【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

2020-01-26 11:23:22 | Weblog

 「笑い」は対人関係で重要なものですが、その種類は様々です。
 他人に無関係に自分だけ笑っている人がいます。
 他人を笑わせる人もいます。
 他人に笑われている人もいます。

【ただいま読書中】『ニミッツ・クラス』パトリック・ロビンソン 著、 伏見威蕃 訳、 角川書店(角川文庫)、2001年、1000円(税別)

 「F14トムキャットは、全幅64フィートのバイク」「ニミッツクラスの空母は、エンパイア・ステート・ビルが横倒しになって海面を30ノットで進むようなもの」といったわかりやすいんだかわかりにくいんだか、のたとえから本書は始まります。
 アラビア海で演習と軍事的な示威活動をおこなっていたニミッツ級空母トマス・ジェファーソンは、突然核爆発の炎の中に消えます。イージス艦と原子力潜水艦などからなる空母戦闘群のど真ん中で。事故か? 破壊工作か?それとも敵の攻撃か? 大統領と海軍首脳は茫然としますが、事故だったら海軍は核兵器を安全に取り扱う能力を持たないということになりますし、攻撃だとしたらそれをむざむざと許した点でやはり海軍は無能だということになってしまいます。海軍提督は頭を抱えます。6000人の無残な死の重さとともに、海軍とアメリカの危機がずっしりとその肩にかかってきたのです。
 兄がトマス・ジェファーソンの参謀長だったボールドリッジ海軍少佐(核兵器の専門家)は、悲しみにうちひしがれながら「核魚雷による攻撃だ」と確信、大統領を説得して捜査に乗り出します。“第一容疑者"はイラン。次の候補はイラク。使われたのはおそらくロシアの潜水艦(と核魚雷)。しかし捜査の過程で意外な“容疑者"が浮上します。イスラエルです。
 いやもう、各国の思惑が交錯して話はややこしくなっていきます。ただ、幸いなことにデタントの時代。本書ではロシアがけっこう素直で、謎解きは少しずつ進んで行きます。
 とばっちりを食らったのはイランですね。虎の子の潜水艦部隊をアメリカの特殊部隊に襲撃されてしまうのですから。
 さらに、ボスポラス海峡を潜航したまま探知されずに通過できるか、という「冒険」もおまけとしてつけられています。「海の風雲児」シリーズにもたしかそっくりの冒険があったと記憶していますが、このときにはレーダーなどはない時代設定でしたから、困難さは相当違います。「海の風雲児」は戦時でしかも潜水艦が古いタイプ、というハンディキャップはありますから、スリルの点は同じになりますが。
 結局「真相」は秘密のベールの向こう側に葬られてしまうわけですが、もしかしたらこういったタイプの事件がイラク戦争の引き金になったのかも、なんて想像をすることはできます。
 ただ、もしも私が“ボス"だったら、せっかく敵軍の中枢に仕込めた有能なスパイを、こんな形で使い捨てすることはしません。もったいなさ過ぎるもの。