岸田首相は19日、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むことが見込まれる子供の数を示す指標)が全国トップクラスの岡山県奈義町を訪れた。子育て支援の取り組みを視察し、政府が3月末をめどにまとめる少子化対策のたたき台に反映させる考えだという。県知事や町長、警備関係者、随行記者などなど仰々しい大名行列だったらしい。
奈義町は岡山県の北東端の山中の町である。私が40数年暮らした県北津山市と隣接しており、友人がいたのでよく訪れたものだ。この町の面積の1/5を陸上自衛隊日本原駐屯地が占めており、安定して20~40代の陸自隊員とその家族が転入在住する。そのため国から特定防衛施設周辺整備調整交付金など多額の財政支援を受けることができる。
当然のごとく財政基盤は安定している。だからか平成11(1999)年から政府主導で行われた「平成の大合併」には住民大多数が反対。平成14年に「単独町制」を決定した。地域ぐるみで子育て支援に力を入れることができるのは町の財政が豊かだからだろう。
話は変わる。岡山県の南東部にあるわが備前市は、古くから備前焼の産地として知られている。また昨年、史上初の2年連続「投手5冠」に輝いたオリックスの山本由伸の出身地でもある。さらにWBC侍ジャパンに選出されたこともあり、備前市の名は全国的に知名度アップ。同じく備前市出身のオリックスの頓宮裕真選手と2人「びぜん特別観光大使」に任命され、市のイメージアップに貢献している。
そんな浮かれムードの中、ひと騒動起きた。備前市は現在、小中学校の給食費と教材費や、保育園の保育料などを無料にしている。ところが市議会に提出された議案には、新年度から園児・児童・生徒の世帯全員がマイナンバーカードを取得した場合に限り、給食費や保育料を免除するとした。市民からは「カード取得は任意だったはず。教育施策に絡めるのはおかしい」などと反発の声が上がり、署名運動にまで発展した。
新年度予算案では、マイナカードを取得した世帯の小中学生に対し、土日祝日と長期休暇中の昼食代(1日1人約300円)を地域電子ポイントで支給する事業として、1億200万円を計上した。また、育児応援金として生後6カ月から3歳までの未就園児を家庭で保育する保護者に対し、子ども1人につき月3万円を支給する事業に9千万円を組んだという。マイナカード取得と引き換えでもこれだけの恩恵が受けられるならいいではないか、と私は思う。
なぜマイナカード取得を嫌がるのか、市役所勤務の知人に訊ねたら「口座番号を知られるのが怖い」と。が、口座番号と口座名義を人に知られても、暗証番号さえ知られなかったら心配ない。現に2020年5月、現金10万円の一律給付があったとき、みんな郵便局か銀行の口座番号を記入して受け取っているではないか。今さら何が問題なのか、よほど隠し金がたくさんあるのだろうネ。
国や自治体の施策で自分たちの利益になることにはだれも文句は言わない。市の支援策で受ける恩恵は当然で、マイナカード取得で不利益を被るわけでもないのに反対とは、ちょっと勝手すぎないか。政府は、地方に配る地方交付税の算定にマイナンバーカードの交付率を反映させる方針だ。支援策で受ける恩恵の代わりにマイナカード取得、「ギブ&テイク」というではないか。
備前市の市民団体は20日、直筆・オンラインで4万4095人分の反対署名を集めたそうだが、備前市民は2000人だったとか。外野の方が騒々しいらしい。奈義町の自衛隊基地でもそう、日米合同演習などがあると、かならず訓練中止を求めるデモ行進と反対集会が開かれる。が、地元住民はまったく知らん顔、よそ者ばかりなのだ。沖縄でもそうだ。当事者より外野の方が騒ぐのである。よく知りもしないのに首を突っ込む輩たちは迷惑でしかない。
「便利だよ」と知人からも聞きますが、さりとて今のままでも不便がないからかなぁ。いづれ強制になるだろうからその時に、と思っていましたが「障害者」としていろいろ恩恵にあづかっている身。
早速手続きにいってきます。