「開腹」……お腹のドアを開ける
「開かずの踏切」……遮断機が降りたまま故障中
「開いた口がふさがらない」……顎が外れた
「開幕」……幕を開発する
「両目が開く」……お寝坊さん
「未公開」……未公を開く
「申し開く」……申しを開く
「半開」……実は「半閉」
「開業」……プロの金庫破り
【ただいま読書中】『魔使いの悪夢』ジョゼフ・ディレーニー 著、 田中亜希子 訳、 東京創元社、2012年、2400円(税別)
前巻でのギリシアでの闘いで、トムたちは大きな犠牲をはらいました。トムの母、北方を守っていたカークライト、何人もの魔女……そして、やっと帰ってきた故国で彼らを迎えたのは、戦争で進軍してきた敵軍と、彼らによって破壊された故郷の街、そして焼き払われた自分たちの家でした。魔使いたちが代々蓄積してきた図書室の蔵書が、残らず破壊されたのです。さらに、せっかく拘束していた魔女のボニー・リジーが逃げ出してしまいます。トムたちも戦禍を逃れてモナ島に避難しますが、そこでは魔女狩りの嵐が吹き荒れていました。
人間の敵軍、人間の魔女狩り、バゲーンと呼ばれる強力な悪霊、バゲーンを自由に操る強力で冷酷なシャーマン、ボニー・リジー……ほとんど孤立無援のトムは、それら全部と戦わなければならないのです。
さらに、トムは、アリスとも戦わなければならなくなります。
こういった絶望的な状況の中で、ほのかな希望があるとしたら、「トムの成長」です。数々の闘いで鍛えられ、たとえば魔女が使う魔法「畏怖」に対してもトムは相当の抵抗力を持つようになっています。また、自身の内部にある「闇の欠片」のせいでしょう、魔女と意志疎通をすることもできるのです。ただ、魔女としての絶頂期を迎えたボニー・リジーには対抗できません。
もう一つ、悪い知らせがあります。蔵書と家を失ったグレゴリー師匠は、気力を失い、悪夢に苦しめられ、もう“戦力”としては使い物になりません。“世代交代”の時期なのです。まだトムは一人前ではないというのに。もう少し時間の余裕があれば「追われる側」ではなくて「追う側」になれるでしょうに。
トムに感情移入した読者は、焦燥感に駆り立てられます。一体どうすればいいのだ、と。
本書はシリーズ第7巻ですが、著者は何と10巻で完結させる意向だそうです。ええっ、ここまで“風呂敷”を広げておいて、あと3巻でたためるのですか? トムとアリスの関係だけでも、まだまだ紆余曲折があるのは明らかだから数巻は必要なはずだし、魔王をどうするかも大変ですよ。あまり大急ぎで終わって欲しくないなあ。