当町はこれからがカキの水揚げの最盛期だ。そのため中国から毎年、カキの殻剥き作業に従事する若者たちが200名くらいやってくる。彼らについては嘘かほんとか、スーパーで万引きするとか、公共施設の備品を持って帰るとか色々噂はある。が、誰もが敬遠する早朝の冷たいカキの殻剥き作業をやってくれるのは彼らしかいないのである。悪さをするのはごく一部だろうし、彼ら全員を批判的な目で見るのは気の毒でもあるのか、これまで事が公になったという話は聞いたことがない。(カキの写真はネットから)
先日、午前6時20分過ぎ、ウォーキングしていると横から「おはようございます」と大きな声がした。見ると若者が3人小路から出てきたが、中国人だすぐ分かった。なぜなら「おはようございます」のアクセントが違うからである。彼らは雇い主が借り上げた町内の空き家で6、7人ずつのグループで暮らしているという。どこから調達したのか、みんな自転車に乗って行動するからすぐに分かる。
私の横に並んだので、「朝早くから大変ね」というと、「すみません。分かりません」という。「あっ、そうか。ごめんね」と謝る。「今から仕事です」というので、「そう。手が冷たいでしょう?」と手をさすりながら言うと分かったのか、「はい」という。そして自転車置き場に着くと、「さようなら」と口々に手を振って去ってゆく。私も「頑張って! いってらっしゃい」と手を振って見送った。6ヶ月ほど居るだけだから、必要な言葉だけ覚えてくるのであろう。
中国という国は大嫌いだが、彼らの行儀よさには感心する。朝出会えば、必ず1人ひとり「おはようございます」とあいさつしてくる。夕方に会えば、6人居れば6人がそれぞれ「こんにちは」「こんにちは」と言って通り過ぎてゆくので、私もその人数分だけ「こんにちは」「こんにちは」と大変である。でも、愉快で思わず頬がゆるんでくる。
対日、対中感情がどんなに悪化していようと、人と人とのコミュニケーションの基本は「あいさつ」である。おそらく、当地に居る間は嫌われないよう、礼儀正しくするように教えられているのだろう。まあ、どうであれ、ウォーキングの途中、「おはようございます」と声を掛けても返事をしない日本人より、彼らの方が可愛げがあって気持ちいい。これから来年3月まで早朝の冷たいカキの殻剥き作業は大変だろう。高い報酬をもらっているとも思えないが、祖国を離れて出稼ぎにきた若者たちの気持ちを思えば、あいさつの言葉を無視するようなことは絶対にしないでおこうと思っている。
爆買いする人もいれば、早朝の冷たいカキ剥き作業をする人もいる。中国の貧富の差は激しいのでしょうね。
カキ筏から引上げられたカキの表面にはコケが一杯ついてすぐに売り物にはなりません。一つ一つの殻のコケを取って洗い、表面がきれいなカキは殻付で販売します。
殻剥き作業も早朝から暖房なしの冷たい作業場でやっているそうです。日本人が敬遠するのですから、いかに厳しい作業かは想像がつきます。
ところで殻付きカキを食したことがおありですか? 網の上に置いて焼くか、鍋に少し水を入れてカキを入れ火に掛けると殻がぽっかり口をあけます。カキの蒸し焼きです。海水の塩味がする汁がしたたるアツアツのカキは何ともいえないおいしさです。
これから3月一杯まで、カキオコ、カキのフルコースを求めて近隣からたくさんの人がやってきます。“カキ”さま、さまです。
北海道には「ニシン御殿」というのがありますが、わが町内にも「カキ御殿」と呼ばれる立派な鉄筋コンクリート建ての家が何軒があって、漁師町の中で特別目を引きます。その影には中国の若者たちの苦労があるのです。世の中さまざまですね。
どこの国にも善人と悪人がいるでしょう。中国にだって良い人の方が多いのかもしれません。
彼らが誰にでもあいさつをするのは中国人に対する日本人感情を知っているからではないかと…。他国で冷たくされるのはたまらないでしょう。声掛けも自分を守る知恵のひとつかもしれません。日本にいる間は気持ちよく過ごしてほしいと思います。
日本に良い印象を持って帰ってもらいたいし、友好が深まるといいですね。
東京では爆買いのお金持ちの中国人がいっぱいで、日本人の居場所がないくらいです。知人がデパートで1枚の服を買おうとして色を迷っていたら、一気に全色買っていかれて買えなかったそうです。
中国人にもいろんな人がいるんですね。牡蠣をむきに来日した人のほうが親近感がわきます。
複雑怪奇な日中関係も、こんな爽やかな気持ち良い挨拶外交で一挙に氷解
どうか日本の職場が暖かで住みよい環境でありますように。
オールドレディさんの笑顔は激励!でしょう。