この映画も今年アカデミー賞にノミネートされたようです。
「イニシェリン島の精霊」マーティン・マクドナー監督
マクドナー監督は映画「スリー・ビルボード」の監督です。主演がコリン・ファレル(パードリック役)とブレンダン・グリーソン(コルム役。「ハリー・ポッター」のマッドアイ・ムーディ役の人)
最初は何じゃこれ??と思った。
(以下ネタバレ)
二人のおっさんが意味不明なことでいがみあい、それがどんどんエスカレートしていくという、ただそれだけの話なので。
片方はついに自分の左手の指を切り落とす、という暴挙に出ます。
ここまで見て気味悪くなってね、見るのをやめたのだけど、続きが気になるので翌日後半を見た。
で、全部見終えてから思ったのだけど、
これって、ひょっとして、ラブストーリーなのか??
二人のおっさんのけっこう激しいラブストーリーなのか??
そう思って振り返ってみると、隠されたストーリーが見えてきます。
因習に囚われたアイルランドの片田舎の島、しかも時は1923年、本土では内戦の最中。
ゲイなんて絶対に認められない世界。その中で、二人とも自覚のないままに愛し合い、それがエスカレートしていきついに破局を迎える・・
自分の指を切り落として相手の家のドアや窓に投げつけるという行為はまさにアレでしょ。
自虐きわまりない愛。
それでも愛することをやめられない、
そういうストーリーなのかもしれないと思った。
最後に、家に火を放たれ、危うく死にそうになったコルムが海辺に立っていると、そこに火をつけた本人パードリックがやってくる。
そして、犬の世話をしてくれてありがとうとコルムがいい、パードリックは"Any time"(お安い御用だ)と返事をするというこの奇妙な会話は、恋人同士以外ではありえないでしょ。
非常にわかりにくい仕掛けになっているけど、
わかってみると、至極当然なストーリー展開で、そこに因習や意地悪な牧師や村人や息子を虐待する警察官や占い師の老婆や、そうしたいかにもな舞台装置が目くらましとして配置されているので、こちらはすっかり騙されて、なんじゃこりゃ、となるのですが、
全部見終えた後の後味はそれほど悪くない。途中までは薄気味悪くて見たくなかったのだけど、
終わってみると、印象に残るのは禁断の愛の不器用な表現、といった不思議な映画でした。
マーティン・マクドナー監督、恐るべし。
まあ、この映画についてはいろんな解釈があるようなので、これも解釈の一つだと思ってください。
とにかく主演の二人の演技がすごい。
恐ろしいほど荒漠としていて、恐ろしいほど深い愛とその破局が描かれています。
好きかと聞かれれば、あまり好きじゃないし、2回見ようとは思わない。
でも、「エブエブ」よりこっちのほうがずっとアカデミー賞にふさわしいと私は思うのだけどね。
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