ゴタゴタに巻き込まれて忙しかったといいながらも、映画やドラマはしっかり見ていました。
中でも最近面白かったのが、
「メイドの手帖」(Netflixオリジナル。英語のタイトルは「MAID」)です。
同名のノンフィクション小説を基に作られたドラマです。
これねえ、アメリカ版「おしん」ともいうべき艱難辛苦の物語でね、次から次へとシングルマザーに災難が襲いかかる話です。
私もシングルマザーを経験しているので共感できる部分は大いにありましたが、幸いなことに、私の場合はこれほどじゃなかった。それでも、シングルマザーたちの厳しい現実は、日本もアメリカもさほど変わらないと思いました。
(以下ネタバレ)
主人公のアレックス(25歳の女性)は夫の精神的虐待に耐え切れず、もうすぐ3歳になる娘マディを連れて夫のもとを逃げ出します。
アレックスが向かったのがシェルターハウス。日本にも最近できているようですが、私の時代はまだなかった。
そこには同じような境遇の女性たちが住んでいました。
夫のDVから逃れるためにシェルターにやってきたにもかかわらず、再び夫の下に戻ってしまう女性もいます。
アレックスの一番の試練は彼女の両親です。
母親は絵描きですが、双極性障害という精神的疾患があり、気分が不安定で大人の人間としてふるまえない。アレックスは子どもの頃から母親の面倒を見て育ちます。そのため、一種の共依存関係が生まれ、母親から離れることができない。
シェルターの女性に「あなたが面倒を見なかったら、お母さんはどうなったと思う?」と聞かれてもアレックスは答えられません。
母親は、アレックスの子どもではないのだから、母親から自由になりなさいと言われたのですが、彼女は最後まで母親を守ろうとします。
一見愛情深い親子関係に見えるけれど、これは危険な共依存でもあります。
父親もまたろくでもない。アレックスを助けてくれたりもして、一見とても良さそうにみえるのですが、アレックスが幼かった頃、父親が母親に暴力をふるっていたことを不意に思い出します。
父親もまたDV夫なのでした。
というわけで、家庭内暴力は連鎖する。アレックスは結局のところ、両親とよく似た相手と結婚したというわけ。
彼女は掃除婦として(アメリカではメイドと呼ばれる)働き始めます。
賃金は安く、労働はきつい。メイドを雇う側の人たちは、メイドの名前すら覚えようとはしない。
けれども、彼女は非常に優秀なメイドでどこの家でも重宝がられます。
特にレジーナという女性は成功した金持ちで、ゴージャスな家に住んでいますが、幸せではない。
レジーナは養子を迎えますが、子育てに苦労してアレックスに助けてもらい、二人は良い関係を築きます。
他にもアレックスに車を貸してくれる男性や家を貸してくれる人まで現れるのですが、そのたびに夫から母親から妨害され、うまくいきそうになるとまた振り出しに戻るの繰り返し。
「おしん」ですね。まさに。
しまいにパニック障害に襲われ、感覚がマヒして考えることも感じることもできなくなっていく。そこで、再びシェルターに舞い戻り、自分を立て直そうとします。
アレックスは誰かに助けを請おうとはしないし、人の助けを容易には受け入れない。
ここら辺が日本とかなり異なるところかと思います。個人主義が徹底していて、他人の助けを安易に受け入れず、どこまでも自分で解決しようとする。でも、それには限界がある。
災難は次から次へと押し寄せてきてアレックスをどん底に突き落とします。
でもね、最後はハッピーエンドです。
様々な人と関わり、経験を積んでいき、ついに念願の奨学金を得て大学に入る、その直前までを描いています。
アレックスは何があっても娘のマディを巻き込まないよう細心の注意を払います。決してお酒やドラッグに溺れることなく、自分をしっかりと保ちます。
「338回もトイレ掃除をして、7種類の政府の支援を受けた。9回住まいを移り、一度はフェリー乗り場に泊まったこともある。娘の3歳の一年間をそうやって過ごした・・」と最後にアレックスは語ります。
実に立派だけど、少し立派すぎる気もするなあ。
あんなに酷い両親のもとでこんな立派な女性が育つだろうか、とも思う。
かなり優秀な素質を持って生まれたのでしょう。でも、誰もがアレックスのようにできるわけではない。アレックスのように(作家として)成功できるわけでもない。
だから共感できるところもできないところもあります。それでも、大いに勇気をもらえるドラマです。
シングルマザーの人、女性問題に関心のある人にお勧めです。
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