代理人団「行政機関に対する民間人虐殺事件の
すべての関連資料の事実照会要請は初」
民主社会のための弁護士会(民弁)のベトナムTF関係者が昨年4月21日、ソウル中央地裁前でベトナム戦争韓国軍民間人虐殺国家賠償請求の訴状提出に際し、記者会見を行っている/聯合ニュース
韓国の裁判所が、国家情報院(国情院)と国防部に対し、ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺に関する資料を送付するよう要請した。裁判所が行政機関にベトナム戦争民間人虐殺事件のすべての資料を要請したのは今回が初めて。
ソウル中央地裁民事68単独のパク・チンス部長判事は12日、「フォンニィ・フォンニャット事件」の民間人虐殺の被害者グエン・ティ・タンさんが韓国政府を相手取って起こした初の国家賠償訴訟の第2回口頭弁論で、「グエン・ティ・タン側の代理人団が大韓民国、国情院、国防部に対して事実照会を申請した事案があるが、まだ返事が来ていない」とし「実際に資料を提出するかどうかは結果を見守る」と明らかにした。裁判所が被害者側の事実照会申立てを受け入れたのだ。
グエン・ティ・タンさん側の代理人団は口頭弁論後、記者団に対し「裁判所が行政機関に(ベトナム戦争当時の韓国軍による民間人虐殺事件に関する)事実照会を要請したのは初めて」とし「裁判所も、2つの資料が出てこないと事件の争点についての具体的な審理は不可能だと判断したとみられる」と説明した。
「フォンニィ・フォンニャット事件」は、1968年2月に韓国軍青龍部隊がベトナムのクアンナム省ディエンバン市社ディエンアン坊フォンニィ・フォンニャット村の70人あまりの住民を殺害した事件。当時8歳だったグエン・ティ・タンさんは、家の周りで青龍部隊第1大隊第1中隊の兵士に銃で左のわき腹を撃たれて重傷を負い、手術で命拾いしたものの、今でも後遺症に苦しんでいる。当時、グエンさんの家族5人が命を失い、14歳の兄は大怪我をした。韓国軍は1964年9月から1972年まで31万2000人あまりをベトナムに派兵しており、この期間における韓国軍による民間人虐殺事件は80件あまり、被害者数は9000人あまりに達すると推定される。
グエン・ティ・タンさんの代理人団は昨年4月、韓国政府を相手取って初の国家賠償訴訟を起こした。代理人団は裁判所に対し、国情院が青龍部隊第1中隊の3人の小隊長ら、同中隊幹部を調査した際の尋問調書や報告書などについての事実照会を申立てていた。国情院は今月5日、同文書のリストを公開するよう命じた最高裁の確定判決を受け、「チェ・ヨンオン釜山(プサン)、イ・サンウ江原、イ・ギドン・ソウル」と記された文書のリストを公開した。
また代理人団は、グエン・ティ・タンさんを含む民間人虐殺の103人の被害者が、2019年4月に真相調査と公式謝罪を求めて韓国政府に提出した請願書について国防部が検討した資料も、同時に要請している。当時、国防部は「国防部の保有資料では、韓国軍による民間人虐殺に関する内容が確認できず、韓国側の単独調査ではなくベトナム当局との共同調査が先行すべきだが、韓国、ベトナム両政府の共同調査環境はまだ整っていない」と述べ、60の市民社会団体が反発している。
口頭弁論に先立ち韓国政府は、消滅時効の完成や相互保証原則などの法理についての準備書面を裁判所に提出した。民事訴訟である国家賠償訴訟は、不法行為が発生した日から5年以内に起こさなければならないが、消滅時効が完成しているうえ、韓国人がベトナムの裁判所で国家賠償訴訟を起こせる場合に限り、ベトナム人も韓国の裁判所で国家賠償訴訟を起こせるとする「相互保証原則」にも反するとの趣旨だ。これに対し、グエンさんの代理人団は「不法行為による国家賠償訴訟で消滅時効を主張するのは権利の濫用」とし「相互保証原則を厳格に適用するのも適切でない」とする内容の反論書面を提出している。
チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )