Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

親のせいです

2021年06月23日 06時00分00秒 | エッセイ

      笑い飛ばしてください。

     先日初めて行ったイタリア料理店での話です。
     この店は、イタリア人のご主人と
     日本人の奥さんが経営されており、
     ご主人が「心を込めた」ピザとパスタを堪能した。
     会計は妻に任せ、先に車へ。
     妻の様子が何だか変だ。
     笑いをかみ殺しているような様子で戻ってくる。
     そして、車に乗り込むなり、堤防が決壊したかのごとく、
     いきなり「はっはっは」と声を上げて笑い出した。
     何だ何だ。

        
          イタリア料理店「アプテカ フレーゴ」
   
     笑いながらの話は、聞けばこんなことだった。
    「あなたのご主人はイタリア人、いやハーフなのではないですか」
     レジにいた奥さんがそう言い出したのだ。
    「えっ」と驚く妻。
    「だって、夫のイタリアの友だちにそっくりなんですもの。
     ねえ、あなた」とイタリア人のご主人に問えば、
    「そうなんだよな。僕もそう思っていた」
     流ちょうな日本語でそう言い、何度もうなづく。
    「とんでもない。純粋の日本人ですよ」と言いつつ、
     妻の笑いは爆発寸前。
     確かに夫、つまり僕の顔立ちと言えば、
     全体に小振りな割に中心にある鼻は高く、大きい。
     目は少々くぼんでおり、ちょっと見は異人風と言えないこともない。
    「何がイタリア人よ。鼻が大きいだけ。よぼよぼの純血日本人だわ」      
     君!それは余計だろう。
     
         
               長崎・出島

     妻から笑われながら、そんな話を聞かされ思い出した。
     小学生の頃のことだ。
    「お前、ポルトガル人の血が入っているんじゃないか」
     よくそう言われていた。
     生まれ育った長崎と言えば、
     ポルトガル人の居留地として建設された出島がある。
     そのポルトガル人の血がいつの間にか
     家系の中に紛れ込んだのではないか。
     そんなふうに見られたのである。
     もちろん、ノー、ノー、ノーである。

     さらに高校生時代。
     音楽の先生がこう言った。
    「アラン・ドロンにそっくりね。良い男だこと」
     周りにいた同級生は笑いをかみ殺し、
     僕は耳たぶを真っ赤にして下を向くしかなかった。
     独身だった女の先生はさらに廊下ですれ違いざま、
    「ドロン君、今日もハンサムだね」と話しかけてくる。
     嬉しいようでもあり、ひどく恥ずかしくもあり、それでも
     アロン・ドロンの初期の映画は欠かさず見に行った。

        若き日のToshi です

     顔つきだけではない。
     生まれついてのかすれ声で歌えば、
    「まあ、ロッド・スチュアートそっくり。素敵」と言われる。
     そう言われるままに、ロッド・スチュアートの
     CDは何枚も持っている。

     決して僕のせいではありません。
     文句がおありなら親に言ってください。
     早々にご免くださいませ。