Netflixで配信されている「ウォーターシップ・ダウンのウサギたち」を紹介します。
四話完結のリミテッドシリーズです。
この原作を読んだのは、もう40年も前のこと。
東北地方に新婚旅行に行ったときのお共がこの本でした。
もうね、面白くて途中でやめられなくなって、夫が釣りをしている間も、宿でテレビを見ている間も、私は本にかじりついていました。
40年も昔のことなのでストーリーはおぼろげですが、ヘイズルという名前のウサギがいたことだけはしっかり覚えています。
今回、ネットフリックスのCGで蘇ったウサギたちの物語は、かなり原作に忠実に作られているようです。
当時と同じく、私はウサギになった気分で、草原の風やウサギ穴の土の匂い草の匂いを鼻先に嗅ぎ、仲間の匂いをくんくん嗅いでいるような気分になりました。
ほんと、ストーリーもさることながら、このウサギ感といったら半端なく、読んでいる最中はもちろん、読み終わってからもしばらくの間、私はすっかりウサギになっちゃってた。
今回のCGもよくできているので、ウサギ感満載で、もうウサギが大好きな人にはたまらないし、そうでない人も、一度ウサギになってみてはどう? とお勧めしたいです。
とはいえ、ストーリーは人間社会そのもので、巣穴を追われたウサギの一団が他のウサギの村々で様々なウサギに遭遇し、また人間の村でも事件が起きたりして、最後に安住の地を見つける、というロードムービーのようなお話。
このウサギのリーダーがヘイズルという若いウサギで、彼の弟のファイバーは予知能力があり、未来のことがわかるのです。
ファイバーの予言を信じてヘイズルは仲間を連れて村を後にするのですが、もちろん反対するウサギたちも多く、ヘイズルの仲間はごく少数です。
このヘイズルがね、ちょっと見にはひ弱なごく普通のウサギなのですよ。
(写真の真ん中にいるのはビグウィグというウサギで、ヘイズルはその左側だと思う)
ヘイズルは全然強そうじゃないし、力もない。でも、弟を信頼し仲間を信頼する、とてもヒューマンな、えっと、ラビットなウサギです。
イギリスのファンタジーにはこういうヒーローが多いよね。
「ハリー・ポッター」だってヒーローらしくないごく普通の少年だし、「指輪物語」のフロドにいたっては、小さくて名もないホビットが世界を救うお話だもの。
今や、現実世界がなんだかとてもややこしくなってきているので、この際、人間やめてウサギになるってのもいいかもしれない。
とはいえ、独裁者風のウサギのリーダーなんかも登場するのだけどね。
そして、艱難辛苦の挙句、ヘイズルの一行は新天地を見つけるのです。
ヘイズルがね、とてもいいのよ。
リーダーというのはこういう人であってほしい、と痛切に思います。
一見ひ弱に見えるけど、自分の信念をどこまでも通し、力の限り仲間に尽くす。リーダーはこうでなくちゃ。
仲間たちもいい。ひとりひとりがとても個性的で素敵です。
でも、CGなので時々ウサギの見分けがつかないところが少々難かな。
あれ、これは誰だっけ? となる。
目の色や毛色が多少違うけど、みんなウサギだから区別が難しい。服着てたらわかりやすいのに、と思ったけど、野生のウサギは服着ないよね。
彼らを助けてくれるカモメのキハールもおもしろい。
キハールはちょっとわがままで、いい加減で、信用できないところがあるけど、肝心なところではヘイズルたちを助けてくれます。
というわけで、この世界の現実に辟易したら、ウサギたちと一緒に遊ぶのもいいかも。
でも、一番いいのは原作を読むことなんだけどね。
「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち(上・下)」超お勧めです。
(意地悪猫も登場するにゃ)