スポーツの優勝シーン(たとえば大リーグとかF1とか)でシャンパン・ファイトがよく行われています。それを真似てか日本のプロ野球ではビールかけが行われていますが、どうせなら本物のシャンパンでやった方が“豪華"なのではないでしょうか。せっかくの「優勝」なのですから「お安くビールで間に合わせました。安いから本数を出します」と言うのはちょっと寂しいな。まあ、ビールにしてもシャンパンにしても、人にかけられるよりは人に飲まれる方が“本望"でしょうけれど。
【ただいま読書中】『シャンパンの歴史』ベッキー・スー・エプスタイン 著、 芝瑞紀 訳、 原書房、2019年、2200円(税別)
「スパークリング・ワイン」は祝賀の儀式などでの特別な飲み物ですが、その中でもシャンパーニュ地方で高品質なものが「シャンパン」と呼ぶことが許されています。
シャンパンを発明したのは修道士の「ドン・ピエール・ペリニヨン」と言われていますが、その前から発泡性のワインは製造されていました(というか、樽から瓶に移されて密閉されたワインでは、春になってから酵母が再活動を始めて炭酸ガスを出して発泡性ワインを自然に“製造してしまう"ことがあるのです)。ともかく、ドン・ペリニヨンは、葡萄の剪定やワイン醸造方法を確立しそれを後継者に伝えました。ドン・ペリニヨンの甥ニコラは17
29年に世界最古のシャンパン製造会社ルイナール社を設立しました。フランス王室は古くから「シャンパーニュのワイン」に特別扱いの後援を与えていて、仲買人の中には自分でワイン造りを考えるものもいました。シャンパーニュ地方で葡萄栽培を始めた仲買人クロード・モエもその中の一人です。
現在普通に飲まれているシャンパンは5〜6気圧くらいの圧がかかっていますが、18〜19世紀のシャンパンは最大でも3気圧程度でした(ガラスがもろく、密閉性にも問題があってそれ以上の圧にはできなかったようです)。また、シャンパンを瓶詰めする工程は、瓶の爆発やコルク栓が弾丸のように飛び出したりの危険と常に隣り合わせでした。
戦争はシャンパンの消費(特に輸出)に悪影響を与えます。ナポレオン戦争や普仏戦争、南北戦争、二度の世界大戦など、すべての戦争はシャンパン業界にネガティブな影響を与えました。さらに、葡萄畑をうどんこ病やべと病が襲います。それでも業界は生き残り、さらに普仏戦争後には市場が望んでいる「辛口のシャンパン」の製造に成功します。
シャンパンが世界で“成功"すると、あやかりたい人たちがそれに続き、世界中で「シャンパン(のようなもの)」が製造されるようになりました。その品質は実に様々で、名前だけいただいた粗悪品から、地元の葡萄の特徴を生かした高級なスパークリングワインまであります。そこで「シャンパン」の名称を守るための戦いがおこなわれました。
「ワインの澱(おり)」は不純物だと私は思っていましたが、シャンパンの場合は澱と長くともにあることでワインに複雑で深みのあるアロマとフレーバーが加わるのだそうです。で、出荷前にボトルから澱抜きをする必要がありますが、これがまた大変な手間です。シャンパンが高いわけだ。
そうそう、最近の気候変動で、畑の葡萄はよく熟すようになり、シャンパンの品質はそれにつれてさらに向上しているそうです。まさか地球温暖化の話題が登場するとは思いませんでしたが、この気候変動はシャンパンだけではなくて他の農産物にも影響を与えていることでしょう。未来の地球の「食」はどうなっていくのかな?