長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『エノーラ・ホームズの事件簿』

2020-09-28 | 映画レビュー(え)

 ナンシー・スプリンガーによるYA小説『エノーラ・ホームズの事件簿』シリーズの映画化となる本作は『ストレンジャー・シングス』のミリー・ボビー・ブラウンを主演に迎え、2020年代ならではのアイドル映画として一定の成功を収めている。シャーロックとマイクロフトのホームズ兄弟には歳の離れた妹エノーラがいた…という二次創作で、彼女は母親から自由な精神と格闘技、捜査スキルを叩きこまれた少女探偵だ。人気SFホラーのフロントラインに立つミリー嬢には打ってつけの役柄であり、成長著しい彼女のビクトリア朝ファッションも何とも美しい。『ストレンジャー・シングス』では人体実験を受けたサイキック役のため台詞は少なく、演技力という面ではまだまだ未知数だったが、『フリーバッグ』を手掛けた監督ハリー・ブラッドビアの手ほどきを受けて本作では果敢に第4の壁を突破しまくっているのもいい(これは相当の演技巧者でなければキマらない演出なので、まだまだご愛敬ではあるが)。

 嬉しい驚きはスターバリューでは1つも2つも上となるシャーロック役ヘンリー・カヴィルをマイクロフト役サム・クラフリンが食ってしまった事だ。これまで決め手にかける2枚目俳優、という印象の彼が歳を重ね、この気難しい兄貴役に相応しい貫禄を身に着けていた。

 物語の発端となる母の失踪にサフラジェット運動が示唆されている事や、参政権獲得が大きなプロットポイントになるなど、選挙の年に相応しい時事性も兼ね備えており、初プロデュースも兼ねたミリー嬢には大成功と言っていいだろう。何より男子と女子の立場を定型から入れ替えた役割分担、そして相手役テュークスベリー子爵役ルイス・パートリッジの美少年っぷりはガールズ映画として実に正しい。原作はこれまで5作が刊行されている。ぜひシリーズ化を!


『エノーラ・ホームズの事件簿』20・米
監督 ハリー・ブラッドビア
出演 ミリー・ボビー・ブラウン、ヘンリー・カヴィル、サム・クラフリン、ヘレナ・ボナム・カーター、フィオナ・ショウ、ルイス・パートリッジ

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