海苔で巻いた醤油味のおかきを食べたら美味しいとおもったのですが、その直後に揚げ餅を海苔で巻いたものを食べたらそれほど感心しませんでした。どちらも「餅米のお菓子 + 海苔」なのですが、塩を振った揚げ餅に海苔がぴったりマッチしているようには感じられなかったのです。どうしても海苔を巻きたいなら、韓国海苔の方がまだ合うかもしれませんが、私の舌はたぶん「日本標準」ではないので、強くお勧めはしません。
【ただいま読書中】『ナチス副総統ボルマンを追え』檜山良昭 著、 東京書籍、1993年、1330円(税別)
1900年に生まれたボルマンの経歴は謎に包まれています。23年に殺人事件に関与して逮捕され25年まで刑務所へ、そこから彼の公的な人生が始まるのです。27年ナチスに入党、翌年にはナチス突撃隊最高指導部の幕僚に異例の昇進。その後もどんどん昇進して、相当代理のルドルフ・ヘスの下でヒトラーの個人的財政問題を担当するまでになりますが、その経過の詳しいことはやはり明らかになっていません。41年に党の官房長。43年に総統秘書長。ヒトラーが自殺するときには、ボルマンを遺言執行人に指名しています。ボルマンたちはソ連軍と条件付き降伏の交渉をしますが、不調。ゲッベルスなど自殺者も出ますが、ボルマンは地下壕を脱出します。しかしベルリンでは激しい市街戦が展開されていました。ここでボルマン一行の“盾”となっていたドイツ軍戦車が爆発。ここで、ボルマンの位置は、戦車の横・上・中だった、と目撃者の証言はバラバラになります。ともかくボルマンの消息は途絶えます。連合軍、イスラエル、CIA、賞金稼ぎ、ジャーナリスト、作家などが血眼になって追跡しますが、痕跡は見つかりませんでした。
細かい情報(信頼できそうな目撃情報)をつなぎ合わせ、ボルマンの性格なども考慮して、著者はボルマンは逃亡に成功した、と推定します。青年時代を過ごして土地勘のあるパルヒム(ベルリンとハンブルクの中間)にまず身を隠し、ついで、ナチス高官が逃亡に利用した「北部ルート(デンマーク~北欧経由で、スペインや南米へ)」を利用しようとデンマークのグラーステン城へ。そこに隠れていたハイデ博士(ナチスの「安楽死計画」の責任者)が、後日逮捕されたときに城でボルマンを見た、と証言をしています。ハイデ博士は公判中に獄中で自殺してしまいますが、これはナチス残党の口封じ、という説も囁かれました。
1942年スターリングラードで独ソの激しい戦いが行われていました。この戦いは43年にドイツ第6軍が降伏することで第二次世界大戦の帰趨を決定するのですが、42年春にボルマンは「ドイツ敗北」を前提としているとしか思えない行動をしています。親しいドイツ財界人を集め、連合軍に資産を接収されないために海外に移転しておくことを説いています。ドイツの大手企業はこぞって海外のドイツ系企業に“隠匿資金”を振り込み始め、44年だけでその総額は10億ドルになりました。44年夏にボルマンは「戦後のナチス再建計画」を立てます。ナチ党が企業に資金を貸与、それを企業は海外に移しておき、国内の企業には戦犯に問われない下級のナチ党幹部だけを残し、戦後に海外でナチ組織を再建する、というものです。さらに国内には、敗戦後に備えての武装抵抗組織も組織しました。人や資金や財宝の移転に協力したのは、企業だけではなくて、ナチスに好意的だったアルゼンチンのペロン大統領やバチカンの司教まで含まれていました。さらに著者はアメリカ企業までそこに絡んでいる、と驚きの記述をします。
ボルマンが隠匿したと考えられる財宝の全貌は、当然わかりません。ただ、残された電報や文書から巨額のものが「存在すること」は確かなようです。
さて、ここから舞台は南米に移りますが、ボルマンが姿を消しているので困った著者は、逃亡組織を使った戦犯の亡命者たちを何人か取り上げます。これはこれで興味深い話です。海外のネットワークを構築して「SS同志会」を結成したら、22箇国10万人の会員になった、と言われると、そこまで?と驚きます。さらに、そのネットワークに目をつけた西ドイツの連邦情報局のゲーレンが「反ソ」を合い言葉に密接に協力していたのです。
1960年にアイヒマンがイスラエル特務機関に逮捕されましたが、そのとき「ボルマンは生きている」と明かにしました。裁判中に「元気を出せ ボルマン」という電報がアイヒマンに届きましたが、その署名はボルマン自身のものだったそうです。アイヒマンの次男もボルマンに会ったことがあると述べました。しかしボルマンの行方は知れません。南米ではこれまでに16人の「ボルマンそっくりさん」が逮捕されているそうです。
今のヨーロッパには「ユダヤ人虐殺はなかった」と主張する人たちや、ヒトラーを礼賛する人たちが活動をしているそうです。ナチスの亡霊であればまだ良いのですが、それが実体を持って活動をしてくれると、ちょっと困ってしまいます。だってヒトラーは『わが闘争』で「劣等種族」として黄色人種も挙げているのですから。私は“ヒトラーの亡霊”に殺されたくはありません。