【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ゼロ円

2020-01-08 07:15:24 | Weblog

 資産公開で「預貯金はゼロ」と主張する政治家がやたらと多いのだそうです。
 本当に?
 だったら誰かがそういった預貯金を盗んでも、被害届は出せませんよね。「ないもの」は盗めないはずですから。「ルパン三世」、どこかにいないかなあ。

【ただいま読書中】『第二次世界大戦のミステリー』ジェレミー・ハーウッド 著、 西澤敦 訳、 源田孝 監訳、
悠書館、2015年、5000円(税別)

 戦争には「ミステリー」がつきものです。常識ではあり得ないような「謎」が次々登場し、それによって戦争の帰趨が決定されます。戦後にその「謎解き」が行われますが、実はけっこうでたらめな「説」が俗説として横行しているのだそうで、それに対してきちんと実証的に取り組もうと本書では努力が為されています。
 たとえば「ダンケルクの奇跡」。第一次世界大戦でフランスはマジノ線を過信してドイツ軍に一杯食いました。そこで1940年代にはその“教訓"からフランス軍やイギリス海外派遣軍はベルギーに入ります。しかしドイツ軍は今回はフランス軍が「アルデンヌの森は戦車は通行不能」という“過信"を持っていることを利用して、簡単に国境を突破してしまいます。イギリス海外派遣軍は、フランス軍やベルギー軍と一緒に撤退を開始。目指すはダンケルクです。ここで「ミステリー」が発生します。このままドイツ装甲部隊が突進を続けたら、連合国軍は死ぬかドーヴァーに落ちるか降伏するか、しかなかったはずですが、その直前にドイツ軍は不可解な緊急停止を行ったのです。ここで得られた貴重な3日間で連合国軍の多く(33万7000人)がイギリスに撤退ができ、彼等はのちにまた戦線に投入されることになりました。ここで通説では「ヒトラーがアホだった」となるのですが、実際にはB軍集団司令官ルントシュテット元帥が停止命令を出していたのでした。ヒトラーはルントシュテットの戦術的な判断に賛成しただけだったのです。この判断が戦略的には間違っていた、とわかるのは、戦後になってからのことです。とりあえずこの戦いそのものは「ドイツの大勝利」で、ドイツ第三帝国の全教会と市の鐘が3日間鳴らされ、チャーチルは「戦争の勝利は脱出によってもたらされるのではない」とぶつぶつ呟くことになりました。
 他にも、チャーチルの首相就任や掠奪された財宝、ルドルフ・ヘスの奇想天外な飛行、真珠湾攻撃、ロサンジェルスに対する日本軍の攻撃(潜水艦が油田や要塞を標的に艦砲射撃、潜水艦搭載の小型機が山林に爆弾投下)……さまざまな「ミステリー」が登場します。私が知らない話も続々。たとえばジャズの世界で有名なグレン・ミラーが四十歳で少佐として従軍していて不可解な行方不明となったことはまったくの初耳でした。
 戦争は「人を信じない」ことの競争でもあります。対敵協力者に見えて実はレジスタンスの闘士かもしれないし、スパイのようで実は二重スパイかもしれません。ひとつ「真相」がわかったと思っても、そのひと皮下には別の「真相」が隠れている可能性が常にあります。そういった「信じない」を敵も味方もやるのですから、もう何が何だかわからない状況になってしまうのは仕方ないでしょう。で、そういったことをしていた人たちは、戦後には「人を信じる」をすぐに取り戻せるのかな?