日々、思うことをサラサラと。

日頃、イイな、とかおかしいゾ、とかキレイだなと思うことをサラサラと書き出してみたい。

記録 映画2010/5月②

2010年06月13日 | 映画
5月は(も)コーエン兄弟の旧作をいくつか再見してみた。
若い時分に見た「赤ちゃん泥棒」なんて面白いだけだったのに、
今、再見するとあれやこれやギュギュっと内包されているものが多々ある。
他、個人的にヒットしなかったものはスルー。

「赤ちゃん泥棒」1989/アメリカ
 監督:ジョエル・コーエン 脚本コーエン兄弟  ニコラス・ケイジ ホリー・ハンター

強盗で摑まったニコラスと婦人警官のホリー。知り合ってから結婚するまでの
状況説明はさり気ない映像だけ。こういう頭脳的な簡略するセンスが好きだ。
二人はベビーを待望しているが授かることが出来ない。そこへ5人のベビー
誕生というニュースが流れる。なんでこちらは出来ないのにあちらは5人なの?
一人くらい失敬しちゃってもいいんじゃない?とこの夫婦は考えた。
略奪してきたベビーへの可愛いがりようがハンパじゃない。子沢山の姉夫婦
を反映させて、良かれ悪かれ子どもは大人を大いに動かさざるを得ない存在
だということを知る(その威力は凄いのだ)
資産家の親を持つベビーに大金の賞金がかけられ、逃亡して居候を決め込んで
いる務所仲間(”バートン・フィンク”のジョン・グッドマン)が赤ちゃんを略奪
し逃亡・・・というような内容だが、ニコラス・ケイジ ホリー・ハンター ジョン・グッドマンと
達者な役者が揃うとドタバタだけでは済まなくなる。
ついついバカなこと(強盗)を繰り返すニコラス・ケイジの哀愁と可笑しみ、
ホリーの笑顔の少ないどこか偏ったような硬質な表情が始終危なげだ。
そして、やはり何考えているか分かんないジョンの不気味さ。
もちろん、赤ちゃんの現状知らん顔のとぼけた可愛さは最高。
赤ん坊と動物にはどんな名優も適わないといいますが・・やはり納得

「ブラッド・シンプル」1984/アメリカ
 監督:ジョエル・コーエン 脚本コーエン兄弟 ジョン・ゲッツ フランシス・マクドーマンド ダン・ヘダヤ

”テキサスの田舎町。ある酒屋の主人が一人の私立探偵に従業員レイと
浮気中の妻アビーの殺害を依頼する。しかし探偵は裏切り、主人を殺し
金を奪って逃走。一方、レイは現場に落ちていたアビーの銃より彼女が
殺したと勘違いし……”  ーオールシネマよりー

出だしからラストまでハラハラしっ放し。
光と影の映像効果がホント凄い月光が室内を不気味に照らす。
月光の青白さをミステリーに持ってくるとこんなにも効果的なんだね。
常に誰?かに見られているという落ち着かない感じが終始付き纏う。
平常心を失っている人間のねっとりした執拗な静かさが怖い。
ほとんど薄闇の中での撮影で、残酷なシーンを撮らなくても充分
過ぎるくらいの怖さで、こちらの想像力を上手く引き出してくれる。


「ある愛の風景」2004/デンマーク
 監督:スザンネ・ビア  コニー・ニールセン ウルリク・トムセン

男はアフガニスタン支援部隊に所属している。
父母、妻、娘たち、そして刑期を追えたばかりの弟にとっても
それぞれから頼られている良き人だった。
指令を受け任務に向かったその先で撃墜され、家族は死亡通知を受けとる。
弟は辛い状況の家族を支えるべく配慮をするのだが、やがてそこはかとない
恋情が義姉との間に流れるがお互い抑制する。
ところが、撃墜死したことを告げられていた夫は捕虜となり生きていた。
夫はわが身を生かすために強要され、同胞を打ち殺してしまう。
帰還した後もこの時の出来事がトラウマとなり人格が激変していく夫。
弟と妻の仲を疑い、敏感な娘たちはそんな父親の異変にすぐに気付く。
妻は夫の変化に、帰還までの過程を聞き出したいのだが、夫は寡黙で
受け付けない。あまりの人道的な見地から外れた行為の強要だった為に
その恐怖が日々募っていき、壊れていく。
そして、遂に家族に対し暴力事件を起こし逮捕されてしまう。
刑務所での面会で妻は毅然と夫に問う「あそこで何があったの?」と。
言葉で解き放つことができれば、この凄まじいトラウマから少しでも
救うことが出来るのではないかという確信をもって問うた。

余談だけど、この妻役の笑顔の質が終始気になった。
撃墜死の連絡の後、娘たちのためにも負の感情を押し殺し日常を健気に
生きるという設定にしろ、笑顔が明るすぎる。この女優は魅力的に見せることに
腐心したのだろうか。ヘンな違和感がある。

「ツバル」2/1 1999/ドイツ
 監督:ファイト・ヘルマー ドニ・ラバン チュルバン・ハマートヴァ

”どこか遥か遠い時代の、とある国。荒れた土地の一角にある室内プールで
アントンは管理人の父の手伝いをしていた。いまだ、プールの外に出たこと
のないアントンの夢は船長になって航海の旅に出ること。ある日、常連客の
父に連れられてやって来た娘のエヴァを見たアントンは彼女に一目惚れする。
エヴァもこの不思議な青年に興味を抱くのだが……。架空の国を舞台にした
異色のファンタジー・ドラマ・・・”  -オールシネマよりー

各国で賞を獲得し大反響だったという作品・・・ということで試してみた。
モノクロで場面設定も地味、だが不思議な世界観がそこにあった。
廃れた室内プールの雰囲気、経営する父の異様な威厳、受付のおばさんは
入場料金の代わりにボタンを収集している・・・。
観ているうちに、なにやら心地よい気持ちに満たされていく。
私はこういうの好きだな。(ドニ・ラバンは”ポンヌフの恋人”の彼)


「ゲート・トゥ・ヘブン」 2003/ドイツ
  監督:ファイト・ヘルマー ヴァレラ・ニコラエフ マースミー・マーヒジャー
「ツバル」の監督が気になり、続けてファイト監督を試みる。

様々な事情で空港内での生活を余儀なくしている異国籍の老若男女の
事情をコメディタッチで描く。
パイロットになりたかったアレクセイとスチュワーデスに憧れた
ニーニャ(インドの女優)の恋の顛末を軸に物語は展開する。
注目したのは、自分からは積極的に動かないけれど成り行きで事が良い方向良い方向
に向かう初老の男。遂に偶然の幸運の連鎖が幸いして空港の外にまで出られて
しまい、自由の身に!この男、のほほ~~んとしているようでするべき事はちゃっかり
しっかりする。
生きていく上でリキが入りすぎてしまうと災いを招きやすく、抜けると見晴らしがよくなる。
この初老の男の幸運への成り行きは監督の「ツバル」にも通じる視点かな。
アレクセイ役のヴァレラ・ニコラエフはダンスがかなり踊れる人であるだけに
動作がカッコいい。


「サーティーンみんなのしあわせ」2000/スペイン
 監督:アレックス・デラ・イグネシア カルメン・マウラ

”不動産会社で分譲アパートのセールスをしている中年女性ジュリア。
なかなか思うように成績が上がらず少し落ち込み気味。そんなある日、
ジュリアはひょんなことからとあるアパートに住む一人暮らしの老人の
死に遭遇する。しかしこの老人、なんと3億ペセタもの大金を20年もの間
隠し持っていたのだ。ジュリアは偶然その事実を知り、アパートからの
持ち出しを図るのだった。が、同じアパートの住人たちもその大金の存在を
知っていた。しかも彼らはこの20年、老人が死ぬのを今か今かと待ちわびて
いたのだった・・・”   ーオールシネマよりー
                        

ブラックコメディ。”グロリアの憂鬱”のカルメン・マウラに会いたくてレンタル。

やったぁ、大当たりでした素晴らしく面白い。
大金を巡ってジュリア(カルメン・マウラ)とアパートの住人たちの攻防が凄い。
途中から恥も外聞も殴り捨て、とことん追跡し、追跡途中でバタバタと死んでいき
・・と、大金を手にするまでは何だってヤルわ!の心意気が甚だ凄くてここまで
ヤられるとこちらのテンションも上がり爽快だ。
切羽詰まっているのにイケメンに心酔わせ、なり振り構わず大金の入った重いトランク
を下げて疾走、嘘八百を軽快に飛ばし、殴られて血だらけになってもへこたれない女。
重量感のある上半身(脚は綺麗)、辛酸を味わい尽くしたかのような
味わいある面相、なのに営業用のピンクのスーツがこれが似合っちゃうんだ
アパートの住人もこれまた凄い。始めは探りあいなんだけど本性表した途端
えげつないというか・・・ドタバタと13人の住人が大金目当てに
追い掛け回すということがこんなに面白いとは。
カルメン・マウラはこの役をやっていて相当面白かったのではないだろうか。
行け行けジュリアと、つい応援したくなる。
結末もハハっと笑える。小洒落た落ちでした

この女優さん、数多くの映画に出演しているが貴重な存在ですね。
時々、会いたくなる・・・そんな人。




コメント