問いかけをされたら「正しい答え」を出そうと人は努力しますが、そもそもその問いが正しいものかどうかの検討をまずするべきではないでしょうか。間違った前提に立っている問いには最初から「正しい答え」なんかないのですから。
【ただいま読書中】『陰陽師 ──太極ノ巻』夢枕獏 著、 文藝春秋、2003年、1286円(税別)
悪く言えばマンネリですが、良く言えば安定感のあるシリーズ展開が続いています。良質のシットコムのような、安倍晴明の屋敷(とその周辺)をお決まりの舞台として、安倍晴明と源博雅の名コンビが妖怪変化が関係する謎を解き続けています。
謎と言えば、冒頭の「二百六十二匹の黄金虫」はもちろんエドガー・アラン・ポーの『黄金虫』へのオマージュでもありますね。しかもそれが二百六十二匹……とタイトルを読んだ時点で私は「謎」(何を題材とした暗号であるか)が解けた気がしました。実際にそれは正解だったのでちょっと嬉しい気分です。ただ、その二百六十二匹の「暗号」を分類する単純作業を著者は本当にこつこつとやったのでしょうか。確認のために自分でやる気にはならないのですが(だって面倒だもの)、ロマンとか想像力とかだけではなくて、こういった単純作業の繰り返しも本シリーズを支えているのでしょうね。いやあ、楽しい本です。