The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

コナン・ドイルの事件簿 : シャーロック・ホームズ誕生秘史

2016-04-12 | 海外ドラマ
― コナン・ドイルの事件簿 : シャーロック・ホームズ誕生秘史 ―
”Murder Rooms: Mysteries of the Real Sherlock Holmes” (2000~2001)



この作品は シャーロック・ホームズ誕生の背景とそのモデルになった実在のベル博士と
コナン・ドイルの物語です。
大分前に興味を持って何気なく見たドラマで 感想を書き残して置いたのですが なかな
かアップする事が出来ず 時期を逸して居りました。
そんな時、AXNミステリーで再度放映の予定があるとの事で、あ、そうそう・・・思い出した
のでこの機会に載せて置こうと思います。


このシリーズは『シャーロック・ホームズ』ではなく、『シャーロック・ホームズが生み出さ
れた背景と、そのモデルとなった博士の物語』です。
シリーズは全5エピソードからなり
第1話 ”Dr.Bell and Mr. Doyle” : 「ドクター・ベルの推理教室」
第2話 ”The Patient's Eyes” : 「惨劇の森」
第3話 ”The Photographer's Chair” : 「死者の声」
第4話 ”The Kingdom of Bone” : 「謎のミイラ」
第5話 ”The White Knight Stratagem” : 「暴かれた策略」

モデルとなったベル博士がホームズで、ドイルがワトスンというような形で事件に取り組む
という話になっています。ジョセフ・ベル教授は実在のエディンバラ大学医学博士であり、
ドイルはその教え子でした。


↑ 実際のドクター・ベルです。

ドイルがこのベル博士をモデルにホームズ物語を作り上げたのは良く知られた話ではあ
りました。
内容は史実を元にしたフィクションですが、正典に描かれているエピソードが多数含まれ
ているので その一つ一つに気付く度に嬉しくなります。
例えば、ベル博士が遺体をムチ打つシーン、懐中時計を見てその持ち主の特徴を推理す
るシーン、塩漬け耳のエピソード、不審な男に追われ自転車に乗る女性のエピソード、その他
色々、あ~、あのシーンは正典のあの部分ね、等と気付く度に独りごちながら嬉しく観ていま
した。

キャストは:
Dr. Joseph Bell(ジョセフ・ベル博士) =イアン・リチャードソン
イアン・リチャードソンはシェイクスピア劇出身で 自身もホームズを演じた事もあるそうです。
流石に重厚であり素晴らしい演技力を感じます。
白髪で素敵な教授ですが、鋭い観察眼と推理力の持ち主です。情熱と冷静さを併せ持ち犯罪捜査
に挑みます。
 
Arther Conan Doyle(コナン・ドイル) =ロビー・レイン(E1のみ)&チャールズ・エドワード(E2以降)
若い医学生のドイルは熱血漢ではあるが、家族に問題を抱え、女性に惚れっぽい。
ベル教授の助手として忠実に協力し、父と息子の様な関係を築いていく。
ドイルの描写に関しては、史実に基づき実像に近い描き方をしている様に思われます。


↑ 第一話のロビー・レイン版ドイル


↑ 第二話以降 チャールズ・エドワード版ドイル

ドイルの恋人になるエルスぺスが医学を志すものの 女性が大学に通う等もってのほかとい
う時代男装をして大学に通う等当時の女性蔑視の時代背景が描かれます。 この逸話はBBC版
「忌まわしき花嫁」でモリーちゃんが男装をしていた事からも良く伺えます。
このエルスぺスが早々に死んでしまいドイルは大きな傷を負う事になりますが この事が後日
大きく影響し ドイルが小説を書き始めるきっかけになるという事になっています。

全体を貫くテーマは ベル教授の卓越した推理力と、ベルとドイルの師弟愛があげられると思います。
父親に対して複雑な感情を持つドイルが ベル博士を師と仰ぎ尊敬し、その鋭い観察眼と推理力に
影響を受けつつ、親子の様な関係から良い友人関係へと発展していきます。
オシャレで熱い老紳士と若いドイルは格好いコンビで、こんなベル教授とドイルがホームズと
ワトソンの姿に被ります。

そして時代背景として、当時の女性蔑視、階級制度による労働者階級蔑視が強く押し出されて
いて 重苦しい思いもさせられます。
グラナダ版やBBC版のホームズの様な冒険活劇という訳にはいかないかも知れません。
画面全体も暗いトーンで描かれていますが、ヴィクトリア朝の雰囲気、セット、衣装等は詳細に
綺麗に描かれている様に思います。
内容は全体にシャーロッキアンの為のドラマとも見受けられますが、第一話はドイルの回想から
始まります。

1893年ストランドマガジンに掲載された「最後の事件」でホームズを死なせてしまいその結果
ロンドンの街には号外が配られ、ストランド社には脅迫めいたものを含め、抗議の手紙が殺到
しました。
「ホームズを殺す事は無かったのに」という編集者に 「潮時だよ」というドイルの言葉からの
回想から始まり、ベル教授との出会いへと遡ります。

今回それぞれのエピソードには触れる余裕がありませんが、兎に角シャーロッキアンは元より、
ホームズ好きにはこたえられない作品です。
好みは分かれるかもしれませんが、個人的には大変面白かった作品でした。

気力、時間の余裕があれば再度個々のエピソードに触れる機会があるかも(あるかな?)です。


↑ コナン・ドイルとドクター・ベルです
(ドクター・ベルはホームズその者にしか見えないのですが、モデルだから当然か・・・)


最後に、ご参考までに AXNミステリーでの放映予定をお知らせしておきます。
4月16日(土)朝08:00 ~となっています。(朝って言うのがチョット・・・・)

↓ こちらが公式ページです。
http://mystery.co.jp/programs/mr_doyle