ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

マダム・フローレンス/夢見るふたり

2019-07-23 10:14:28 | 映画

(これは2018年9月3日の記事です)
先日、暑気払いの飲み会があって、そこでカラオケに行ったわけです。
私も歌ったのですが、周囲はさぞ迷惑したことでしょう。だってすごい音痴なんだもん。
でも、歌うって楽しい!

その話を友人にしたら、こんな映画を教えてくれました。

「マダム・フローレンス!/ 夢見るふたり」
メリル・ストリープ&ヒュー・グラント主演。2016年イギリス映画。

これ、音痴の人、必見!
しかも、実話です!
実話の映画化はよくありますが、こういうのも映画にしちゃうんだ、と思った。

1940年代、アメリカにフローレンス・フォスター・ジェンキンスという大金持ちの女性がいて、金に飽かせてカーネギーホールを借り切って歌のリサイタルを開いちゃうのですが、このマダム・フローレンス、凄まじい音痴。
でも、彼女自身は自分が音痴だとは思っておらず、兵隊たちを慰めるためにリサイタルを開くのだと自信満々に宣言します。

あわてた夫(ヒュー・グラント)は周囲に根回しをし、彼女が音痴であることがバレないよう買収しまくります。

人のいいピアニストを雇い(このピアニストがまたいいのよ!)、酷評の出た新聞を買い占めて彼女の目に触れないようにします。

まあ、言ってみれば、金持ちが金に飽かせてリサイタルを開いた、というだけの映画なのですが、彼女と夫の奇妙だけど純粋な愛の形を描いた映画でもあり、また、マダム・フローレンスのピュアで一途な音楽愛が周囲を巻き込んでいくという喜劇でもあります。

もうね、抱腹絶倒!
久しぶりで笑い転げた。
メリル・ストリープがすごい。彼女はオペラの訓練をした後に、少しだけ音程をはずす訓練もしたそうです。

でも、メリル・ストリープは音痴ではないので、映画の中ではそこそこ聞ける歌になっていますが、実際のマダム・フローレンスの歌声が残っているので、聴いていただければ、彼女の音痴ぶりがよくわかります。

https://www.youtube.com/watch?v=JsvmieZmL_8

最初のひと声を聞いただけで、ぶったまげること必至です。

ものすごいインパクトのある歌声ですが、彼女のレコードがベストセラーになったというのは、なぜかわかる気がしてきます。

すごく音痴。でも、聴いているうちに笑いだし、幸せな気分になれる。
好きなことをとことんするって楽しい! そして、
ああ、これでいいんだなあ、と力が抜けてくるのです。

でも、オペラのような難しい歌はそんじょそこらの人には歌えない。
マダム・フローレンスは歌の訓練を重ねた結果、ここまで歌えるようになったそうです。心底音楽が好きで、歌うことが好きだったから。でも、専門家によると、彼女の音感とリズム感は完全に狂っており修正不可能、だそうです。それなのにこの魅力!

音痴の人もそうでない人も、勇気をもらえる映画です。

また、不思議な形の夫婦愛も描かれます。こういう愛もあるのだなあ。

そして、何より、彼女が活躍したのは、第二次大戦中。
日本では「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」のスローガンと共に、音楽を楽しむなんて言語道断、非国民、という空気が蔓延していた中で、アメリカではマダム・フローレンスのような人たちが従軍兵士を慰安するためにコンサートを開き、敵国ドイツのオペラを堂々と歌っていたわけです。

日本が勝てるわけがない。

というわけで、音痴の私は大いに勇気をもらったのでした。

背景にマダム・フローレンスの過酷な人生も描かれ、ただの金持ちの余興ではなかったことも伺えます。

音痴の人もそうでない人も見るべし!

コメント
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