日本人ならではの思いやりとおもてなし・・・

　２０日のネット記事『雪の国道へ命のおにぎり－飯舘村の恩返し』を読んで、これこそ日本人ならではの思いやりと胸が熱くなった。大雪のため、福島市郊外の国道４号で立ち往生したトラックや乗用車のドライバーに、炊きたてのおにぎりを差し入れした仮設住宅に暮らす福島県飯舘村民の話である。
　東日本大震災での被災者の忍耐と秩序ある行動に、全世界から驚きと賞賛の声が寄せられたという話は有名だが、あの当時の様々な支援に恩返しを、という東北人の思いやりとおもてなしの心に感動した。 

　また、大雪で立ち往生する車が続出した山梨県では、動けなくなった運転手に対し、山崎製パンの運転手がトラックのパンを無料で提供。同運転手の行動を称賛する声が日本のネットに溢れ、ニュースは中国最大の日本情報サイト・Record Japanにより中国にも伝えられた。大手メディアが転載するなど中国でも注目を集め、中国版ツイッターには多くの書き込みが寄せられたという。
　それらの中に、「中国では高速道路で横転する貨物車の貨物を周辺住民が強奪する事件が度々発生している。彼らは負傷者を気遣うこともなく、脇目も振らずに強奪を行うのだ。日本には友愛や思いやりが溢れている。さらに、パンを奪い合う人もいない。日本人の素養は何て高いのだろう。これが中国なら、とうにもみ合いが起き、負傷者が続出したに違いない」というコメントがあったそうだ。何かと敵視されている中国の人々からこうした賞賛のコメントが寄せられるとはうれしい限りである。国と国とでは色々なしがらみや摩擦もあろうが、人と人では理解し合えることもあろう。 

　中国は４０００年という悠久の歴史を誇る大国である。儒教を尊ぶ国と聞けば、国民はみな道徳心が高く、礼節を重んじる誠実な人たちだろう、とだれもが思う。だが、昨今の中国は、儒教の『五常』（仁－人を思いやる　義－私利私欲にとらわれない　礼－主従、上下関係などを守る　智－学を尊ぶ　 信－誠実であること）が中心の道徳観念は忘れ去られてしまったのか、その変貌ぶりはひどい。
　何年か前に上海へ旅したとき、公衆道徳を守らない人の多いことにあきれ返った。また、札幌のホテルで中国の団体客とお風呂で出くわして、傍若無人な振舞いにも呆れたが、彼女らが去ったあと、私の友人を始め下着を盗まれた人が何人もいて憤慨した。
　とはいえ、日本人だって道徳を心得た善人ばかりではない。悪い奴はそこらじゅうにゴロゴロいる。東北大震災後、無人の住居に侵入し物を盗んだ不埒な輩たちの話や、義援金詐欺が横行し、ＮＰＯ法人代表が義援金を私用に使い込んで逮捕されるなどなど、人の難儀につけ込んで卑怯な振る舞いをする奴はいつの世にも存在する。誰の言葉だったかしら？「この世に悪の種は尽きまじ」である。だが、日本人は、少なくとも中国やアメリカなどのように徒党を組んでの暴動や強奪、略奪などという言葉とは無縁な人種であると思いたい。
　中国からのコメントの中に「一国の道徳心は人心から始まる」とあったそうだ。まさにその通りで、たとえ何千年の歴史を誇る国であろうとも、歴史はその時代に生きた人たちによって作り変えられるもの、栄えるも滅びるもその国の民の責任ともいえよう。肝に銘じたい言葉である。