The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

グラナダ版 『6つのナポレオン』 : (4)

2016-12-18 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 : ”The Six Napoleons” (最後です)

(1986年) ーThe Return of Sherlock Holmes: S3E7 


・・・・続きです。


221Bではレストレードが再度訪れ 再び自論を繰り返しています。
ホームズは全く聞いておらず 部屋のかたずけやら何やらウロウロ。
業を煮やしたワトソンも、「警部の説をどう思う?」と尋ねると、「残念ながら聞いていなかった。
昨夜は寝ていないもんでね」とつれない返事。 レストレードも「私もそうだ!」
そんな時ドアをノックする音が。
「どうぞ」と言いながら、ホームズは暖炉の傍に佇みポーズを取る(何時ものポーズ。笑)
訪ねて来たのはサンフォード氏でした。

ホームズは ハドスン商会でナポレオン像を買った最後の1人 サンフォード夫人に電報を打って
いたのです。

ホームズが10ポンドで像を買い取るという事に対し サンフォード氏は、妻が15シリングで買った像を
10ポンドで売り渡す事に流石に躊躇しています
が、ホームズは勿論約束通り支払うと確約するのです。

「ではお譲りします」というサンフォード氏から最後のナポレオン像を受け取り 大切に暖炉の上
に置くホームズは、「立会人の前で 胸像に関する一切の権利を私に譲るというサインを・・・」そ
して「正式に手続きすれば問題は起こらない」と言いながら間違いなく10ポンドの小切手を渡します。

大喜びで帰るサンフォード氏を送り出したホームズは、やおらティーセットが載っているテーブル
に近寄りサッとテーブルクロスを引き抜きます!! (オー!これが話題のテーブルクロス引
き!!) ← これは勿論正典にはない設定ですが、もうカッコ良いんですわ!!

↑ 静止画では分からないですけど、これが話題のテーブルクロス引き

唖然として見ている2人を前に、そのテーブルクロスを別のテーブルに丁寧に敷き さらにクロス
を載せた上に大切にナポレオン像を置くや否や ステッキで打ち壊します。
破片を詳細に調べたホームズは、更に茫然として見ている2人に 「さて諸君、世界有数の宝石
お目に掛けよう」と言いながら取り出したのは ”ボルジア家の有名な黒真珠”でした。



 
「ブラボー!ホームズ!」と言いながらレストレードと共に拍手を送るワトソン。
レストレードも「まるで奇跡か手品を見ている様だ」と眼をみはります。
ワトソンはも「これはコロンナ公の寝室から消えたボルジア家の黒真珠だ」
ホームズはその当時相談を受けていたとの事で、その後も継続的に捜査は続けていた様でボードには
新聞記事等の資料が大量に張り付けられていました。


ベヌッチと言う名前で思い出したのは コロンナ公のメイドはルクレツィア・ベヌッチであり、当時彼
女が疑われたがロンドンにいる兄と接触した証拠が無かった。 裏にベッポがいたのだった。
ルクレツィアとベッポは恋人同士であった。 (切り裂かれたベッポとルクレツィアの写真の片割れ
はベヌッチの父から受け取った)

経緯は、
ベヌッチ家は黒真珠を盗む計画を立てベッポをルクレツィアとの兄の連絡係にしたが、ベッポはこの
情報を聞き真珠を持ち逃げした。



兄のピエトロが製作所の乗り込んで来た時ベッポは彼を刺し乾燥室に逃げ込んだ。
警察に捕まる前に真珠を隠そうと目を付けたのはハドスン商会からの特注品であるナポレオン像。
半乾きであった一体の底に真珠を埋め込み、出所した後ハドスン商会で働きながら胸像6体の
行方を捜していた所3体を見つけて破壊。だがハーカー家に侵入した時ピエトロ・ベヌッチが報復
の為現れたので彼の喉を切り裂き殺害してしまった。(この点はレストレードの返り討ち説が正し
かった)。
残りの2体のうち1体はチズウィックにあり、最後の1体が先程買い取った像だ・・・とホームズが
説明します。
それを聞いたレストレードの言葉、
 

「成程ホームズさん、腕前は承知していたつもりですがこれ程鮮やかに解決をみるとは我々ス
コットランドヤードは貴方の事を誇りに思います。明日お出で下されば警察官は一人残らずあなた
に握手を求めるでしょう」と感に堪えた様にお礼を述べるのですが、それを聞いているホームズは
この言葉を真摯に受け止め 次第に目が潤んでくる!!



(このシーンは感動的でジェレミーの表情の変化、演技が素晴らしいのです。 初めてホームズが
レストレードと正直に気持ちを分かち合えたシーンでした)
そして、素直に ”Thank you. Thank you” と2度繰り返すんです。
そして突然我に返った様に(と言うか素直に気持ちを表したことが恥ずかしくなったのか)、「ワトソ
ン君、シングルトン事件の資料を」なんか言っちゃって取り繕っている風なのが可愛い。


レストレードを送り出しながら”Good-bye、Lestrade” と自分から握手を求める(これも珍しい)。
が、何となく目をそらしながら・・・「何か難事件が起きたら何時でも相談に来てくれ」とホームズ。

正典では、
『「ありがとう! いや、ありがとう!」ホームズは言った。 そしてすぐに顔をそむけたが その時私
の目に映っていたのは、この私にしてもはじめて目にする珍しいい彼のたたずまいだった。--
内なる優しい人間性に動かされ、危うく負けそうになっている姿だ。とは言えそれもいっときの事
たちまち何時もの冷静かつ実際的な思索家の顔が戻って来て・・・・』とワトソンが述べています。
(創元推理文庫 深町眞理子訳 から引用)
以前からホームズを”machine”と表現していたワトソンにしても驚く様なホームズの人間味溢れる珍しい
情景なんですね。


その後ホームズは心を静める様に、窓辺でヴァイオリンを弾き始めるのです。
(グラナダ版のテーマ曲)
パイプを手に椅子に座りその後姿を眺めながら聞きいるワトソン。
(うーん、良いシーンですね)

最後のシーンは、喪服に身を包んだルクレツィアが馬車で刑務所を訪れると、ベッポが絞首刑に
処せられた張り紙がありました。
 
「終幕だ、ルクレツィア」と言うベヌッチ父と張り紙を破り窓から捨てるルクレツィア。
この辺りも最後までしっかり人間性が描かれているエンディングになっています。




飛び飛びになってしまいましたが、今回で終わります。


~~~~~~~~~

このエピソードではジェレミーが兎に角溌剌として陽気なホームズを演じているのが珍しいです。
又、ホームズ、ワトソン、レストレードの掛け合いがテンポ良く面白いし、コミカル描かれている点も
珍しいと思います。
レストレードとワトソンも仲良し(?)だし、そのせいかホームズがチョット脇に寄り焼いている風な
(?)シーンもあり、兎に角”人間”ホームズが良く描かれているミステリーではありながら、コミカル
な部分もあり流石に人気のエピソードであると再認識させられます。何時も一線を画しているホームズ
とレストレードの素直な心の表現は感動的でもあり 盛り沢山の要素が含まれた秀逸で楽しい「流石
グラナダ版の真骨頂!」の作品だと思います。


BBC版の”The Six Thatchers”には この原作から地名、人名の引用がある様ですが、内
容に関してはでどの様な引用、踏襲がされているのか興味もあり 取りあえずの予習とな
れば・・・と思います。



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『グラナダ版シャーロック・ホームズ』 : Index