水に降る雪

おもに宝塚、そして日々のこと

舞台「刀剣乱舞」山姥切国広単独行-日本刀史 ②

2023-12-03 | 演劇

(続き)

長文ですネタバレありますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数の時間軸が交錯するその場所は、無限の信長像が集まる場所。

そして信長の物語と山姥切国広の物語が交わる場所。

様々な信長と共に刀の歴史に思いを馳せ、信長に思いを馳せたのち、避けてきた三日月宗近に思いを馳せる。

「あいつが何を考えていたのか、何と戦っていたのか、あいつにとって俺や本丸は何だったのか。」

「知ろうとするな山姥切国広よ、三日月宗近に思いを馳せるのだ」

 

この作品で一番驚いたのがこの後の場面。

ネタバレを避けるために初日の配信も、人の感想などの情報も一切入れなかったので、めちゃくちゃ新鮮に驚けました

っていうか心臓をギュッと掴まれましたよ

 

まさか映像でしか見たことが無い、悲伝の最後のあの殺陣を、目にすることになるとは

悲伝のあの場面の音楽と共に現れた三日月宗近を見て、「だ、誰?が演じてるの?」ってなりました。

何しろ超チケ難で抽選も先着順も全滅で、かろうじて娘が当ててくれたのが2階のほぼ最後列で

でもスクリーンの上の方がちょっとだけ見切れましたが、凄く見易い席でした。有難うね~

ただやっぱり遠いので誰かわからなくてオペラで見て「あ、まっきー(荒牧慶彦)か」ってなりました。

 

天叢雲剣や七星剣をはじめとする名だたる名刀と所縁のある歴史上の人物に思いを馳せ、

それを一人で演じ続けた、まっきーが三日月宗近も演じていて、それがめちゃくちゃ拡樹くんの三日月に寄せてて、

遠くからだと全く見わけがつかないくらい喋り方も動きも似てて、鳥肌が立ちました。

大楽の配信を見た時に、足の運び方が微妙に違うかも、とは思いましたが

 

それにしても夏の刀ステ7周年感謝祭が伏線になるとは

審神者の夢の中設定だったので、色々とトンチキな場面があって楽しかったですけどね

三日月と山姥切が入れ替わるのとか、夢オチならではのありがちな感じもあって

ただ夢の中とは言え、拡樹くんの三日月宗近だけが妙にフワフワしてて、存在が浮いてる感じなのが不穏で

何かあるんじゃないの?と疑ってましたけど、そういうことでしたか

まっきーの三日月宗近、見事でした

 

そしてそれはそれで逆に、じゃ山姥切国広を演じてるのは誰なのってなりました。

あの場面の殺陣は、相当上手い人じゃないと出来ないだろうにと思って。

アンサンブルさんの中の誰かなんでしょうけど凄すぎる

山姥切国広のマスク(お面?)を付けてて、それがめっちゃよく出来てて。

まっきーより少し小柄ですが、凄く似た感じの人がいるのかなと思ってましたが、マスクだったみたいで。

綺伝の時も同じだったのか、すっかり騙されたようです

でも付けると視界が悪くなると思うのに、それであの殺陣が出来るんだと驚愕しました

 

 

山姥切国広は三日月を失ったことを自分のせいだと責め続けていました。

三日月を救うことにこだわり、そのために強くならなければと思い続けていました。

たとえ歴史を守る刀剣男士の本能から逸脱していたとしても、その想いを捨てることが出来なくて。

それが三郎信長と行動を共にし三日月に思いを馳せることで、ようやくこのままでは駄目だと吹っ切ることが出来たようです

「三日月を救いたいとは思わない。俺は三日月を信じる」

 

実はこの作品で山姥切の周りに存在する黒い影がいたのですが、

それが三日月を救うことに固執して、強くなりたいと願う山姥切国広の想いから生まれたものとわかります。

ところが三郎信長と、その「影」を黒田官兵衛様と時間遡行軍が現れて、連れ去ってしまいます

刀剣男士を強くするための物語がもっと必要だ、と維伝や綺伝に現れていた朧の山姥切の正体がその影でした

 

刀ステの物語の中で時間遡行軍と共に現れる「朧の~」や、その時その場所に存在してはいけない人たち。

維伝の坂本龍馬がまさにそれで、斬った後には拳銃が落ちていました。

なので「朧の~」は本人の所持していた物に、持ち主の心が残って生まれた付喪神に近いものなのかなと思います。

共通するのは「心残り」。

誰もが一片の後悔も無く生きてきた、と断言できる人はそんなにいないでしょうからね。

 

そうして生まれた「朧の~」を本人の知らないところで、

歴史修正主義者や時間遡行軍が利用しているということなのかも。

山姥切と三郎信長の前に現れた官兵衛様や信長公もたぶん「朧の~」だと思うんですが、

ということは、信長にも何か未練があったってことなんでしょうか。

それとも「物語を歴史へ!」のように、自分たちが持ち主にとって代わりたいと企んでるのかな?なんて

 

でも何か違うような。

官兵衛様は山姥切に対して「お前はこの物語を終わらせるのに必要な刀だ」と言いながら、

「だがここで折れば、また違う可能性が生まれるかもしれない」と言って山姥切を折ってしまうんですよね

官兵衛様怖すぎるさすが戦国一の軍師というか、策略家。

无伝でも似たようなことを言ってましたね。

「ここに高台院はいなかったが、もし高台院を連れてきたら三日月はどう動くだろう」みたいなことを

 

幸いにも審神者のお守りによって(そこはゲームの設定にもありますね)山姥切は復活して、

三郎信長の救出に向かうわけですが、復活した山姥切を見て嬉しそうにする官兵衛様

なら最初から折らないで下さいよ~、理科の実験じゃあるまいし、観てるこちらの情緒を弄ぶの酷いです

 

復活して更に強さを増した山姥切ですが、朧なのに信長公には手も足も出ない

再び折られそうになったところを官兵衛様が止めてくれて助かります。

「この物語は三日月宗近の物語だと思っていたが、山姥切国広のの物語でもあったのだな。」

「お前はお前の物語を全うしろ。お前たちの(本丸の)物語なら信長公を救えるかもしれない」

(朧の)信長公を救うそれってどういう意味?官兵衛様たちの戦いの目的ってことですか???

いやもう官兵衛様は登場の度に、爆弾を落として行かれますね

 

山姥切を折った時に官兵衛様たちが話していたことを山姥切は覚えていて

「三日月宗近は円環を巡っているが、あの本丸も円環を巡っている。それに気づかないうちは戦いは終わらない。

折り重なる時間軸は新たな結いの目を生む。円環の交わりは近い。その時が来れば我らの戦いは終局へと向かうだろう。」

 

戦いを終わらせるためには円環を巡り、然るべきところでそれを断ち切らなければならないと気づいた山姥切。

三日月を救いたいとは思わない、と言っていたのに三日月の背中を追いかけることになるとは

三郎信長と別れ、「主のために、これより終わりなき円環を巡る。」と力強く宣言して旅立つところで終幕でした。

 

 

時系列的にはこの単独行は慈伝の後、維伝の前の話になります。

刀ステ本丸の物語の終わりが見えてきた感じですね。まだ何作かありそうですが。

次は来年の「慶応甲府」の上演が決定しています。これが時系列のどこに入るのかはわかりませんが。

 

それから刀ステ本丸の物語のタイトルを巻物に記した映像が最後に出て来るんですが

今回はそれが円環になって繋がってました、メビウスの輪みたいに

そして「悲伝 結いの目の不如帰」が、无伝の最後に「悲伝」から「陽伝」に変わって、

鬼丸国綱が顕現する映像があったんですが、今回は残っていた「悲伝」の副題が解けて消えて行きました。

ということは、「陽伝」が上演される時は別の副題になるってことですよね。

そしてそれが最後の作品になる?

 

巻物には「綺伝」のあとに3作くらいありそうで、その中の一つが慶応甲府なのかなと思います。

刀ステではゲーム本体に出て来る特命調査が取り上げられていて、その四つ目が慶応甲府なので、

残った五つ目の「天保江戸」もいずれ上演されるんだろうと思います。

丁度夏の刀ステ感謝祭で蜂須賀虎徹が出て来ましたからね。まさか登場だけで終わりってことは無いですよね

 

これからどんな展開になって、どう着地するのか、来年の刀ステも楽しみです

コメント
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