久しぶりに銀河を撮影(試写)しました。 使用したのは通常の赤道儀ではなくSeestar S50 という、手軽に自動で星雲・星団・銀河を撮影してくれる装置です。 雪深い北信濃では真冬に機材を屋外に設置することは困難で、文字通り殆ど冬眠状態になるのですが、何か解決する方法があればと模索しているうちにこの装置に行きつきました。 Seestar S50 はZWO社が開発し、日本でも最近販売が開始されています。価格は従来型赤道儀とカメラと望遠鏡やレンズ一式と比べれば数分の一以下です。詳細が分からず半ばチャレンジングな購入でしたが、信じられないほど簡単に銀河が撮影出来てしまいました。
装置の外観です
大きさは、両手で一塊くらい、重くはありません。 準備は非常に簡単で、 ①三脚(丈夫なもの)を設置 ②Seestar S50 を載せる ③電源を入れ、スマホ側の専用アプリとリンクする ④磁極のキャリブレーション ⑤水平を調整 ④⑤ともアプリの指示どおりにやればOK 準備は10分程度で終わり、あとはその夜観望できる天体を選んで導入し撮影するだけ、ピント合わせもオートフォーカス あまりに簡単で、ほんとうに写るのかなと心配になるほどです。
ちなみに④⑤の操作性を良くするため、三脚と本体の間に水平回転部および水平微調整部の部品を取り付けています
撮影中急激に気温が下がり、濃い霧に包まれ始め(上の写真)本体の外装は結氷(着霜)し始めましたが、レンズやその内部の撮像素子付近は全く曇りが発生していません。実はこの装置、結露防止用のヒータが内蔵されていて、アプリからそのON・OFFを手動で出来るようになっています。凄い。 今回試写した画像は以下です
さんかく座M33銀河
おおぐま座M81銀河
信じられない程簡単に撮れます。
天体を選ぶと自動で導入されます(昨今の自動導入赤道儀のように俊足ではないが、精度は十分) 導入完了後明るい天体はすぐにそれと分かるが、暗い天体は入ったかどうかがこの時点では分からない、しかし撮影開始のボタン(アプリ)を押すと、10秒間1コマを次々と撮影しては自動でコンポジットするので、徐々に天体の姿がスマホの画面に見えてきます。 ちょっと嬉しい感覚です。 あとは納得できるディティールになるまで放っておくだけです。しかもガイドエラーが発生したコマはコンポジットから自動で排除されます。全く手間いらず。 露出時間の合計は、上のM33は21分、M81が16分です。出来あがった画像をよく見ると、潰れやすい銀河中心部の詳細までしっかりと出ています。AIによる処理が成されているのかもしれません。至れり尽くせり。
上のふたつの画像は、スマホに自動で保存されるjpegをPhotoshopにて微調整しただけのものです。一方装置本体にはFITS形式が保存されるので、こちらを処理した方がよりよい結果が得られると思います。
撮影中のスマホの画面。 M81を自動導入し、下の赤いボタンを押すと撮影開始。徐々に銀河が浮かび上がってくる。撮影開始から約10分経過後の様子
今回はSeestar S50を庭に設置し、準備が整いアプリのリンク出来ているのを確認してからそのままスマホを居間に持ち込んで、暖かい場所から完全に遠隔操作で撮影しています。赤道儀と異なりコンパクトな経緯台方式で、ケーブル類も無いため、重量バランスの崩れや子午線越えの措置などの心配がないのでこのようなことも可能です。
恐らく天体写真撮影の経験が殆どない方でも、一度レクチャーを受ければ同じように撮影できることと思います。もはや数千万光年彼方の銀河の撮影は、天体写真撮影熟練者の機材・技術によるものではなく誰でも手軽に撮れる時代となった感があります。もちろん作品としての出来上がりはまだまだ叶いませんが、Seestar S50を超える更なる装置が開発されることは間違いなく、その差はさらに縮まることと思います。真冬にはオリオン座付近に魅力的な星雲がいくつかあるのですが、今年の冬は雪があってもSeestar S50ならば撮影できそうです