葉が「移り気」「浮気」なのである。
さらに、別名が「七変化」「八仙花」とさえ……。
もう5年、いや6年前だったか、6月に夫婦で鎌倉を訪れた。
鎌倉と言えば、やはり紫陽花だ。
鎌倉には、それぞれに由緒ある神社仏閣が多くある。
その厳かさの中に、紫陽花が品を漂わせて咲き、
しっとりとマッチする。
それに多くの人が魅かれ、やって来るのである。
北鎌倉駅から円覚寺へ、さらに「あじさい寺」と呼ばれる
明月院へと巡る。
ここは日本古来の姫アジサイが主で青一色。
〝明月院ブルー〟と言われるだけあって、
さすがの眺めだった。
院内の重々しい静けさ、それに紫陽花がひっそりと
彩りを添えている。
だが、この青い花の色は、もう一つの花言葉
「冷酷」「無情」を連想させる。

明月院で
さらに鎌倉駅から江ノ島電鉄で長谷寺へと向かった。
明月院の紫陽花が青一色だったのに対し、
こちらは色とりどり、さまざまな種類の紫陽花が見事だった。
色とりどりのさまが、「移り気」「浮気」へとつながっていく。
なんとも気の毒な花言葉である。

長谷寺で
福岡にも近場に紫陽花の名所は数々ある。
これからが本格シーズンであり、観賞へ出かけたいところだが、
コロナが両手を広げて待ったをかける。
うかうかすると、見逃がしかねない。
何と言っても「移り気」「浮気」な花なのだ。
待っていてはくれないかもしれない。