俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

冬休み

2011-12-30 17:14:14 | Weblog
 私が利用している大阪市営の温水プールは12月28日から1月4日までの8日間が冬休みだ。ずっとそうなのだから諦めているが不便で仕方がない。運動能力は2日休めば回復するために4日掛るとも言う。もし本当なら16日掛るということになる。
 勿論、手を拱いている訳ではない。この期間中には2・3回、電車に1時間ほど乗って郊外のホテルのプールに通う。時間的・経済的には大した負担とは言えないが鬱陶しい。
 なぜ8日間も休むのだろうか。お役所仕事と言えばそれまでだが、実際の運営は民間企業に委託しているし、従業員もアルバイトが中心なので休日営業をしても余り人件費は嵩まない筈だ。それどころか勤務できる日数が増えることを歓迎する従業員のほうが多いだろう。喜ばないのは月給制の従業員で喜ぶのは日当制の従業員だ。鉄道やコンビニやファーストフード店などは年中無休で営業しているのだからできない訳では無かろう。
 客商売をする民間企業は休業日を減らして経営効率を高めた。公営の施設はそんな努力を怠っている。特にプールのような施設ビジネスは営業日数を増やすほど経営効率は良くなるのだがそんなことは全く考えていないようだ。橋下市長の誕生によってこれらも見直されることを期待したい。
 全部のプールの冬休みを返上する必要は無い。一部のプールだけを営業すれば充分だ。多少割増料金を払っても構わない。施設があるのに有効に活用できないということは公的資産の無駄遣いとさえ言える。

パトロン

2011-12-30 17:00:54 | Weblog
 フランスには奇妙な婚姻形態がある。パクス法のことではない。パトロン制度だ。
 芸術家がしばしばこの仕組みを使う。例えば40歳の男性の芸術家が優れた才能を持つ20歳の女性と結婚する。彼は若い妻に英才教育を施して育てる。彼女は才能を発揮して夫に劣らぬ名声を獲得する。夫が65歳で死ねば45歳の妻は才能ある25歳の男を夫にする。彼女は若い夫に英才教育を施して・・・・・これが延々と続く。
 要するに親子ではなく夫婦間で文化を継承する。親子なら不肖の息子や娘にしか恵まれないこともあろうが、この制度なら自分が見出した才能ある若手を育てることができる。
 若い芸術家の才能が認められることは難しい。特に画家の場合は生前には1枚の絵も売れずに死後に初めて評価される例も沢山あり、20代・30代で世間から評価されることは困難だ。そのために多くの才能ある芸術家が挫折する。パトロン制によって若い芸術家が安定した生活を得てゆっくりと才能を開花させることが可能になる。パリが今も芸術の都であり続けられることの1因はこの制度に負っているのではないだろうか。なおこの制度は相続税を節税できるというメリットもある。

想定可能

2011-12-30 16:43:03 | Weblog
 福島第一原発の事故について事故調査・検証委員会が26日に中間報告書を発表した。政府や原子力安全・保安院や東電の発表とは違って信用できる内容だ。来夏の最終報告書にも期待したい。
 但し「想定外」をバッサリと切り捨てたことには賛同しかねる。人は想定内でしか活動できないし想定外に備えたマニュアルなど作れない。起こった後で「想定すべきだった」と指摘するのは狡い論法だ。起こる前に指摘しなければ無意味だ。
 こんなことも想定は可能だ。①日本沈没②風速100mの台風③核ミサイル攻撃④巨大隕石の衝突⑤富士山の大噴火⑥1ドル50円の超々円高。これらを「起こり得ない」と断定できるだろうか。では本当にこれらを想定内とすべきだろうか。もしこれらを想定内とするならビルも高速道路も作れなくなる。現実的な基準を定めてそれを超えたら運が悪かったと諦めるべきだろう。逆に言えば諦められる範囲の施設しか作るべきではないということだ。
 火薬は充分に安全に管理されているだろう。それでも都心に大量の火薬を保管すべきではない。飛行機が滅多に墜落しなくても基地や空港の周辺に街を作るべきではない。爆発したら壊滅的な被害を与える巨大なガスタンクなど作ってはならない。
 100%の安全はあり得ない。散歩をしていて宇宙船の破片が頭に当たる可能性はゼロではない。しかしこんなことを心配するのは正に杞憂だろう。私は「理想は現実的でなければならない」と考えているが、それと同様、危機管理も現実的であるべきだ。

東電の値上げ

2011-12-27 15:25:06 | Weblog
 東電が値上げを発表した。これは全く不当なものだ。発電コストの上昇を理由としているがそのコストには福島第一原発の廃炉や損害賠償金なども含まれている。これでは原発事故の責任を東電利用者に押し付けるようなものだ。なぜ事故の負担を地域独占企業の利用者が負わねばならないのか全く理解できない。
 そもそも何兆円とも言われる賠償を一企業に負わせる仕組みに無理がある。東電としては将来的には破綻することが分かっているのだから延命策を図った上で適当な処で経営を放棄するという魂胆だろう。
 東電の本音は今の待遇を少しでも長く享受したいということであり、政府の本音は責任を直接背負いたくないということだろう。妙な事情から両者の思惑が、国有化回避という方向で一致している。
 訳の分らぬ賠償支援機構を作って国民を誤魔化し続けるのはさっさと諦めて速やかに国有化をすべきだろう。その場合、株は日航と同様に紙クズとなる。この無意味な延命策は権力者が株を少しでも高く売り抜けるための時間稼ぎではないかとさえ勘繰りたくなる。
 勿論、国有化されても国が負担をするという訳ではない。国はその負担を丸々国民に押し付けるだけだ。それでも東電の利用者だけに過重な負担をさせるよりはずっとマシだろう。関東地方だけで負担するのではなく広く浅く全国民で負担すべきだろう。

真因

2011-12-27 15:11:20 | Weblog
 物事の原因は1つではなく殆んどの場合、複数の原因がある。自動販売機にお金を入れてボタンを押せば商品と釣銭が出るが、こんな単純な因果関係は殆んど無い。東日本大震災で津波の被害が大きかった原因としては、想定外の大きさだったこと、避難が遅れたこと、情報が充分に伝わらなかったことなど幾らでも挙げることができる。しかし真因は何か、と尋ねても答は得られない。
 トヨタでは「なぜを3回繰り返して本当の原因に対処せよ」と言うが何回「なぜ」を繰り返しても真因にはたどり着けまい。主因の幾つかが見つかるだけだ。
 泥棒を防ぐためにはどうすれば良いだろうか。刑罰を重くする、施錠を徹底する、防犯カメラを設置するなど幾らでも挙げることができる。しかし最善の対策は貧困を無くすことだろう。貧困者がいなければ泥棒は激減するだろう。
 但しこれは机上の空論に過ぎない。貧困を無くすことはとてつもなく難しいからだ。一人暮らしの女性の貧困率(この資料では年収114万円未満)は勤労世代でさえ32%もあるそうだ。一人暮らしの女性を貧困から救うことでさえ困難なのだから障害者や老人を救うことは絶望的とさえ思える。仮に泥棒の真因が貧困だとしてもその真因に対する対策ができないのなら、効果の乏しい対症療法に頼らざるを得ない。

夜の蝶

2011-12-27 14:55:49 | Weblog
 「夜の蝶」はフランス語訳できない。英語では蝶はbutterflyであり蛾はmothだがフランス語ではこの2者は区別されずどちらもpapillonだ。日本人がmouseとratを区別せずに「ネズミ」と呼ぶようにフランス人は蝶と蛾を区別せずにpapillonと呼ぶ。つまり同じものという認識だ。従ってpapillonが昼現れようが夜現れようがどうでも良いということになる。
 日本人は蝶と蛾を異常なまでに区別したがる。蝶は可愛く蛾は汚いと信じている。確かに毒蛾もいるが殆んどの蛾は無害だ。一部の蛾の有毒性を根拠にした差別は不当だ。
 蝶を愛する日本人は夜に蝶を見ると驚愕する。昼の可憐な虫がなぜ夜に現れたのか、と。
 それと同じ思いが「夜の蝶」という言葉には込められている。二流の女の職場である筈の盛り場に、知的で上品でしかも少し毒のありそうな美女がいれば心魅かれるのは当然だ。いるべきでない人がいるべきでない場所にいたらその不思議さ・不自然さが心に響く。
 「夜の蝶」はそんな感情を込めた言葉だ。これを単純にpapillon de nuitと翻訳しても「蛾」にしかならない。むしろ意訳して「夜咲く朝顔」とでも表現したほうが適切だろう。

醜い性器(3)

2011-12-23 15:16:00 | Weblog
 なぜだか分らないが、3年以上前に書いた「醜い性器」の記事のアクセス数が今でも少なくない。私としてはそれなりに自信を持って書いた記事だが本人の思惑以上に評価されているようだ。
 この記事を思い付いたのはこんなジョークを知ったことがきっかけだった。
 A氏が出勤すると周囲の人から「どうしたのか」と聞かれ続けた。とにかく重病としか思えない外見だったからだ。顔面蒼白、手足は震え、呼吸も荒々しい。本人は至って快適だったが、とにかく見た目は重病人そのものだった。上司はすぐに帰宅して病院に行くよう命じた。
 A氏は病院で自分の症状について説明した。「快適なのですがなぜか見た目は恐ろしく悪いようです。」
 医師は途方に暮れた。こんな病気に出会ったのは初めてだったからだ。そこで分厚い病理事典を広げて調べ始めた。「見た目が悪くて不快な」病気は無数にあった。「見た目は良いが不快な」病気も沢山あった。「見た目は良くて気持ちも良い」は「健康」と書かれていた。そして遂に「見た目は悪いが気持ちは良い」を見つけた。医師は大喜びして叫んだ。「君の病気はヴァギナだ!」と。

ユダヤ人(2)

2011-12-23 15:00:15 | Weblog
 ユダヤ人は僅か1,300万人しかいない。世界人口の0.2%に過ぎない。日本人の1/10、中国人の1/100だ。ところがこの少数民族が自然科学分野でのノーベル賞の約20%を獲得している。この異常な多さは何を意味するのだろうか。
 先にユダヤ人を定義する必要がある。ヒットラーはユダヤ人の子孫までユダヤ人に含めたが、これはユダヤ人を根絶やしにするための拡大解釈だ。ユダヤ人とはユダヤ教を信じユダヤ教の戒律に従って生きる人だ。日本人であろうともユダヤ教徒になればユダヤ人になれる。これはイスラム教を信じればムスリムになれるのと同じことだ。
 ではなぜユダヤ人は優秀なのだろうか。遺伝的なものではない。人種としてはバラバラだ。ブラックエスニックジョークでは阿呆扱いをされ勝ちなポーランド人にもユダヤ人はいる。
 ではユダヤ教の教えが彼らを賢くしているのだろうか。ユダヤ教の教義は誰でも知ることができる。旧約聖書こそユダヤ教の聖典だ。勿論、ユダヤ人は「旧約」などとは呼ばない。キリスト教徒が勝手にそう呼んでいるだけだ。
 ユダヤ人を聡明たらしめているのは異教徒の中にいるということだろう。多数者であるキリスト教徒やイスラム教徒の中で自己を見失わないためには問題意識を持ち続けねばならない。この緊張感が彼らを賢くする。一方、日本のような曖昧な甘えた社会にいると徐々に馬鹿になる。同質化は凡庸へと繋がりガラパゴス化を招く。日本人は海外へ出ればユダヤ人と同様に異端者となるので潜在能力を発揮できるのではないだろうか。異端者という自覚を持たなければ異端者の独自性は発揮されない。

環境問題

2011-12-23 14:45:43 | Weblog
 環境問題には胡散臭さが付き纏う。それはこれまでに散々騙されたからだろう。利権を持つ人がマスコミを使って煽り立てることが余りにも多かった。ダイオキシン、環境ホルモン、レジ袋、CO2による地球温暖化等々、これらはニセ環境問題だった。再生紙偽装事件があったことからも分かるようにリサイクルでさえ裏では妙なことが行われている。
 こんなことが続いていたために環境問題に本気で取り組むことは馬鹿馬鹿しいこととさえ感じられる。しかし放射能汚染は本当の問題だ。これまでのニセ環境問題とは明確に区別して、かつての公害問題と同様に真剣に対処する必要がある。
 マスコミは余り触れないが魚の産地偽装は深刻な問題だろう。たとえ福島県沖で獲った魚であろうとも東京で水揚げをすれば東京産になる。なぜこんな危険な状態が放置されているのだろうか。政府は東北の漁民を守るためなら全国民を危険に晒しても構わないとでも考えているのだろうか。「直ちに健康に悪影響を与えない」という曖昧な言葉を繰り返すから国民は不信感を持つ。唯一とも言える明確な安全宣言をした米も実は汚染されていた。
 今も福島第一原発からは大量の汚染水が流されている。雨が降る度に汚染地は少し除染され、その水は海に流れ込む。汚染海域は確実に拡大し続けている。

歴史

2011-12-20 15:16:44 | Weblog
 冬は嫌いだ。寒いと行動力も思考力も衰える。
 こんなことを言うと「文明は寒さの克服から生まれた」と反論されそうだ。火の活用や衣服の発明は文明の源だろう。何となくそう信じている。しかし本当にそうだろうか。
 四大文明を考えれば決してそうではない。エジプト文明もメソポタミア文明もインダス文明も温暖な地で生まれた文明だ。ヨーロッパ文明も最も暖かい地域のエーゲ文明から始まっている。
 例外は黄河文明だ。これは寒冷地で生まれた文明だ。しかしほぼ同時期に長江(揚子江)文明があったらしい。麦に頼った黄河文明に対して長江文明は米文化だ。日本文明も長江文明の影響を受けているようだ。
 長江文明が軽んじられているのは歴史書が乏しいせいであって決して黄河文明に劣っているからではない。司馬遷という天才歴史家の「史記」があるから黄河文明は中国文明と同一視さえされている。長江文明が黄河文明に負けているのは優れた歴史書が無いということだけだ。
 卑弥呼の邪馬台国も魏志倭人伝に記載されているから重要な史実とされているが過大評価の可能性もある。古事記や日本書紀を鵜呑みにする人はいないだろう。文書を過大に評価すれば誤った歴史観を持つことになりかねない。