ランニングシャツ、今風にはタンクトップと言えばよいか、
それにショートパンツ姿が軽快にやって来る。
10月に入り、さすがに朝夕はぐんと涼しさが増してきた。
それで、当方は長袖に変え短パンもやめたのだが、
なのにこの人は、腕も脚もむき出しなのだ。
足取りもジョギングというほどではないが、かなりの早歩きだ。
元気のよいお兄さんだなあ。
そう思っていたら、いや違った。
近づいてみると年の頃70歳前後の、結構な年配ではないか。
右手を軽く上げ「おはよっす」とすれ違っていった。
どうやら、奥さんは膝かどこかが悪いらしい。
少しばかり右足を引きずるように歩かれるから、当然歩みは遅い。
そのすぐ後ろにご主人がつかれている。
支えるように、守るように、気遣うように。
お年はお2人とも70歳後半とお見受けする。
夫婦は幾つになっても夫婦である。
愛犬のサクラちゃんとの早朝散歩を日課としている老婦人。
毎日、会うわけではない。
散歩コースはサクラちゃん次第だそうで、
今日はこちら、明日はあちらと変わるそうだ。
たまたま今日はこちらが歩いている川沿いでぱったり。
「お久しぶり」のあいさつになる。
サクラちゃんとも顔見知りになっており、
鼻をクンクンさせながらやってくる。
頭を、喉元をナデナデ。尻尾を振りながら体をすり寄せてくる。
しばらくの談笑の後、突然サクラちゃんが走り出した。
引っ張られるように老婦人も走り出す。
70歳と聞いたが、いやーお元気、お元気。
「また、お会いしましょう。サクラちゃん」
2組のご夫婦が右から、左からやって来る。
どちらも定年を迎えられた頃の年齢とお見受けする。
そして、「おはようございます」の挨拶を済ますと、
すぐに早朝の談笑時間となる。
毎朝、毎朝何を話されるのやら。話の花が咲いているようだ。
もちろん、その中心は奥さん方。
ご主人方は、2歩も3歩も退いておられる。
お2人共手持ち無沙汰の様子で、
胸中「おい、まだか」と言われているに違いない。
これが、ごく普通の夫婦のありようだろう。
「おはようございます」と声をかけながら側を通り過ぎる。
後ろからまだ奥さん方の話声が聞こえてくる。
いつものママチャリだ。
懸命に漕いでいるのは、70歳前後のおじさんだ。
短いながら上り坂も漕ぎ上がる。
毎朝どのくらい走っているのだろうか。
ジョギングやウオーキングにも勝る運動かもしれない。
その壮健さには恐れ入る。
あれっ。
よく見れば、くわえタバコではないか。
すれ違う際、その香りがかすかに漂ってくる。
「タバコはおやめなさい」聞こえぬ程度の声をかけたものの、
素知らぬふうに、そして軽快に走り続けていった。
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