Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

切なさ

2021年06月06日 10時14分37秒 | エッセイ

Andy Williams,Paul Anka, Matt Monro, Engelbert Humperdinck, Elvis Presley-Best Of Oldies But Goodies

     なぜ、こうも切なくさせられるのだろう。
     左だけのイヤホンから1950、60、70年代の、
     いわゆるオールディーズが流れ込んでくる。
     エルビス・プレスリー、アンディ・ウィリアムス、
     ポール・アンカ、マット・モンロー、
     そしてエンゲベルト・フンパーディング……
     ただ聞き流しているのに、次第に切なさが募ってくる。
     曲名をすべて思い出せるわけではない。
     また、格別の思いのある曲があるわけでもない。
     たとえば好きな女性と一緒に聞いたなあ、といったような。
     ただ、身も心も生命力にあふれた、あの時代の
     自分自身のことを思い起こさせるだけである。
     50年、60年も昔、「ああ、そんな時代もあったな」。
 
         

     涙がマスクの中にしとしとと伝い落ちてくる。
     吉永小百合さんが女医役として主演している
     『いのちの停車場』を見ている。
     年老いた人、まだ社会の第一線で活躍できるはずの人、
     さらに本来なら前途洋々の子供……。
     こんな人たちが次々と去っていく。
     人にとって、どうしても避けることのできない死。
     そして、「自分の死のしまい方」に直面していくのである。
     苦しまず、人に迷惑もかけず死ねる。
     よく言うピンピンコロリが理想だと、誰もが思う。
     だが、「自分の死のしまい方」として、
     そのように終えることが出来る人はどれほどいようか。
     映画は、許されるはずもない自死、安楽死といった
     難しい問題にも言及する。

     オールディーズがオールディーズでなかった時代、
     このような映画には、おそらく見向きもしなかっただろう。
     それが今は、涙を流し続けながら見ているのである。