「判事査察」疑惑文書の作成および配布、チャンネルA事件の監察・捜査の妨害、政治的中立に関する不適切な言動などは、検察総長の権限を濫用し検察の生命である政治的中立性を損なった行為だ。

2020-12-17 10:16:14 | 韓国を知ろう

[社説]初の検察総長懲戒、大統領が率直な説明を

登録:2020-12-17 08:07 修正:2020-12-17 08:55
 
大統領が裁可…ユン総長「法的対応」で反発 
チュ長官は懲戒案の要請後に辞意を表明 
文大統領は国民に直接理解を求めよ
 
文在寅大統領は16日、ユン・ソクヨル検察総長に対する「停職2カ月月」の懲戒案を裁可した。チュ・ミエ長官はこの日午後、大統領府を訪問し、文大統領にユン総長の懲戒案を要請した。写真は6月22日に大統領で行われた「第6回公正社会反腐敗政策協議会」に参加した文大統領とユン総長(左側2番目)/聯合ニュース

 ユン・ソクヨル検察総長に対し、法務部の検事懲戒委員会は16日、「停職2カ月」の懲戒を議決し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が裁可した。懲戒委員会は徹夜の討論の末にこの日の早朝、「4つの不正」の嫌疑を認め懲戒の度合いを決めた。チョン・ハンジュン委員長職務代理は、「証拠に基づき決めた」とし、「(解任を含む)多くの意見があったが、過半数になった瞬間、ユン総長に有利な量定に決めた」と明らかにした。重懲戒の中では相対的に低い懲戒の度合いを選んだということだ。

 ユン総長は強く反発し、法的対応の方針を明らかにした。ユン総長は立場文を出し、「任期制の検察総長を追い出すための違法な手続きと実体のない事由を掲げた不法・不当な措置」だとしながら、「憲法と法律で決められた手続きにより、誤りを正す」と述べた。元検察総長らも「今回の懲戒手続きは、民主主義と法治主義に対する脅威の始まりになる懸念が極めて強いためやめるべきだ」と主張した。それならば、懲戒委員会で認められた不正の事実は何の過ちでもないということなのか、問わずにいられない。「判事査察」疑惑文書の作成および配布、チャンネルA事件の監察・捜査の妨害、政治的中立に関する不適切な言動などは、検察総長の権限を濫用し検察の生命である政治的中立性を損なった行為だ。法の適用に例外を認めないのが法治主義だ。検察総長を自身の行為に対し責任を負わない聖域に残しておき、民主的統制を無力化することこそ、法治主義と民主主義の否定だ。

 懲戒の過程でユン総長の行為の是非を問う本案より、手続き的な問題をめぐる攻防が目立ったことは、反省する点だ。ユン総長側が執拗に手続き的な問題を提起した側面もあるが、チュ・ミエ法務部長官が押し通す手法で懲戒手続きを進め、口実を提供した責任がある。

 今回の事態をめぐり多くの国民が疲労感を感じているのは、“チュ長官とユン総長の対立”という枠組みに、検察改革という本質が埋没したことによるのも大きい。新型コロナウイルスの急激な感染拡大により多くの人々が日常と生計の危機に直面した今は、より一層不毛な議論に終止符を打たなければならない時だ。チュ長官がこの日の午後、文大統領に懲戒案を要請し辞意を表明したのも、そのような点で注目される。

 文大統領は、ユン総長の懲戒案を裁可し、「検察総長の懲戒という初の事態に至ることになったのに対し、任命権者として重く受け止める。国民に大変申し訳ない」とし、「検察が立ち直る契機になるよう願う」と述べた。今回の事態について所感を明らかにしたものだが、これだけでは不十分だと思われる。史上初の検察総長の懲戒と法務部長官の辞意に帰結した今回の事態に対する大統領の考えを、より詳細かつ明確に知りたい国民は多い。文大統領は、ユン総長を懲戒するしかない理由と、それが検察に対する民主的統制という原則に照らしてどのような意味を持つのか、率直に説明する必要がある。また、検察の中立性の毀損に対する一部の懸念をどう解消するのかも、明確に示さなければならない。

 ユン総長の懲戒は、何より検察改革とは切っても切れない問題だ。検察は、政治権力に隷属してはならず、無制限の権力を統制も受けずに濫用してもならない。現在進行中の検察改革の目標もこれと違わないだろう。改革には生みの苦しみが伴うことは避けられない。今の混乱と対立を一段階成熟した民主主義に進む契機にしなければならない。文大統領の役割が重要だ。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

 

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「2018年5月1日から軍事境界線一帯の拡声器放送とビラ散布をはじめとするあらゆる敵対行為の中止、その手段の撤廃」を約束した4・27板門店宣言第2条1項の法的履行に2年8カ月かかった。

2020-12-17 01:23:44 | 南北は一つ

対北朝鮮ビラ禁止法が成立…

2年8カ月ぶりに板門店宣言の法的履行が実現

登録:2020-12-16 06:33 修正:2020-12-16 07:35
 
対北朝鮮ビラ法が14日の本会議で成立した意味 
 
開城南北共同連絡事務所の爆破招いた対北朝鮮ビラ問題の再発防止 
接境地域の国民、112万人の生命や安全、経済活動を保護 
金正恩委員長に南北関係改善の前向きな返事求める強力なシグナル
 
今年5月31日、対北朝鮮ビラを散布する脱北者団体=自由北朝鮮運動連合提供//ハンギョレ新聞社

 14日夜、国会本会議で可決された「南北関係発展に関する法律(一部改正法律)」は、4・27板門店宣言第2条1項の法的履行であり、今年6月の南北関係を揺るがした「対北朝鮮ビラ事態」の公式的な終結と言える。

 「2018年5月1日から軍事境界線一帯の拡声器放送とビラ散布をはじめとするあらゆる敵対行為の中止、その手段の撤廃」を約束した4・27板門店宣言第2条1項の法的履行に2年8カ月かかった。従来の「南北関係発展法」に一部条項を追加した今回の改正法律が「対北朝鮮ビラ禁止法」と呼ばれるのも、そのためだ。

「首脳合意」履行の意志を示した強力なシグナル

 文在寅(ムン・ジェイン)政権と共に民主党は、野党「国民の力」などの激しい反対にもかかわらず、今回の立法で“南北首脳合意の履行への意志”を込めた強力なシグナルを発信した。来年1月に朝鮮労働党第8回大会を控えた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に“前向きな返事”を求めたということだ。

 同法は国内法律の中で初めて「対北朝鮮ビラ散布」を違法行為と規定し、処罰条項も設けた。これまでは対北朝鮮ビラ取り締まりを念頭に置いておらず作られた「南北交流協力法」や「航空安全法」、「共有水面法」など立法目的が全く異なる法律で規律し、実効性と法的正当性をめぐり議論になってきた。同法は「(軍事境界線以南の)民間人統制線以北地域」で「対北朝鮮拡声器放送」や「対北朝鮮視覚媒介物の掲示」または「ビラなど」(ビラ、広告宣伝物や印刷物、補助記憶装置などの物品、金銭またはその他の財産上の利益)を「北朝鮮の不特定多数の人に配付」する行為で、「国民の生命・身体に危害を及ぼしたり、深刻な危険を発生させてはならない」(第4条)と定めている。これに違反すると「3年以下の懲役または3千万ウォン(約290万円)以下の罰金に処する」(第25条1項)。統一部長官は禁止行為を予防するため、「中央行政機関または地方自治体の長に協力を要請することができる」(第24条2項)。

 
6月16日午後2時50分頃、北朝鮮当局によって開城南北共同連絡事務所の建物が爆破される場面/朝鮮中央通信・聯合ニュース資料写真

 対北朝鮮ビラの取り締まりの実効性を高め、法的論議を解消し、対北朝鮮ビラを問題視した北朝鮮側の高射砲の銃撃(2014年10月10日)や開城(ケソン)南北共同連絡事務所の爆破(2020年6月16日)のような偶発的軍事衝突の火種を元から遮断するための立法行為だ。

第3国経由の物品伝達には適用されず

 主務部処である統一部は15日、同法を112万人の接境地域住民を含む国民の「生命安全保護法」であり、「南北関係改善促進法」、「朝鮮半島平和増進法」だとして、歓迎の意を示した。イ・イニョン統一部長官は「接境地域の住民の生命や安全を守るための措置であり、南北合意の履行に向けた努力の一つ」だと意味づけた。これに先立ち、接境地域市長・郡長協議会と地域住民は、対北朝鮮ビラ散布の中止と規制法制定を求める建議文と国民請願を提出した。

 
6月17日、一部の脱北者団体の対北朝鮮ビラ散布の中止を求める市民団体の集会の様子/聯合ニュース資料写真

 しかし、国民の力やビラを散布してきた一部の脱北者団体などは同法を「キム・ヨジョン下命法」と呼び、反対の声を高めている。「中央日報」は「韓国ドラマのUSBやコメ、中朝国境で与えても違法」という見出しの記事を15日付1面トップで掲載した。しかし、これは誤解あるいは歪曲だ。同法は違反行為の処罰地域を「軍事境界線一帯」(民間人統制線以北地域)に限定しており、統一部も「第3国を通じて物品を単純伝達する行為は同改正案の適用対象ではない」と公式に否定した。北朝鮮人民にビラを読ませるため、対北朝鮮ビラを入れた風船にドルを入れたり、ビラを入れたペットボトルにコメを同封して送る行為が問題であって、交流協力法によるコメなど人道支援と交流協力は当然規制対象ではないという意味だ。

 一方、米共和党所属のクリス・スミス下院議員が11日、個人声明で公言した通り、同法を問題視する議会聴聞会が開かれた場合、韓米の間で問題になる可能性もある。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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