俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

凶悪犯罪

2009-11-10 16:35:11 | Weblog
 近頃、凶悪な犯罪の報道が目立つ。島根県立大学生のバラバラ殺人事件や隣の鳥取県での元ホステスによる連続殺人容疑、あるいは埼玉・千葉の結婚詐欺女による連続殺人容疑など、日本の治安の悪化を感じさせるニュースが多い。
 しかしデータを見ると殺人事件は減っている。「人口動態統計」によれば他殺による死亡者数はほぼ一貫して減少傾向にあり、最近では600人を割っている。しかもこの600人の中には心中も含まれているから、本来の「悪意に基づく殺人」はもっと少ない。
 11年連続して30,000人以上が自殺をしている日本で殺人が600人以下とは非常に少ないと感じるのは私だけではあるまい。
 日本では殺人とは非常に非日常的なものだ。多くの心優しき日本人は殺人どころか、人を殴ったこともない人が大半だろう。ごく例外的な事件に脅えて、人を見たら泥棒と思うような社会になるほうが危険なことだろう。

合宿と洗脳

2009-11-10 16:22:06 | Weblog
 脳の機能を低下させる方法は沢山ある。
 アルコールなどの薬物を使えば脳の機能が低下することは日常的に見られるし、もっと簡単な方法は睡眠不足だろう。
 時代劇やスパイ映画などで残酷な拷問のシーンがあるが、時間的余裕さえあれば、こんな残酷で傷の残る方法を使わなくても、眠らせなければそれだけで充分だ。そんな状態になれば知力は低下するし人格は崩壊して意志の力も大幅に衰える。簡単に白状してしまうだろう。
 オウム真理教の犯罪が暴かれた時に、主要な信者が理科系の高学歴者だったことに多くの人が驚いた。なぜこんな人達が洗脳されたのか様々な議論がなされた。
 私は合宿の効果が大きいと思う。合宿は余計な情報から隔離するとか連帯感を増すとかいった効果以外に睡眠時間を制約することができるからだ。「修行」と称して睡眠時間を削り知力を低下させた状態に追いやれば刷り込みは簡単だ。一旦、根拠も無く刷り込まれた信念を合理的な思考によって覆すことは難しい。
 オウムに限らず多くの宗教団体は出家と合宿という生活形態を奨励する。合宿は浮世から離れるという意義だけではなく、洗脳するための最高のシステムだからだろう。

和の力

2009-11-10 16:02:56 | Weblog
 8人でロープを引けば4人力にしかならないらしい。これをリンゲルマン効果というそうだ。
 なぜ4人力にしかならないのか。1つはタイミングのズレだろう。人は力を出し続けることができないから力を入れたり抜いたりする。力を入れる瞬間が一致すれば8人力になる筈だがタイミングが2分されれば4人力にしかならない。
 もう1つの理由は他者に対する依存だろう。他に7人もいれば自分一人が手を抜いても大したことにはならず誰にも気付かれない。お互いに他人をアテにすれば力が半分になってしまうのも当然のことだろう。
 知的活動も1+1=2とはならない。3人寄っても文殊の知恵とはならないことは誰でも知っている。
 奇跡的な例外はビートルズだろう。ジョン・レノン+ポール・マッカートニーの場合は1+1≧5となった。レコードとCDの売上高では既にポール・マッカートニーがビートルズを上回っているそうだが、僅か10年間のビートルズの活動に追いつくためにポール1人では40年掛かったと言っても良かろう。
 「和を以って貴しと為す」和国(倭国)では長い間チームワークが重視されて来た。今なお「野球」においては個人プレイよりもチームワークが重視されており、それがWBC連覇という快挙を招いたが、企業においては成果主義という形で個人プレイを評価しつつある。これはリンゲルマン効果を招いて、全体としての力の低下に繋がるのではないだろうか。力のベクトルがバラバラに働けば相互に打ち消し合って限りなくゼロに近づいてしまうことは数学的にも証明できる。