【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ダンス規制

2013-01-08 07:05:38 | Weblog

 大賛成じゃ。(松平定信・水野忠邦・鳥井耀蔵など)

【ただいま読書中】『ソニー失われた20年 ──内側から見た無能と希望』原田節夫 著、 さくら舎、2012年、1600円(税別)

 読み始めてすぐ得たのは、日本語が下手だ、という感想です。文章が散漫で繰り返しが多く、思考の焦点がきちんと絞り込まれていない印象です。それでもソニーの正社員だった人の本ですから、内容が面白ければよい、と思いながら読みつづけることにします。
 まず著者が攻撃するのは、役員の高報酬です。「たった三日間、本社の会長室でテレビを見てお茶を飲んでいたら、それだけで汗水垂らして働く一般従業員の年収分を稼ぐことになるのです」とあります。3日間テレビを見てお茶を飲んでいるだけ、というのも“大変”な気はしますけどね。でもソニーの会長って、そんな生活をしていたんでしょうか? もちろん、経営戦略にミスって赤字を垂れ流している“責任者”が高額報酬を受け取っているのは問題です。ただ就任時の契約は守らなければならないでしょうから、プロ野球の選手のように「業績による出来高払い」にしておけば良かったのに、とは思います。
 かつてのソニーは元気でした。ただ商売は下手で「ソニーが作って、ナショナルが儲ける」なんて言い方もありましたっけ。トランジスタラジオ・ウォークマン・8ミリビデオカメラ・薄型テレビ……ソニーが開発してヒットさせ、それを「真似した電器」が追いかけて結局市場をかっさらっていく、という流れを私は何回も目撃していました。ところがいつからでしょうか、ソニーとナショナルの製品ラインナップの区別がつきにくくなり「さすがソニー」と言いたくなるものが登場しなくなってしまい、いつの間にかソニーが他社の後追いをするようになってしまいました。
 著者は「非技術系」の大賀・出井が社長に就いたことを、ソニー凋落の一因としています。技術では突出していたが商売は下手だったのが、技術も商売も下手になったということか、と私は理解しました。打ち出す政策は愚策の山、海外で業務を委託する相手はろくでもない山師ばかり、と「凋落のプロセス」はよくわかったような気がします。
 ただ、その「原因」は? 「無能な人間がトップにいたこと」だとして、ではどうして「無能な人間」がトップに上がれる地位まで上がってくることができたのか、パナソニックとか日立とかビクターとかシャープとか、潰れたり凋落したり苦しくなっている電器メーカーは考えなくてもすぐにいくつか思いつきますがそういった他の企業との比較はどうなのか(「日本」共通の原因があるのかどうか)、などについては本書では触れられていません。個人を責めて解決するような話ではないと私には感じられるので、そこをもうちょっと追求したら面白いものが見えたのではないかなあ。
 面白かったのは、ICカードの規格争いの所で著者が東芝を高く評価しているところです。東芝も、ベータマックス・HD-DVDと“失敗を繰り返した歴史”を持っていますから、「失敗の歴史=経営失格」とソニーを決めつける著者の態度からは東芝を高く評価してはいけないのではないか、とも思えるのですが。
 今元気なグーグルやアップルも近いうちに凋落の時代を迎えるはずです。そのときソニーが“復活”できるのかどうか、それは「技術だけ」でも「商売だけ」でもない「21世紀の新しいビジネスモデル」を構築できるかどうか、によるでしょう。アップルの成功(たとえ陳腐な技術でも、それを「新しい生活スタイル」に組み込むことで普及させる)にそのへんのヒントがあるような気がしています。私自身かつてはソニーが好きだったものですから、このまま消えて欲しくはないのですよ。