あいかわらずどんよりとした天気続きですね。
さて、今日もアマプラ(amazonプライム)で見つけた映画を紹介します。
「ある女流作家の罪と罰」
(マリエル・ヘラー監督作品 2018年)
これも地味だけどとてもいい映画でした。しかも、これまた実話。
真実は小説より奇なり、ってことかな。
(以下ネタバレ)
一時は伝記作家としてベストセラーを出したものの、その後は全く売れない作家、リー・イスラエル。
メリッサ・マッカーシーが演じていますが、彼女がとにかくいい!
51歳という役柄もそうだけど、背が低く、太っていて、ぶかっこう。一見、男のような外見。
リーはファニー・ブライスの伝記にとりかかっていますが、出版社はファニー・ブライスは古すぎて誰も読まないといって取りあってくれない。校正の仕事も首になり、困窮し家賃も払えずアパートを追い出されそうになります。
NYのボロアパートで悲惨な生活を送りつつ、作家として成功する夢だけは捨てないリー。
というか、この人、頭の中だけで生きているのですね。目の前の現実が見えない。作家には往往にしてこういうタイプがいるようです。
ある日、リーは図書館の本に挟まれていた作家の手紙を発見します。
それを盗んで書店に持参したところ、予想外の値段がつきます。
味をしめたリーは、それ以来作家の手紙の偽造を始めるのです。
つまり犯罪に手を染めるわけ。
でも、そこがリー自身の作家の手腕の見せ所。
彼女が偽造した手紙は高値で引き取られるようになります。
そこに、ジャック・ホックというヤクの売人でゲイの男が現れます。
ジャックを演じているのが、リチャード・E・グラント。
この二人の関係が絶妙。
男と女だけど、バディの関係。
でも、そもそもリーは自己中で人に優しくない。
ジャックを使って偽造した手紙を売りさばく売人の役をやらせるのですが、ジャックを邪険に扱います。
リーは手紙の偽造でそこそこ稼ぎを得ますが、悪いことは長続きしない。
やがて偽造は見破られ、ジャックはリーを裏切り、彼女はFBIに逮捕されてしまうのですが、それまでに、彼女が造った偽造の手紙は400通にのぼるというから驚き。
裁判の席で彼女は言います。
「いろいろな意味で人生の最高の時期でした」
「唯一自分の作品に自信が持てたのです。実のところ私の作品とはいえませんが」
彼女の才能は文書偽造という形で発揮されたのですが、目的が間違っていた。
判決は執行猶予5年という比較的軽いものでした。
やがて彼女はジャックと和解し、事件の顛末を描いた自伝を書くことになる。それがこの映画の原作。
最後のジャックとの和解のシーンがいいのよねえ。
リーはようやく(過去の伝記の人物ではなく)目の前の一人の人間に気づくのです。
この映画の肝は、やっぱり人間、そして友情。
血の繋がった家族ではなく、男と女の友情です。
もしかすると、恋愛や結婚より長続きのするいい関係かもしれない。
猫も出てきます!
作家には猫よねえ。
本当に、しみじみといい映画です。
それにしても「女流作家」って??
男の作家は「男流作家」って言わないでしょ。
タイトル、古すぎ。
原題通り「Can You Ever Forgive Me?」がいいのでは?
これはリーが偽造したドロシー・パーカーの手紙の言葉(つまりリーの創作)です。
あるいは、「リー・イスラエルの罪と罰」なんてのはどうかしら。