電脳くおりあ

Anyone can say anything about anything...by Tim Berners-Lee

民主党政権に対する20%の期待と80%の不安

2009-11-08 00:34:24 | 政治・経済・社会

 まるでパレートの法則みたいだが、これが自民党と政権交代した民主党内閣に対する私の現段階の感想だ。民主党のマニフェストに書かれている公約は実にたくさんあるが、それぞれの公約は国民全ての利益になるものではない。大体において、選挙公約というものは全ての国民1人1人が自分たちの利益になるものというより、特定の人々の利益になることを掲げたものである。それを自分たちの利益だと考えた人たちが、その政党を支持するわけだ。しかし、今回の民主党の衆議院選挙の圧勝は、そうした選挙公約を理解し、それを支持して民主党に投票したと言うより、今までの自民党政権に対する批判票として投票したという側面を持っている。

 今話題の、四ツ場ダムの建設中止、高速道路の無料化、沖縄基地の見直し、農家への所得補償などについて見ればすぐ分かると思われるが、それらは賛成と反対がはっきりと際だち、大きな混乱を生んでいる。はっきりしていることは、こうした民主党の政策が特定の人たちには利益になり、別の人たちには不利益になると言うことだ。もちろん、これらの民主党の政策が上手く実現されるのかどうかは、今のところ不確定である。むしろ、これらは新しい政策というより、これまでの自民党政権によってやってきたことをひっくり返そうとした政策で、それだけ抵抗が大きい。これが、既成事実の重みだと言うことができる。

 一度決めたことを白紙に戻したり、あるいは見直したりすることは、別に悪いことではない。しかし、考えてみれば、過去の決定にはそれなりの根拠があったのであり、それを覆すためには相当な力が必要になる。国の政策である以上、決定の変更には理論的な根拠と経済的な根拠が必要である。私には、現在の所、変更の根拠は、きわめて脆弱だと思われる。私が20%の期待というとき、こうした問題を含みながらも、既成事実の上に組み立てられた過去の国の政策を見直すことは、今までの日本をよりよく変えてくれそうな期待を残しているからだ。既成事実のというのは、なかなか変えられない。私たちの生活でもそうだ。そういう意味では、とても勇気のあることだし、特に長く自民党政権が続いていたこをを考えれば、必要なことでもある。ただ、叩けば埃が出るからと言って、検討もせずにすべてを否定することだけは避けてもらいたい。

 そして、80%の不安と言うとき、マニフェストに書いて、それで当選したのだから、その公約は無理矢理にでも実現しなければならないと考えている民主党の不安定さである。おそらくは、民主党のうちの何人かは、そんなことなぜ書いたのかと疑問に思っているに違いない。それは、自民党に対抗するために書かれてたマニフェストなのであり、本来はそんなに違っていなかった政策をより違いをつけるために追加して行ったためである。つまり、ある意味では万年野党的な公約だった言うべきかもしれない。

 現在の臨時国会の野党の民主党内閣に対する追求の仕方を見ていると、とても不思議な気持ちがしてくる。特に、自民党の追求の仕方は、「本当にそんなことができるのか」ということと「それはもう動き始めたことだから、やめるべきではない」という主張に要約される。まあ、これはこれで自分たちがやってきた政策だから仕方がないのだが、あまりに後ろ向き的な追求の仕方ではある。これに対しての民主党の応答は、なれていないと言うか、初めての体験なので仕方がないのかもしれないが、あまりにもお粗末な気がする。こちらは、それで選挙に勝ったのだからやるしかないのだと言う返事しかしていないように思われる。

 そんな論争を尻目にと言うべきか、あまりに膨大な予算が組まれようとしている。今までとは、はっきり違う政策が行われようとしていることだけは確かだ。全ての国民に平等に利益になるようにという政策は、本当はまやかしである。そんなことはありえない。どんな政策も、それが政策として打ち出される以上、誰かの利益を損なっているはずなのだ。そうでなければ、そんな政策はとっくに現実が解決しているに違いない。政治経済的な構造とはそういうものだと思う。いずれ、とても沢山の税金が必要になって来ることだけは確かである。そのとき、国民1人1人から平等に税金を取ることが可能かどうか、今から考えておくべきだろう。そして、民主党は、自分たちがどんな日本をつくろうとしているか、明確なビジョンを打ち出すことが必要になるに違いない。

 本当にそうできるかどうかは別にして、四ツ場ダムは、造らなくて済むものならやめた方がいいに決まっている。また、高速道路は無料の方がいいし、沖縄には基地などないほうが良いに決まっている。ただ、農家への所得補償についてだけは、私にはよく理解できない。これは日本の農業とは何かという大きな問題がある。日本が本当に貿易立国としてこれからもやっていくのなら、農業などもっと工業化してしまったほうが良さそうに思われる。どちらかというと合理的でないの農業を奨励するような所得補償の意味がよく分からない。多分、これは、経済合理性からやがて消えて行かざるを得ない農家に対する補助のようなものとしての役割しかないように思われる。

 と言うことを考えながら、民主党の公約を一つ一つ点検していけば、それが今の日本を変える素晴らしい政策であることでないことだけはよく分かる。政策としては、場合によっては今の日本をもっと悪くすることになるかもしれないとさえ思われるものもありそうだ。確かなことは、今のところ、民主党に代わりうる政党はいないし、自民党が民主党に代わるためには、また何年かかかることなりそうだ。そうした、とても不安定な状態を見ていると、民主党自体が分解しそうな恐れさえある。それが、80%の不安の中身である。いずれ、民主党は今のやり方を変えるときが来るに違いない。つまり、政治的な危機が遠からずやってきそうな気がして仕方がない。そのときは、選挙のためだけのような個々の公約ではなく、民主党のビジョンが問われるときだ。

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