水に降る雪

おもに宝塚、そして日々のこと

月組「グレート・ギャツビー」③

2022-09-26 | 月組

「グレート・ギャツビー」を観て思ったのは、小池先生も最初から小池先生だったわけじゃないんだな、でした

イケコ氏にしては暗転と幕前芝居が多いなという印象で。お芝居もタメがあってやや大芝居。曲も昭和っぽさがあるな、と。

それはそうですよね、初演は1991年、31年前ですから

 

「ヴァレンチノ」がバウホールでの演出家デビュー作品っていうのもビックリですが

その後多くの作品に関わって先日宙組で再演された「NEVER SAY GOODBYE」は2006年。

私が舞台機構の使い方に惚れ惚れした「カサブランカ」は2009年です。

と考えると、デビューから5年後の「華麗なるギャツビー」は演出の上ではまだ発展途上だったのかなと思います。

というか未だに進化してる、新しい演出にチャレンジしてるのが凄いなと思います。

(フィナーレは割と1パターンですけどもね

ネタバレ少しありますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

初演は大劇場公演の前物として作られ、次に日生劇場で再演。

そして今回は大劇場一本物として場面や曲が追加され、より華やかに豪華になっていて、

実は初演も再演も見てないんですが違和感なく上手くつないでいるのはさすがだなと思いました。

出演者が増えたのでパーティーシーンやジーグフェルド・フォリーズの場面は宝塚らしさ全開の華やかな場面になっています。

役名の「妖精」って何??と思ってたら、ホントに妖精さんで

こありちゃん(菜々野あり)と、みうみん(美海そら)のバレエが素晴らしかったです

 

「グレート・ギャツビー」は役が少ないので大劇場一本物として演るのはどうなんだろう、と心配しましたが

上級生まで何役もバイトをしていて、しかもそれぞれの役がしっかり主張しているので凄く面白い

大きい役ではなくても、印象に残る役も多いです。

 

月組あるあるですが、若手の目を引く男役さんがいるな、と思ったら大体からんちゃん(千海華蘭)で笑います。

あなたさっきまで飲んだくれの警視総監だったのに、とか

 

前回のロマ劇で可愛くて忠義者の狸吉だった蓮くん(蓮つかさ)は今回は反社なクズ野郎で

カードゲームでいかさまをやってるのをギャツビーに見咎められたり、

ゆーゆ(結愛かれん)のヒモが絶妙にイヤな奴でいい仕事してます

 

その、ゆーゆはギャツビー邸のパーティーにしょっちゅう出入りして、誰かれなくイイ男に媚を売ってるんですが、

可愛くて嫌みが無いのが素晴らしいあちこちに出没していて、しっかりトムを捉まえるのがさすがでした

それだけでなく、ショーがはねた後の楽屋の場面があって良かったなと思います。

ちゃんとヴィッキーの人生が垣間見えますからね。

 

それはヤスくん(佳城葵)の新聞記者(何回目だ?)にも言えていて、いつもギャツビー邸をうろついてゴシップのネタを探している。

ゴシップ写真を買ってもらったり、スネイグルと組んだりしてますが、根はそれほど悪人ではないらしくて

生きていくために仕方ないけどスネイグルは嫌い、って言ってました

2回目のアイスキャッスルでのギャツビーとのやり取りは味わい深いです。

そこで超カッコイイかなとくん(月城かなと)ギャツビーの一挙手一投足を、SS席で見てます~

とステージサイドウォッチで話してたのが可笑しかったです。

ファンとは違って勉強の意味もあるようですが

 

目を引くと言えば「綺麗な子がいる!」とどの公演でも話題になる、るおりあ(瑠皇りあ)。

アイスキャッスルの場面でギャツビーにコートを着せかける子が

「ぅわメチャクチャ美形がいる~」「あ、るおりあか」ってなりました

新公ニックも評判良かったですし、本公演ではラストのギャツビーの子供時代を演っていて目立ってるので、

次回の新公来るかもしれませんね。

と娘に話したら「あるあるじゃない?」と言われました。

 

 

「グレート・ギャツビー」という作品が好きか嫌いかと聞かれたら、どちらとも言えないです

やっぱり重くてしんどいんですよね~

でも観た後で、ず~っと頭の中でぐるぐる考え続けてしまうのは、物語がしっかりしているからで名作だなと思います。

その時代に生きる人たち一人一人の人生が立ち上がってくるようなお芝居が出来る月組生が大好きです

原作を読んでみたくなります。

 

 

宝塚は先日東京の月組新公が終わってラストスパートです。

小柄で華奢で可愛い系キラキラ多めの、あみちゃん(彩海せら)にギャツビーは全くニンじゃないように思えるのに、

声や話し方、表情佇まいもすっかり変えて、演技力でねじ伏せてくる、あみちゃんさすがでした

月組新公素晴らしかったですこれからの月組も楽しみだわ

 

そして今日は宙組公演の大劇場楽が無事幕が下りたようで良かったです。おめでとうございます

ギャツビーの次がハイ&ローという、この落差が宝塚らしさだな、と思います

次の雪組公演も楽しみになってきました~

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月組「グレート・ギャツビー」②

2022-09-26 | 月組

ギャツビーの感想続き。

ネタバレありますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

原作読んでないので、どれくらい違っているのかわからないんですが、

初演をご覧になったフィッツジェラルドのご親族が、最後にデイジーがギャツビーの墓参りをするのを

「デイジーはそんなことしない」と言われたというのは聞いたことがあります。

怒ってらしたかどうかは知らないんですが

 

原作のデイジーはお葬式にも出ないしお墓参りもしない、かなり冷たい女性として描かれているようで、

それ故に宝塚での舞台化を反対されたらしいですね。

そこをクリアにする意味もあったかもしれませんが、それも含めて「上手く宝塚ナイズ」されてるようだなと思いました。

というより、そこがイケコ氏のこだわりなのではと思いました。初演から変えてませんものね。

 

宝塚版ではデイジーがギャツビーのお墓参りにくるというのは知ってたんですが、こっそり一人で来ると思ってたんですよ

実際には、ちなつちゃん(鳳月杏)トムが運転する車で、ヒルダと娘パメラも一緒でした。但しお墓にお参りするのはデイジーだけ。

トムは車を降りてちょっとふてくされてるというか渋々、という感じでデイジーを待っていました

 

海ちゃん(海乃美月)デイジーは白い薔薇を一本だけ、お墓に投げ入れます。

ルイビル時代と、NYで再会した時に「君は薔薇より美しい」の言葉と共に、

白い薔薇の花束を貰ってその中から一本を抜いて「有難う」と微笑んだ思い出がある花です。

それをお墓に投げ入れることでギャツビーとの訣別を表現してるのかなと思います。

 

デイジーとトム夫妻はこの後どうなるんでしょう元の鞘に戻れるとも思えませんが仮面夫婦になるのか別れてしまうのか。

トムは車を運転していたのがデイジーだと知っています。

でもギャツビーが自分が運転していたことにするんだ、とデイジーに言ったことを知ってそれに乗ったのはデイジーを守るためもありますが、

自分を守るためでもあったわけで、ズルイですよね。更にウィルソン(光月るう)に問い詰められて黄色い車がギャツビーの車だと話してしまう。

まさかウィルソンがギャツビーを射殺するとは思って無かったんでしょうが

 

マートルが車の前に飛び出したのは、自分が運転していると思ったからだと気づいたでしょう。

すると事故の原因は自分(トム)ということに。でもそれをわざわざデイジーに話したりはしないでしょう

高慢で貴族然としていて一般庶民を地を這う虫程度にしか思っていないトムも、さすがに少しは後味の悪い思いをしたでしょうか。

とはいえ根っからの上流階級の人なので、終わったことだとさっさと忘れるんでしょうね

 

それでデイジーは少しは変われるんでしょうか。ギャツビーの重い愛を、一生抱えて生きなければならないんですよね。一人で。

娘パメラがいることでしっかりしなければ、と思えるでしょうけれど。

ラストパーティのゼルダは娘と引き離されることで精神的に崩壊していった気がします

娘を育てながら自分のこれからの道を考え直すことはできるんでしょうか。

現代よりずっと女性が自立して生きていくのは難しい時代ですし、贅沢な暮らししか知らない上流階級の女性ですからね

 

離婚してトムから養育費を貰う手もあるでしょうけど、別れてくれないだろうなぁ

話がかみ合わないというか、相性がまったく合って無い夫婦で、お互い歩み寄ろうともしなさそう

トムにとってのデイジーは近隣の州にまで知れ渡った美人を嫁にした、という一種のステータスなんでしょうね。

愛してるかどうかは問題じゃない体面が傷つくことは嫌がりそうだし。

 

 

この作品に出て来る人たち、ギャツビーはじめ何かに執着してる人が多くて

人間らしいといえばらしいんですが。

 

そんな中で、ちるちる(彩みちる)が演じたジョーダンはかなりクール、というかドライ

彼女も上流階級の出身なんでしょうね、トムに似てて結構ずるく立ち回る人だなと思いました。

カッコイイ女性なんですけどね~。何がきっかけでデイジーと仲良くなったのか謎です

 

そしてクールと言えば、まゆぽん(輝月ゆうま)のウルフシェイム。

気さくで親しみやすいですが裏の顔はマフィアの大ボスでギャツビーを見込んで引っ張り上げた人。

ただし見切りをつけたらバッサリ思いっきりよく切れる人です。

でもギャツビーをを裏切り者呼ばわりして殺したりはしないんですよね。

組織を抜けようとすると大体殺されるイメージがあるじゃないですか

 

「決して手を出してはいけない上流階級の人妻」に「本気の恋」をしているギャツビーを、置いておいても役に立たないとみると、

「ギャツビーは降りたんだ」とウルフシェイムの方からクビにしてくれたのは、

優しさというより計算でしょうし、結果は残念でしたがギャツビーにとっては有難かったでしょうね。

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