米当局者たちは、北朝鮮軍のロシア派兵に対応する措置として、米国が供与したミサイルが北朝鮮軍の打撃にも使われる見通しだと述べた。

2024-11-19 22:00:34 | 米国は、「世界の憲兵」をやめろ!
 

「北朝鮮の追加派兵を阻止」…バイデン大統領、

ロシアへの長距離ミサイル攻撃を容認

登録:2024-11-19 06:28 修正:2024-11-19 07:25
 
「クルスク州の北朝鮮軍も標的になり得る」
 
 
米陸軍が2021年12月、ニューメキシコ州でATACMSミサイル射撃訓練を行っている/AFP・聯合ニュース

 ジョー・バイデン米大統領が、自国の供与した長距離ミサイルをウクライナ軍がロシア領土の攻撃に使用することを許可した。米当局者たちは、北朝鮮軍のロシア派兵に対応する措置として、米国が供与したミサイルが北朝鮮軍の打撃にも使われる見通しだと述べた。

 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど米国のマスコミは17日(現地時間)、バイデン大統領が強い破壊力を持つミサイル「ATACMS」をウクライナがロシア領土攻撃に使うことを容認したと報道した。米国がウクライナに供与したATACMSは射程距離が300キロメートルに達する。米国は当初、ロシア領土の攻撃に利用されロシアを過度に刺激する恐れがあるとの理由で、射程距離の短い旧型ATACMSのみ供与していたが、今年4月から新型ATACMSをウクライナに供与し始めた。ただし、同ミサイルをロシア領土への攻撃に使用することは引き続き禁止してきた。

 米当局者たちは、今回の決定はロシア軍が北朝鮮兵1万人を含む5万の兵力でクルスク奪還戦に乗り出したことへの対応だと説明した。ロシアはウクライナ軍が8月に電撃的に占領した自国西側の領土クルスク州の一部地域を取り戻すため、大規模な作戦を始めており、米国は現地の北朝鮮軍も戦闘に加担していると最近明らかにした。

 ニューヨーク・タイムズの報道によると、米当局者たちは北朝鮮軍もATACMSの標的になり得ると語った。ウクライナ軍のATACMSは、クルスク州に投入されたロシア軍および北朝鮮軍に対抗してウクライナ軍を防衛するのに優先的に使われるものと予想され、その後バイデン大統領が他の地域での使用も許可する見込みだと当局者たちは伝えた。

 任期が2カ月しか残っていないバイデン大統領が重要な決定を下した背景には、北朝鮮軍の参戦が決定的な契機になったと、米当局者たちは説明した。米政府の中でもロシアを刺激して戦争拡大を誘発しかねないという声が依然として残っているが、バイデン大統領は北朝鮮に「代償」を払わせ、さらなる派兵を防ぐ必要性に重きを置いているという。米国側は北朝鮮軍が戦闘に加担すればウクライナ軍の「適法な標的」になると警告してきた。ウクライナ側では、北朝鮮軍の派兵規模が10万人まで増える可能性があるという見通しも示されている。バイデン大統領は前日、中国の習近平国家主席との首脳会談で、北朝鮮のさらなる派兵を阻止するため影響力を行使してほしいと要請した。自国が供与したミサイルを使ったロシア領土への攻撃を禁じてきた英国やフランスが、米国と同様の決定を下す可能性もある。

 米国側はバイデン大統領の今回の決定が戦勢を変えることはできないとみている。しかし、北朝鮮軍のさらなる派兵を牽制するとともに、ウクライナ軍がクルスク州の一部地域を掌握し続け、終戦交渉に有利な状況を作ることが狙いという見方もある。ドナルド・トランプ次期米大統領は、「就任すれば24時間以内に戦争を終わらせる」としながらも、その方法は示していない。 J・D・バンス次期米副大統領は、ロシア軍が占領した領土をウクライナが譲歩することを条件として示したことがある。しかし、ウクライナ軍がクルスク州を占領し続けることができれば、ロシア軍に奪われた自国の東部や東南部の領土と交換する方式が可能になる。

 バイデン大統領の決定は、軍事援助に懐疑的なトランプ次期大統領の政権獲得を控え、任期最後までウクライナを支援するという意志を明らかにしたものともいえる。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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習近平主席は「中国は朝鮮半島で戦争が起き混乱が起きることを絶対に容認できない」と述べた。習主席は2016~2017年にも同じ発言をしたことがある。

2024-11-19 21:34:03 | 中国を知らなければ世界はわからない
 

「朝鮮半島の戦争・混乱は容認できない」

習近平主席の発言における高度の計算 

登録:2024-11-19 06:24 修正:2024-11-19 07:57
 
 
米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席が16日、ペルーのリマで首脳会談に先立ち握手している=リマ/ロイター連合ニュース

 中国の習近平国家主席と米国のジョー・バイデン大統領が16日(現地時間)、ペルーのリマで最後の首脳会談を行った。この場で習近平主席は「中国は朝鮮半島で戦争が起き混乱が起きることを絶対に容認できない」と述べた。習主席は2016~2017年にも同じ発言をしたことがある。習主席が約7年ぶりに口にしたこの発言には、現在の国際情勢に対する複雑な外交的思惑とメッセージが含まれている。

 今回の会談で習主席は、米中関係において「トゥキディデスの罠」は歴史の宿命ではなく、「新冷戦」の構図で米国は中国と戦ってはならず、戦っても勝てないうえ、中国に対する抑止は賢明でも望ましくもなく実現不可能だと述べた。ドナルド・トランプ政権の復帰を控え、米国は中国と協力しなければならないという考えを強調したのだ。

 そして、台湾独立反対▽貿易・科学技術・サイバーセキュリティにおける中国の発展権▽南シナ海▽ウクライナ問題とともに朝鮮半島に言及し、「中国は朝鮮半島で戦争が起き混乱が生じること(生戦生乱)を絶対に容認できず、中国の戦略安全保障と重要利益が脅かされることを座視できない」と強調した。

 これに先立ち、習主席は2016年4月、「第5回アジア信頼醸成措置会議」(CICA)外相会議の基調演説で、「中国は朝鮮半島の隣国として半島に戦争と混乱が起きることを決して容認しない」とし、「(戦争と混乱は)誰にも利益にならない」と述べた。2017年12月14日に北京で開かれた文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談でも、「北朝鮮核問題を対話と交渉による平和的手段で解決し、朝鮮半島に戦争が起きることは絶対に容認できない」ということで意見が一致した。

 2016年と2017年は朝鮮半島の戦争危機が急激に高まった危うい時期だった。北朝鮮は4~6回目の核実験を強行し、「火星14号」などをはじめ大陸間弾道ミサイル(ICBM)を相次いで発射した。トランプ大統領(当時)が「炎と怒り」で北朝鮮に対する先制攻撃の可能性をちらつかせたことを受け、北朝鮮は「グアム周辺の打撃を検討している」という発言で対抗した。このような情勢の中で、中国は北朝鮮に警告メッセージを送った。北朝鮮向けの石油製品の輸出を中断し、軍事演習だとして戦車部隊を鴨緑江(アムノクカン)沿いに配置して北朝鮮に圧力を加えた。国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁にも積極的に賛成した。

 7年が経った今、間もなく発足するトランプ政権は、対中国圧迫や北朝鮮の金正恩国務委員長との対話などを強調している。北朝鮮は、ロシアと軍事同盟に準ずる条約を結び、軍事的協力を強化するなど全面的に密着し、ウクライナ戦争にロシア支援のための大規模な軍隊を送った。このような状況で習近平主席が再び取り出した「朝鮮半島における戦争と混乱は容認できない」というメッセージには、非常に複雑で複合的な戦略的計算が含まれているといえる。

 第一に、これは韓国との関係を管理するというメッセージだ。習近平主席は15日の韓中首脳会談でも、朝ロ軍事協力の深化をめぐり中国が建設的な役割を果たしてほしいという尹大統領の要請に対し、「中国は域内情勢の緩和を望んでおり、朝鮮半島の緊張を望まない」とし、「当事者が政治的解決を模索するために対話と交渉を通じて問題を平和的に解決していくことを望む」と答えた。

 2年前にバリで開かれた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領との韓中首脳会談で、習主席は北朝鮮問題について、「韓国が南北関係を積極的に改善していくことを望んでいる」とし、朝鮮半島の緊張緩和のために「韓国が政策を変えなければならない」という点を強調したが、今回は北朝鮮を含む「当事者」が問題を解決していくべきだとした。北朝鮮を牽制する一方、韓国側にもう少し歩み寄る微妙な態度の変化を見せたのだ。

 第二に、2016~2017年と同様に、軍事的挑発を通じて朝鮮半島周辺の緊張を高め朝ロ密着に乗り出した北朝鮮に対する「警告」だ。朝中関係は表面的には戦略的友好協力関係を語るが、水面下では不満と対立が深まっている。国立外交院のキム・ハングォン教授は「北朝鮮は現在の国際情勢を『新冷戦』と規定し、北東アジアで韓米日と朝中ロの対立を強調しようとしているが、中国は米中戦略競争の中で韓米日対朝中ロの構図がいま浮上するのは中国に有利ではないと考えている。特に北朝鮮のロシアへの派兵は中国にとってはかなりの負担だ」と語った。

 第三に、第2次トランプ政権で進められると予想される朝米核交渉の再開に備え、中国が用意した対米交渉カードだ。北朝鮮は2016~2017年、相次ぐ核ミサイル挑発で中国とも対立したが、結局はトランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が核交渉に進むと、再び中国と密着した。中国は「北朝鮮の後援者」として交渉に影響力を行使した。

 キム・ハングォン教授は「中国はトランプ前大統領が復帰する状況に備え、『いま朝鮮半島に戦争勃発の危険性まである』とし、朝米核交渉の必要性を強調し、中国の交渉力を高めようとしている」とし、「朝米交渉が再開すれば、中国にとっては2016~2017年のように北朝鮮との関係を改善し、影響力を回復し、朝鮮半島で『中国の建設的役割』を強調するきっかけになり得る」と分析した。北朝鮮が今回は中国ではなくロシアをテコに朝米交渉に進もうとする可能性もあるが、トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の交渉でウクライナ戦争が終息すれば、北朝鮮も結局はロシアだけに頼る状況から抜け出し、中国とも関係改善に乗り出す可能性が高いものとみられる。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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